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第114話.サプライズ?

 学校に着くと颯爽と階段を駆け上がる、という事は特にせず、俺は自分のペースでゆっくりと上っていた。

 文化祭2日目となると今までの準備の言わば集大成を見せる日という事になるので、心なしか昨日よりもこの時間帯にいる生徒の数が多いように思えた。


(まぁ、実際のところ多いんだろうけども)


 教室に入ると昨日から使用しているスタッフルームに入りそこに荷物を置く。そして、その後は先に来ていたメンバー達と一緒にテーブルや椅子の再配置を始める。


「なぁ鏡坂」

「うん?」


 テーブルを並べていると、突然他のテーブルを並べている濱崎が俺に話しかけてきた。


「鏡坂ってさ今日の文化祭に誰か招待した?」

「あー、いや特にはしてないな。親は仕事だし、妹には特に聞かれなかったしな」


 この学校は防犯の面を考えて文化祭は誰しもが来れる、というわけではない。この学校の生徒が所持している招待券にその生徒の名前が書いてあるものを持っている人だけが来れるようになっているのだ。

 つまり、俺は誰にも配っていないということになるのだ。

 そう言うと濱崎は「へー」と言いながら口を開く。


「俺は結構招待したんだよ」

「誰を誘ったんだ?」


 そう聞くと濱崎は思い出すように指で数えながら教えてくれる。


「まず弟だろ?それから従姉妹の姉ちゃんに、中学ん時の友達とあとは小学校の時にやってたサッカーの友達だな」

「結構多いな」

「だろ?」


 実際多いと思う。何せ招待状を渡さないといけないから。つまり来て欲しい相手がいる場合は、その人と実際に会わなければならない。でもそれって意外と手間がかかるし、それに俺達だって別に暇じゃないからな。それを踏まえた上で考えるとやっぱり多いと思う。


(普通誘っても2人くらいだろ)


 そう思いながら濱崎との会話を続けた。


「おっはよー、刻くん!」


 準備をしながら喋っていると、後ろから快活な元気のいい声が聞こえてきた。

 もちろんそれは我がクラスのメインメイドにしてメイド喫茶の長。凛・テイラー様だ。


「おう、おはよう凛」


 挨拶を返すと、凛は満足そうに笑みを浮かべながらこちらを見る。


(何でそんなに見つめてくるの?朝から緊張するのは嫌なんだけど)


 内心で悪態をつきながらも凛が何か喋るのを待った。


「ふふっ、よしっ!刻くんは今日も元気そうだね!」

「え?」


 凛は突然笑ったかと思えば、急にそんな事を言い出すので俺は困惑を隠しきれない。


(今ので俺の体調確認してたの?)


 そう思いながらも何とか平常心を保つことに努める。


「それで?凛の方は元気か?」

「もちろん!元気ハツラツだよ!」

「そうか、そりゃ良かった」


 そう言うと凛はにへらと笑いながら、「じゃあ僕は早速着替えに行ってくるね〜」とだけ言うとピューっと風の如く去ってしまう。


「凛さんって少し変わってるよな?」


 去っていく凛の後ろ姿を見ていると、隣にいた濱崎がそう言ってきた。


「そうか?」


 そう返すと濱崎は、まじかよコイツみたいな顔をしながらこちらを見てくる。


(すみませんね。俺は凛慣れしてしまっているので何が変わっているのかよく分からないんですぅ)


 内心でそう思っていると濱崎は「ふっ」と笑い独り言を呟くように一言だけこう言った。


「こいつも変わってたわ」


 何か馬鹿にされたような気がしたものの、気にしたら負けと言わんばかりの心づもりで気にしないことを決心する。



✲✲✲



 朝の10時を時計の針が指した頃に、校内のスピーカーから放送が流れた。


「只今より山海祭2日目開始となります」


 放送がそう流れるとその後に諸注意が説明される。

 ちなみに昨日よりもスタートする時刻が遅いのは校外から人が来るためらしい。理由はあまり朝早くにスタートさせたとしても、どうせ大半の人は10時以降に来るだろうからという例年通り進めばの予想だ。

 まぁ、もっともな理由だとは思うのだが。


「お、ここかー!」


 そんな事を思いながら昨日と同様に受付の仕事に励んでいると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。俺はその声が聞こえてきた事に違和感を覚えてその声の主を探す。


(誰も誘ってないのに聞き覚えのある声って何なんだよ。ホラーか?)


 首を色んな方向に向けながら探していると、ポニーテールにしてある髪の毛と、ごく最近見かけた水色のシュシュが視界に入った。


「ん?あれ、何でお前がここにいるわけ?」


 思わず声に出してそう言うと、間違いなく声の主であるそいつはこちらを向き、「作戦成功!」と言わんばかりの無邪気な笑顔を浮かべて口を開いた。


「さて、何ででしょうね〜?」


 声の主は不敵に笑いながらこちらをじっと見続けてくるので、俺は指でこっちに来るようにと指示を出した。

 すると存外その指示に素直に従ってくれてトテトテと近付いてくる。


「イタタタッ!?ち、ちょっと!?顔が取れちゃう!」


 近付いてきた声の主の顔にガッチリとアイアンクローを決めると、そいつはじたばたとし始めた。


(当たり前か)


 アイアンクローを解くとそいつに聞き始めた。


「なぁ(うつみ)。俺ってさお前に招待状渡したっけ?」

「も、貰ってないです……」

「だよな?」

「はい……」


 少し声のトーンを落とすと現は分かりやすくシュンとし始めた。


「どうやって学校に入った?」


 そう聞くと現が答えようとしてくれたのと同時に、後ろからチョイチョイっと袖を引かれる。

 振り向いてみればそこにいたのは、昨日の後半と同じメイド姿をした空宮だった。


「どうした?」


 そう聞くと空宮は少し申し訳なさそうな顔をした。


「ごめん。私なの」

「何がだ?」

「現ちゃんを招待したの」


 空宮がそう言うので俺はシュンとしている現の方を見ると、ブンブンと高速で頷く現の姿がそこにはあった。


「はぁ……」


 俺は大きくため息を着く。


「空宮はいいとして、現は俺が家出る前に言えばよかっただろ?何で言わなかったんだ?」


 俺は先程よりかは声のトーンを和らげて現にそう聞くと、現は唇を尖らせて少し拗ねたような素振りを見せながらボソボソと理由を言った。


「刻兄を驚かせたかったから蒼姉にお願いしたの」

「それだけか?」

「うん。それだけ」


 俺はそれを聞くともう一度ため息を着いた。


「はぁ、誠に残念ながら現の願い通り俺は凄く驚いたし、それに招待状も空宮名義のやつがあるんだろ?」

「うん」


 何が言いたいのかよく分からない、とそんな感じの雰囲気を現は醸し出しながら返事をする。


「つまりは、まぁあれだ。ようこそ山海祭へ」


 俺がそう言うと現はパァーっと顔を明るくさせた。


「よかったね、現ちゃん!」

「うん!」


 現は先程とは打って変わって、可愛らしい笑顔を浮かべるとこちらを向いた。


「刻兄ごめんね。事前に何も言わなくて」

「ん?いや別にいい。よくよく考えたら確かに今日の朝そんな感じのこと匂わせてたしな。気づけなかった俺も悪い」


 俺達はそこからニ、三語言葉を交わすと現はそのまま空宮に連れられてメイド喫茶に入っていった。


(まったく、世話のやける可愛い妹だよ)


第114話終わりましたね。文化祭の出し物なんかがもうそろそろリアルの学校で決まる頃ですかね?皆さんは何をしますか?僕は何をするんでしょうか?分かりません。

さてと次回は、9日です。お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になるよ!」「こんな可愛い妹が欲しい!」「こんな妹現実にはいねぇよ!」という人はぜひブックマークと☆お願いしますね!

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