番外編第100話.ある女子の休日
目覚まし時計のアラームの音がピピピッと忙しなく私の部屋に鳴り響く。私は寝ぼけ眼を擦りながらカチッと止めた。
時刻は7時。
普段の平日に起きる時間よりかは幾分か遅い。
私は「ふあぁ」と大きく口を開いて欠伸をする。
「おはようございます」
誰に向かって言うでもなくそう呟くと私は体を起こす。
自身の半身を覆っている布団を退けると、ベッドから立ち上がり大きく伸びをする。
「朝ごはん、作りましょうか」
ボソリとそう言うと先に洗面所に向かい、顔を洗って目をパッチリ覚ませた後にキッチンにへと向かった。
お父さんはもう既に会社に行っているらしく、この家にいるのは私を含めお姉ちゃんとお母さんだけ。すでに公務員として働いているお姉ちゃんは日頃の疲れの影響からなのか、休日は10時を越えないとなかなか起きてこない。
それに対して、専業主婦として家のために頑張ってくれているお母さんは今日も私より早く起きて、お父さんを会社に送り出していたみたいだ。
「あら、有理おはよう」
キッチンの冷蔵庫を開けた音に気がついたのか、リビングにあるソファに深く腰かけてコーヒーを飲んでいた母親は後ろをにいる私の方を向きながらそう朝の挨拶をしてくれる。
「おはようお母さん」
そう返すと、お母さんはまた前を向いて朝のコーヒーを楽しみ始めた。
「よしっ、朝ごはんはサンドイッチとコーヒーのモーニングセットにしましょう!」
1人そう宣言すると早速サンドイッチ作りに取り組み始める。
食パンを持ってくると一枚一枚丁寧にパンの耳を外していく。
次に冷蔵庫から冷やされたトマトとハム、そして瑞々しいレタスを私は取りだした。
トマトとレタスをサッと水洗いすると、まな板の上に乗せて包丁でパンに挟まるサイズにまで切っていく。
次にパックに入っているハムを開けると、こちらも同様にパンに挟まるサイズに包丁で切り分けた。
「これくらいでいいですかね?」
そう独り言を零すと、切り分けた具材をパンにどんどん載せていった。
「完成です」
またそう独り言を零すと、あらかじめポットに入れていたお湯が沸く。
お湯の湧いたそのポットを手に取るとインスタントのコーヒーをマグカップに入れる。
辺りにはコーヒー特有の香りが漂っている。
「あら?有理もコーヒー飲むのね。ブラック?」
コーヒーの匂いに気がついたのかお母さんがまたこちらを向いてそう聞いてきた。
「ううん、違うよ。ミルクと砂糖も少し入れて飲む」
首を横に振って否定するとそう言った。
「そう。砂糖の入れすぎはダメよ?体に悪いからね。程々が一番!」
お母さんは実際の年齢よりも数歳若々しい笑顔を浮かべながら私にそう言ってくる。
自分の親ながら、子供の贔屓目なしにして見てもかなり美人な人なのだろう。
「分かった」
そう言うと少しの砂糖と程よい量のミルクを入れて、スプーンでかき混ぜた。
✲✲✲
時刻は時計の短針が大きく3進んで10時。
私が本をソファに座りながら読んでいると、廊下とリビングに繋げるドアがガチャりと開いた。
私がドアの方を向くと髪の毛の後ろ側をピンとはねさせて、少し乱れ気味になったパジャマ姿のお姉ちゃんが立っていた。
「ふあぁ……有理ちゃんおはよぉ〜」
お姉ちゃんはそう言うと、ソファに座っている私の所に抱き着くように近づいてくる。
「うふふ〜、有理ちゃんあったかいね〜」
「ち、ちょっとお姉ちゃん……本が読めない」
「んー?ごめんねぇ。でも有理ちゃんが可愛いから離れなーい」
お姉ちゃんはそう言うと先程よりも強く私に抱き着いてきた。この人は大人なのか子供なのかたまに分からなくなってしまう。
(まぁ、でもそれがお姉ちゃんのいい所でもあるんだけれども)
「お姉ちゃん朝ごはん作ってラップして、向こうのテーブルの上に置いといたから食べておいてね」
「分かった、有理ちゃんは良いお嫁さんになれるね〜」
お姉ちゃんはそう言うとにっこりと笑う。
「お嫁さんって、私まだそういった人もいないんだよ?だから、良いお嫁さんとかはまだ私には関係ありません!」
そう言うとお姉ちゃんは不敵な笑みを浮かべた。
「分からないよ〜?もしかしたら有理ちゃんのことを好きな男の子が案外近くにいるかもだしね?」
「ち、近く?」
お姉ちゃんはそうとだけ言うと、私から離れて少し遅めの朝ごはんを食べに行った。
「私の近く……」
✲✲✲
「有理ちゃん何かいい感じの写真ない?」
私が自室で勉強をしているとコンコンと扉をノックしてお姉ちゃんが入ってきた。
「写真?どんなのがいいの?」
そう聞くとお姉ちゃんは少し想像を膨らませるような仕草をして、一つの答えに行き着いた様だ。
「鳥、鳥の写真がいいかな!」
「分かった」
私はそう言うと鳥の写真をプリントアウトしてまとめたファイルを取り出してきて、その中から一枚選んでお姉ちゃんに渡した。
「これとかはどう?」
「おー、カワセミか〜。いいね、少し借りてくね」
「うん」
「ありがと」
お姉ちゃんはそう言うと私の部屋から出ていった。
お姉ちゃんはいつも休日には自分の絵の技術をあげるために絵を描いている。その時によく私の撮った写真をモデルに使ったりしているのだ。
そして描いた絵はよく私にくれたりもする。もちろんのことだけどお姉ちゃんは美術の教師なので絵はとっても上手だ。それこそ写真と肩を並べれるくらいに。
「お姉ちゃんは勉強熱心ですからね。私も負けていられません」
私はそう思うと一度中断していた勉強にまた取り組み始めた。
✲✲✲
外はもうすっかり暗くなっていたので、私は勉強を中断しお風呂に入る準備をする。
「下着と部屋着も持ってと」
私は着替えを持つと一階に降りてお風呂場に向かった。
お風呂場に行くと鍵をしっかり閉めて私は服を脱いでいき体を洗い始める。
それなりに長い髪の毛を丁寧に洗ってから顔と体を丁寧に洗うと私はゆっくりと湯船につかり始める。
「ふぅ」
私は息をゆっくり吐くと疲れをどんどんお湯に溶かしていく。
明日は学校。
さて、一週間頑張っていきましょう!
番外編第100話.ある女子の休日終わりましたね。記念すべき100話目がまさかの番外編というなかなか珍しい事が起きました。多分文化祭の話が終わった後にも番外編を1話の入れると思うのでその時は楽しみにしておいて下さいね!
さてと次回は、11日です。お楽しみに!
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