第129話.ミルクティー
カメラを構えて対象物にピントを合わせると、シャッターを切る。カメラからは機械的なピピッという音が鳴った後に、カシャリと聞き慣れた音が鳴った。
一度カメラのファインダーから目を離すと次の対象物を探す。俺は周りをキョロキョロと見渡しながら次に撮るものを探していると、急にふわりとしたシャンプーの香りが辺りに漂った。
「何を撮ってるんですか?」
「ん?さっきまではいつも通り花だよ。今は次何撮ろうか考えてたとこ」
話しかけてきた華山はそう聞くと「なるほど」と言ってこくりと頷く。
「そう言う華山は何撮ってたんだ?」
そう聞き返すと華山は少しモジモジと両手の指を絡ませながら頬を赤くした。
「その、PhotoClubでの皆との思い出を何か残したいと思って……蒼さんと凛さんが2人で写真を撮ったりお話してる様子を撮ってました」
「思い出か」
「はい」
「最終的にはアルバムにでもまとめる感じか?」
そう聞くと華山はこくりと頷き「一応はそのつもりです」と言う。
(アルバムか。そういや中学の時のアルバムとかどこやったっけな)
そう思いながら華山に「いいんじゃね?」とだけ言った。
「じゃあ華山は華山で頑張れよ〜」
そう言うと華山は「はい」とだけ言って、カメラを俺の方に構えて一枚写真を撮った。
「ん?どうした急に?」
あからさまに困惑した様子を見せると華山はファインダーから目を離した。人差し指を口元に持っていくと、蠱惑的な笑みを浮かべながら、
「思い出、ですよ」
と言い残してそのまま凛達の元に行ってしまった。
「あ、ちょっと!……足速いなおい」
華山の意外な俊足に少し驚きを覚えながら、同時に華山の蠱惑的な笑みが頭から離れなくなっていた。
「あんな顔もするんだな」
✲✲✲
「さぁ今日も部活を頑張ったことだし、皆で帰ろ〜!」
「おー!」
凛と空宮はそう言いながらワイワイと騒ぎ、俺と華山はその2人の様子を見ながら笑っていた。
「ねぇどっか寄って帰るー?」
「寄るってどこにだよ」
「んー、分かんない」
「何だそれ」
俺と空宮はそんな風にバカみたいに話しながら、凛達と一緒に歩いている。
「じゃあ今日は僕が鍵返してくるね〜」
「ありがと」
「ありがとうございます」
口々に凛に謝辞を述べると、凛が帰ってくるのを校門で待つ事にした。
自販機で買っておいたミルクティー開けると一口だけ口に含む。
「あ、それ美味しいよね」
飲むのを見ていた空宮はそう言うと、ミルクティーを指でさした。
「飲むか?」
そう聞くと空宮は「じゃあ一口貰おうかな」と言って俺からペットボトルを受け取る。
キャップを開けて、空宮はペットボトルに唇を近づけてこくりと飲み始めた。
「ふぅ、美味しい」
空宮はそう言ってニッコリと笑った。
唇は少し濡れて光に照らされ艶やかに反射する。俺はそれに少しドキリとしてしまった。俺はその様子を悟らせまいと目を空宮の方から逸らす。
「どうしたの?」
空宮は急に目を逸らした俺に訝しさを感じたのか、俺にそう聞いてきた。
「いや、別に……」
「ふーん?そう。ま、いつも通りの刻って事でいいや」
空宮はそう言うともう一口ミルクティーを飲んだ。
第129話終わりましたね。今回の話で実は何気に刻と空宮が間接キスしてるんですよね。実は。まぁ、気づかなかったとしても話に支障はないのでご安心を!
さてと次回は、8日です。お楽しみに!
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