第130話.頑張り屋さん
「やぁやぁ、待たせたね〜」
声のする方を振り向くと、そこには手を振っている凛がいる。
「おう、鍵ありがとな」
「どういたしまして〜」
凛はそう言いながら、流れるように華山と空宮の間に入った。凛は華山と空宮の腕と両手を組んで「じゃあ帰ろー!」と言ってあるき始める。俺は3人の後ろに付きながら歩き始めた。
「そういえば今日って何日ぶりの部活だったっけ?」
空宮がそう言って華山が返事を返す。
「確か文化祭の準備が始まる前に一回あったので、だいたい2週間ぶりくらいだと思いますよ」
「2週間かー」
「長いね」
凛と空宮は顔を見合せながら意外そうに驚いていた。
「確かに文化祭準備結構忙しかったからな。2週間も一瞬に感じたんだろ」
「かもね〜」
そう言いながら空宮は凛にずいっとさらに近づいた。
急に先程よりも近づかれた凛は、ピクっと体を跳ねさせた後に空宮の方を見る。
「あ、蒼ちゃんどうしたの?」
「んー?ただ近づきたかっただーけー」
「そう?じゃあ僕は華山さんに近づいちゃう!」
そう言うと、凛は空宮が凛に近づいたように華山ずいっと近づいた。
「ひゃっ!?」
凛に近付かれた華山は凛の肌が当たったのか何なのかは定かではないが、驚いたように高い声を出す。
✲✲✲
いつも通り電車に乗り込み、凛と華山と別れて摂津本山駅で空宮と一緒に降りた。
そして駅を出ると俺達はいつも通り歩き始める。
「ねぇ」
「ん?」
「刻って今週の土曜日暇?」
空宮にそう聞かれて自分の予定を思い出した。
「多分何も無かったと思うけど。何で?」
そう聞けば、空宮は少しだけ頬を膨らませながら「気になったから聞いただけじゃん」と言ってそっぽを向く。
(聞いただけなんだけどなぁ)
そう思いながら空宮の横を歩き続けた。
「まぁ、何でもいいけど」
そう零すと空宮は「そうそう、何でもいいんだよ」と言って頷いている。
しばらく歩くと空宮の家が見えてきた。
「じゃあ、また明日ね」
「おう」
俺はそう言うと手を振ってくれる空宮に手を振り返してから、家に向かって歩き始めた。
10月に入ったここ数日の間に、この時間帯の気温がだいぶ下がったように感じる。少なくともベストはもう手放せない。
5分も歩くとすぐに俺の家が見えてきた。
俺はカバンから鍵を取り出すと、玄関扉の鍵穴に鍵を差し込んで解錠する。
「ただいまー」
そう言っても特に家の奥からは返事が無い。
親が仕事なのはまだ分かるが、靴がある現はどこにいるのだろうか。
俺はそう思いながら靴を脱いでリビングに向かう。
リビングに入るとダイニングテーブルで顔を伏せて寝ている現がいた。周りにはシャーペンとノートに教科書が散らばっている。
「勉強してたのか」
開かれている教科書の教科は現が一番苦手としている数学。ノートには何度も同じ問題を解き直したあとが見受けられた。
(頑張り屋さんだこと)
そう思いながらソファに置いてあるタオルケットを現の肩から掛けてやると、現は「んんっ」と言った後に「数学分からない」と一言寝言をこぼして、またすーすーと寝息を立て始めた。
俺はその様子を可愛らしく思って少し微笑む。
「頑張れよ」
俺は一言寝ている現にそう言うと、荷物を下ろしに自室に戻った。
第130話終わりましたね。話の回によって納得の出来の話と、んー?っていう回があるんですよね。安定させようと思ったらこればっかしはもっと書いて書きまくらないとダメですかね。
さてと次回は、10日です。お楽しみに!
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