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焔の賢者  作者: 緋藍翠
二章「誘拐」
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18話✿相談電話と要求


取り敢えず、鬼永さんは忙しそうだし…水浦さんに相談しようかな。


「はい、もしもし水浦です。」


繋がった!


「あ、水浦さん!今って時間大丈夫ですか?」


あ、本題の前に名乗ってないや…落ち着けてないな、私。


「春ちゃん?どうかしたの?何かあった?」


「え、えっと…大変なんです!弟と友達が攫われちゃって!」


できるだけ取り乱さないように冷静に伝える。

焦って、大事な事を何も伝えられなかったら本末転倒だからね。


「…成程。内容を詳しく教えて。後、私以外に誰かに言った?」


特に驚いたりする事も無く、冷静に話を進めてくれる。

やっぱり大人の人って頼りになるねっ!


「え、えっとですね、まず、家に急に電話がかかって来て、それで電話に出たら名乗らずに名前を聞いてきて、それで…それに応えたら、今度はいきなりお前の弟と友達は預かったって言ってきて、それで…水浦さん以外にはまだ誰にも話してません!鬼永さんが今大丈夫なら鬼永さんにも伝えようと思ってます」


えっと…他に伝えなきゃ行けない事は無いよね…?


「うん、わかったわ。取り敢えず合流しましょう…えっと、私の方から迎えに行くわね。それと鬼永さんは…忙しくて手が離せないみたい。」


「そうですか…お願いします…。あ、言い忘れてたんですけど、時間指定は16時です!」


「準備するから、電話切るわね。何かあったら遠慮無く電話してね。…あ、焦って1人で体育倉庫に行ったりしちゃダメよ。」


「大丈夫です!…でも、早めにお願いします。」


「うん。それじゃあ」




えっと、私も早く準備しなきゃ…




❀✿❀✿❀✿❀✿



スマホ持ったし、書き置きも念の為置いて置いたし、飲み物飲んだし、防犯ブザーも持ったし…

大丈夫だよね?忘れ物、ないよね?


「…あ、杖…持ってこうかな…」


うーん…でも、誘拐犯相手に手が塞がる武器は辞めた方がいいのかな。

結局閃とかを盾にされそうだし…脅しなら私単体で魔法が使えるから持ってる旨みはほとんど無い…筈。

ここは置いて行こう。


結論を出した所で、インターホンがピンポンと鳴った。

一応念の為に誰かを確認して見ると、水浦さんが立っていた。

荷物を持って扉を開ける。


「水浦さん!」


「お待たせ春ちゃん。行こっか。ほら、車に乗って」


水浦さんの言う事を聞いて車に乗り込み、水浦さんを見る。

運転席に座って車を発進させようとしている水浦さんからはあまり緊張を感じ無くて、あくまで自然体のように私には見える。


「春ちゃん大丈夫?誘拐犯なんて春ちゃんなら余裕で倒せちゃうわよ!」


と、バックミラー越しにこっちを見て元気付けてくれる。

やっぱり自分より長く生きてる人には頼るべきだねっ!



✿❀✿❀



西風美神の体育館と体育倉庫は本棟から少し離れてる。

校内を少し歩いた感じ、人がいつもの半分くらいな気がする。気のせいかもだけど…。


体育館前に着いたから、そーっと扉を開けて中に入る。

一応、私が前に出て水浦さんが後ろに居てくれる感じ…ほぼ並列だけどね。


体育館の中は見回してみても、特に何も無い。

…いや、もしかしたらいつもは無いものがあるのかもしれないけど、私はここに2回しか来たことがないから分からない。

念の為出来る限り辺りを警戒して進む。

奇襲なんてされたらたまったものじゃないからね。


体育倉庫の扉は閉まってた。

中に入る前に、逸る気持ちを抑えて1度深呼吸してから、意を決して入る。


中に入ると、部屋の奥に大柄な…多分男が居た。

なんで多分かっていうと、覆面を付けてて殆ど肌が見えてる所がないんだよね。

それでもまぁ、多分体格的に男。

その回りには、段ボールが積んである。


「来たか。」


誘拐犯が抑揚の無い低い声で喋った。

その間、私は部屋に視線をさまよわせて何か罠のようなものが無いかを確認する。


「何が目的なのっ!」


声を張り上げて、相手を見る。

少なくとも見える範囲には罠のようなものはなかった。


「落ち着け。…一応武器を持っていたら捨てて手を上げろ。おい、後ろのお前もだ」


鋭い声で指示を出して来る。

私は武器を持って来てないから、そのまま手を上げる。

閃達がどこにいるか分からない以上、誘拐犯指示に従った方がいいはず。


「それでいいんだ。」


私達が手を上げると、誘拐犯は懐から何かを取り出す。

よく見なくても分かる。あれは…拳銃。

それを認識した瞬間、体が強ばる。

やっぱり怖い。でも、それに気付かれないように声を出す。


「せ、閃は!?美桜ちゃんはどこ!?」


それに対して、誘拐犯は床に手を伸ばすように身を屈める。


「大丈夫だ、死んじゃいない」


そう言いながら、何かを持ち上げる。

段ボールの裏から現れたのは、猿轡を噛まされ、ロープで縛られた閃。


「っ!閃!」


思わず叫んでしまった。

その後直ぐに怒りがふつふつと湧いてくる。


「変な気を起こすな。お前が何かしたら直ぐに撃つぞ!」


そう怒鳴りながら、閃の眉間に拳銃を突き付ける。

私は唇を噛みながら、何とか怒りを抑えようと必死に心を落ち着かせる。

閃を助けるにはどうすれば良い?聖域で保護?

…ダメ。銃の発砲に間に合う自信が無い。

普通に魔法で攻撃…も、撃たれたらダメだから意味が無い。

…結局、誘拐犯に従うしか無いんだ。


「…要件は何」


「ケルベロスの魔石と、お前が仲間にしたモン娘を寄越せ。あぁ、後焔のクリア報酬もな。家族の代わりにモノで済むんだから安いもんだろ」


魔石と杖と…レナ?

最悪魔石と杖までなら我慢して差し出せる。

…でも、レナは違う。レナは物じゃない。

出会ってから1週間くらいしか立ってないけど、一緒に暮らしてそれは分かった。


「っ!『能力解放』!『聖域』!『炎りゅ━━」


聖域を唱えて、怒りに身を任せて炎龍を発動しかけたその時、後頭部に鈍い痛みが走った。

薄れる意識の中、後ろを振り返ると、開けっ放しだった体育館の扉の奥に冷めた目でこちらを眺めている恋君が居たのが見えた。


なんで…?

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