24話✿呆れ【恋視点】
…僕は今、車を走って追い掛けている。
謎を解き明かす為の尾行━━
いや。
友人を助ける為の追跡━━
いや。
取り繕うのは辞めよう。
……単純にストーキングである。
あの後割と近い春さんの家に向かい、家の周りで玄関が見える位置に隠れていた。
…やってること完全に犯罪者じゃね?
ま、まぁいい。良くないけど。
20分くらい待つと、公認のダンジョン探索で一緒に来ていた水浦さんが車で来て、玄関で軽く話をした後水浦さんが乗ってきた車に2人とも乗った為、その後をつけているのである。
因みに、春さんの家は中学の集団下校の時に知った。
その時は行く事は無いと思ってたけどね。
…あ、さっき走って車を追い掛けてるって言ったけど、それは僕の足が早い訳じゃなくて住宅街だから安全運転で車の速度が出て無いだけ。
最後にステータスを見たのは昨日だけど、最初に比べてステータスはかなり上がってる。
……今関係無いけど。
ダンジョンに毎日潜りながら調べた結果、ステータスはダンジョン内しか意味をなさないことが分かった。
幾らLvを上げても実質身体能力は上がらない訳だ。
閑話休題。
しかし、どこに向かっているのだろうか。
方向的に…西風美神か病院くらいしか無いけど。
誰かが入院したって聞いた覚えは無いし、西風美神と予想して別ルートから先に行く事にする。
まぁ、入院しても僕に連絡が来る理由って実はほぼ無いけど。
後は県外とかなら仕様が無い。
知らん。
>>>
…来た。
西風美神の前で隠れて待っていると、1分程で春さんと水浦さんが乗っている車が来た。
ちなみに、隠れる時はスキルを使ってる。
借物だけど、こんな事するのは今くらいだろうし、練習する時間とかが無かったから使える物は使う精神。
春さん達は車を降りた後、体育館の方へ歩いて行った。
…若干春さんが焦ってるように見えなくも無い。
周りを警戒しつつ、間をとって後を追う。
……人少ないな。
鬼永さんに電話して見るか。
春さん達を視界に入れつつ、僕はスマホを操作する。
鬼永さんを呼び出している間に、春さん達は体育館の中に入って行った。扉は開けたまま。
それを見て、僕は扉の所まで音を立てないように移動する。
『はい、鬼永です』
やっと出た。
僕は春さん達に気付かれ無い様に小声で喋る。
「すみません。西颯です。鬼永さんに聞きたい事があるんですが。」
『はい。なんでしょう』
「今日って西風美神のダンジョン周辺に配備された人とか少なかったりします?後、職員の人少なくないですか?」
『…いえ、特にそんな話は聞いていません。』
無いのか。
明らかに前来た時の6割居るかどうかくらいなんだけど。
……因みに、電話しながらもしっかり体育倉庫に入って行く春さん達を視界に捉えている。
「そうですか。……春さんから連絡来たりしました?」
『っ!…いえ。春ちゃんからの連絡は無いわ。』
明らかに動揺したな、今。
春さんが政府から狙われる理由として考えられるのは、今だ1匹…1人しかいない仲間にしたモン娘と今の所焔しか攻略されてないからドロップアイテムとか…攻略報酬とかか?
正直僕にお偉いサマの信用は無い。
この考えが頭をよぎった時、有り得そーくらいしか思わなかった。
…しかし、困った。
僕には人が嘘をついているか見抜く能力とかは無い。
ここは思い切って突っ込んで見るか。
「……もしかして、なんですけど。」
『…えぇ。』
「水浦さんか鬼永さん、若しくは両方に、春さんのダンジョン攻略報酬を奪えとか、そう言う指示が出ました?」
『………えぇ、出たわ。』
「はぁ…」
やっぱり。
頭が痛くなって来た。
でも、これを僕に言う所とここに居ない事を考えると、鬼永さんは反対した可能性が高い。
僕は呆れを隠さず体育倉庫の中を見る。
丁度、水浦さんが目立たない様に置いてあったバールを、春さんに気付かれないよう後ろに下がって、そっと回収した。
…なんでスタンガンじゃなくて鈍器なんだろ。
ポーション関連で何かあるのか?
まぁ、今は良いか。
「鬼永さん、もし春さんを助けたいと思うなら、西風美神の体育館前まで来て下さい。」
『え?待っ━━』
そう言って、僕は一方的に電話を切る。
何か言ってた気がするけど気にしない。
━━これだから、権力者って言うのは。
誰に言うでも無く、小さく呟く。
丁度、春さんが後ろから水浦さんに殴られた所だった。