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第106話.文化祭の準備⑵

「そっち材料足りてるー?」

「今のところは足りてるよ〜」

「分かったー」


 教室内、というか学校全体が生徒の声や作業をする音で騒がしいくらいに賑わっていた。

 俺は凛の補佐兼代役なので、凛が教室の作業に関われない時は俺が代わりに指示を出すことになっている。


「補佐兼代役ー、ここの飾り付けってこんな感じていい?」

「あぁ……そうだな。うん、それでいいと思う。何か変更があったらこっちで進めるから、気にせずにそのままやってくれ」

「了解でーす」


 なぜか名前ではなく補佐兼代役と呼ばれながら、教室内のあちらこちらを飛び回っていた。


「鏡坂ー、こっち手伝ってー」


 唯一俺の事を補佐兼代役と呼ばなかったのは灯崎くらいだ。それはそれで少し虚しくもあるんだが。

 なんで男なんだよ。よりにもよって。

 内心で毒づきながら灯崎に向かって一言言う。


「それくらい自分でやれ」

「えー!?手伝ってくれたっていいじゃんかよ!」


 そう言ってくる灯崎に俺は少し頭を抱えながらこう返した。


「お前が自分で立候補したんだから、それくらい自分の力で達成しろ」


 そう言うと他の場所から聞こえる補佐兼代役という、俺の新たな代名詞の元に急ぎ足で向かった。


「補佐兼代役ー、衣装とか全部買ってきたぞー」

「おお、ありがとう濱崎に山下」

「いえいえ。それが私達の役目ですからっ!」


 両手に大量のメイドコスプレの衣装が入った袋を持っている濱崎と山下がドンキホーテから帰ってきた。

 濱崎と山下は役目を果たしたのと同時に、どこか距離が近づいたようにも見える。

 濱崎が山下に話しかけたら、山下は笑顔を浮かべてそれに返し、その反対もまた然り。

 うん、この2人いい感じになってきてるな。

 内心でそう思いながら、衣装類をビニールから出して本番である明日にいつでも着れるように、準備だけしておくようにだけ2人に頼んだ。


「了解。適当に並べとくわ」

「おう、頼む」


 そう言うとまた別の作業にへと取り掛かった。



✲✲✲



 やぁやぁ皆さんはじめまして!私の名前は九条美結です!

って、いきなり誰なんだよーって話だよね?

 コホン、では僭越ながら私についての説明をしましょうか。私は今年の文化祭で演劇長をする事になった人なのです!ぱちぱち〜、フーフー!

 とまぁ、おふざけは置いといて。

 私はさっきも言った通り演劇長を務めることになりました。そして今は文化祭の前日。なんと最後の劇の通しなんです!私は脚本兼監督の方で参加してるので役を演じることはないけど、逸材は沢山いるからそれはそれでおっけー!


「美結ー、ここのセリフってもっと感情込めた方がいいかな?」


 誰が聞いているのか分からない脳内自己紹介をしていると、主演女優の蒼が台本片手にそう聞いてくる。


「そうだね。勢い的には涙を流すくらいでもいいんだけどね〜」


 私がそう言うと蒼は手をぶんぶんと振りながら、「さすがにそれは無理っ!難しすぎる!」とそう言った。


「まあ、簡単に出来ることでもないしね〜。ま、結論としてはもっと感情込めた方がいいってことだね」

「そっか、分かった!」


 蒼は人懐っこい笑顔を浮かべると、また稽古をしている皆の輪の中に戻って行った。

 うー、私も混ざりたい。あの中で演技したい!

 私は私の中から今にもあふれでそうなその欲を何とか抑えつつ、演技指導にあたる。


「ここはもう少し体を大きく使ってみて。こんな風に」


 時には自分で実際に実演してみたり。


「このセリフはお腹の底から声を出すつもりで」


 そう言って、私がそのセリフを言ってみたりと、みんなの輪の中で演技することはなくとも、意外とそれに近しいことは出来た。

 まあ、それとこれとは関係ないんだけどね?

 それからしばらくした後、私は皆に20分休憩と言い渡すと中庭に降りた。

 時間も夕方頃なので、日陰になっているここは涼しくて休憩するのには一番いいのだ!とか、そんな事を思いながら私は先に自販機でカフェオレを買っておき、ベンチに向かった。

 するとそこには既に先約がいる。

 少し猫背な背中に、普段は眠そうな目。でも決めた事は絶対にやりきる、私が気になってる人。

 鏡坂刻くん。

 私は彼がいるという事実だけで、話してもいないのに思わず顔を赤くしてしまった。


「あれ?おかしいな。熱かな?」


 私はボソボソと独り言を言いながら、手に持っている冷たいカフェオレのペットボトルを熱い頬にあてがった。

 頬からはひんやりとした冷気が伝わってくる。


「ん?九条か。どうした?」


 私がボソボソ言ってるのがベンチに座っている鏡坂くんにも聞こえたのか、こちらを首だけ向けてきている。


「ああっ!?う、うん……」


 私は突然話しかけられたのでいつもの調子で返すことが出来なかった。しかしそれに違和感を感じることは特に無かったのか、鏡坂くんは隣に座れたとでも言わんばかりに、自分の隣の席を手でポンポンっと叩いている。


「え、えーと……」

「何してんだよ?九条も休憩だろ?なら座れ。立ってるのは意外と疲れる」

「う、うん」


 私は鏡坂くんに言われるがままに従った。

 き、緊張する……。


第106話終わりましたね。いや今回はまさかの九条もラブコメに参戦という感じでしたね。当初は全く想定しておりませんでした!九条さんあんたもやるねぇ。

さてと次回は、23日です!お楽しみに!

それとブックマークと☆も忘れずにね!

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