第118話.占い
「お!久しぶりにお客さんが来たよー!」
占いの館に入ると、中で座っていた女生徒がバッと立ち上がりながらそう言った。
占いの館の中は非常に遮光性の高い黒い布によって光が通りにくくなっているため暗く、真ん中には水晶玉の置かれたテーブルがぽつんと置かれていた。そして水晶玉の周りにはいかにもな雰囲気を醸し出すロウソクが二本立っている。
「ささっ、座って座って!」
女生徒に言われるがままにどこから出したのか分からない椅子座らされた。
「それでそれで〜?何を占うのかなっ?金運?勉強?それともちょっぴり恥ずかしい恋愛?」
俺達が座ると占い女子はテーブルの上に肘を乗せ、前のめりになってそう聞いてくる。
「あ、占うのはこいつなんで凛に聞いてください」
隣に座っている凛の方を指さしながらそう言うと、占い女子は少しポカンとした顔を浮かべた。
不安に思うと、占い女子がコホンとわざとらしく咳をした後に話し始める。
「えっとー、どうせ払うお金は変わんないからさ、男の子の方も占って行ったら?そっちの方がお得だよ?」
「そーだよ!刻くん!一緒に占ってもらお〜よ〜」
占い女子がそう言うと隣にいる凛も向こうに加勢した。
別に興味無いんだけどな。それに占いでお得とか言っちゃってもいいのかよ。なんか急に現実が垣間見えたぞ?
そう思いながらも俺は渋々頷く。
「やったー!」
俺が頷いたのを見ると凛は心底嬉しそうに喜んだ。
「よーし、じゃあ早速始めちゃおうか。まずは可愛いメイド服姿の女の子の方からね。何を占う?」
凛はそう聞かれると間髪入れずに答えた。
「恋愛で!」
「おっけー!占いは恋する乙女に味方するからね!」
そう言うと占い女子は水晶玉に手をかざしながら、何かブツブツと呟き始めた。はたしてこれが呪いとかでないのならいいけれども。
「ホニャラカホニャラカシラオキノタミ〜……見えたっ!」
占い女子がそう言うと凛は少しピクりと動く。
「ど、どうでしたか?」
「えっとね〜、占いによれば『あなたにとっての運命の人はすぐそこに!』って出たよ!」
「おー、なかなかいいんじゃねぇの?」
そう言うと凛は無言で少し顔を赤らめながらこちらを向く。
「どうした?」
「べ、別に何でもないよ?」
凛はそう言うとまた占い女子の方を向いてしまう。俺も再度前を向くと、占い女子がニヤついた笑顔を浮かべながらこちらを見ていた。
「可愛いねー」
「え、急になんですか」
「いーや?別に何でもないかな」
占い女子はそう言うと次に俺を占う準備を始めた。
「さてと、君は何を占おうか?」
俺はそう聞かれてしばらく考えるが、特に何も思い浮かばずに黙ってしまう。そしてそれを見兼ねたのか隣から凛が助け舟を出してくれた。
「じゃあ刻くんも恋愛を占おうよ!」
「でも俺は別に興味無いしな」
俺がそう言うと凛がムスッとした顔になる。
この表情がなかなかどうして可愛い。
「刻くんが興味無くても僕があるの!そういう事なので、お願いします!」
「りょーかいっ!」
「えぇ……俺の意見ゼロじゃん」
俺がそう嘆いているのも露知らず、占いは順調に進んで行った。
「ムンムカムカリンシンボリル〜……見えたっ!」
占い女子は先程同様そう言うと占いの結果を話し始めてくれる。
「結果はね『運命の人はあなたの事をいつも思っています。ただあなたが気づいていないだけ』だそうです!」
「だってさ刻くん!」
「いや知らんし」
実際興味が無かったわけだし。それに俺の事を思ってくれてるのって親とか位じゃないか?願わくば現もだけど。
俺がそう思っていると隣で凛が何やらブーブー言っている。
「興味が無くても心に留めとくくらいで覚えておいたらいいの!いつか役に立つかもでしょ?」
「そうそう」
凛と占い女子はいつの間に仲良くなったのか2人して大きく頷いた。
「分かったよ。覚えとく」
「やったね」
俺がそう言うと凛はまた嬉しそうに喜んだ。
✲✲✲
俺と凛は占いの館を後にすると次は中庭で行われている有志のバンドライブを見に行った。
「やっぱり上手だね」
凛は感心したようにそう言う。
「俺からすれば凛もあれくらい上手かったけどな」
俺がそう謙遜無しでそう言うと、凛は少し照れた様子を見せながら「ありがと」とだけ言ってきた。
空には雲ひとつなくて空が青々としている。日が熱いくらいに照っていて、ドラムの刻むビートは俺達の心からの高揚感を表しているように感じた。
隣で碧色の目を輝かせる君は一体何を見ているのか。何が見えているのか。俺にはまだ分からない。
第118話終わりましたね。皆さんは占いしたことありますか?僕はですね〜、無いですね。してみたいけど周りも特にできる人がいないってのが現状です!
さてと次回は、17日です。お楽しみに!
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