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よろしくお願いします!

 

「ん〜!」


 店を出てから一つ背伸びをした。


 入る前は真上に登っていたお日様は今や夕日が顔をのぞかせている。


 結構な時間がかかっていたようだ。


 ―――まぁ、あんな服に悩んでたら時間も経つよね...


 せっかくの街がぁぁとガックシと肩を下ろした。


 慣れないヒールのせいか少しふらふらしながらいつもよりゆっくりとしたペースで歩く。途中転けそうになりながらもまぁいいと頭を振る。


 なんたって今日はこんな可愛い服を着れたんだから!



 にまにましながら歩いていくとちくちくと至る所から視線が刺さる。気にせず歩いているとひそひそと声が聞こえてくる。何かあったのかと思い、ちらっと声のする方へ視線を動かすと目があった瞬間視線をそらされた。


 ―――えっ、


 どういうことだと戸惑いながらきょろきょろと見回すが一向に視線が合わない。


 諦めて視線をナタリーに向けると、顎に手をやり、何かを考え込んでいるようだ。しばらくすると私と周りを見比べて「対処が必要ですね...」と呟いた。


 ―――一体どういうことなんだ?


 頭に?が浮かびながら歩いていくと目に入ったのは行きに見つけたあの串家だ。ここまでいい匂いが漂ってくる。


 タッタッタッと一目散に駆け寄って屋台を覗く。


「こんにちはー!」


「おや、いらっしゃい。随分べっぴんさんなお嬢さんだ。迷子かい?」


「ううん、違うよ!」


 べっぴんさんだって!!とお世辞に喜びながらも本数を数える。


 ―――えっと、ナタリーとリリーに1本ずつ、私が2本食べてー、お腹がすいた用に1本の計5本だよね、うん合ってる!


「5本ください!」


「おう!待ってな!すぐできるからなっ!」


 そう言って屋台のおじちゃんはテキパキと網の上の肉串をひっくりがえし焼いていく。パチパチと火の音が響き、だんだんと香ばしいいい匂いが漂ってくる。


 おっ、おいしそうっ!!


 じゅるりと出そうな唾液を手でふく。


 紙袋に5本詰めてくれたところで手を出すともう一本いれた。「あれ?」と顔に出ていたのか「べっぴんさんだからサービスしとくよっ!」と1本余分に入れてくれたのだ。


「ありがとう!!」


 と言い、笑顔で受け取ろうとした瞬間、目の前に袋を掴む手が現れた。


 ―――え?



 瞬きしている間に肉串の入った袋を掴み走り出しそうとしている少年がいる。


 とっさに手首をつかみ、捻ってから床に押さえつけた。


「っぐぇ」


 下から変な声がするが気にしない。


「もう!何するの!」


 空いている方の手で袋をつかみ、中身を確認する。


 ―――よし。ちゃんと入ってる。


 中から1本取り出し、少年の前にだす。


 少年に渡そうとしていると店主が少し顔を引き攣らせながら話しかけてくる。


「そ、それにしても嬢ちゃん強いな!!」


「こんなの嗜みだよ」


「そ、そうなのか...。最近の女の子はすごいなぁ」


 と感慨深く頷いてる店主の前でリリーが真面目な顔をしながら「違います」と主張していた。


 なかなか受け取らないと思っていたらまだ床に押さえつけたままだった。


 慌てて拘束をとき、渡そうとかがんだ。


「はい。そんなに食べたいならどうぞ」


 やっと受け取るのかと思って手が伸びていたのは紙袋のほう。ばっと無理矢理取られ、ぎゅっとお腹に抱え込みながら走り出す。


「っえっ!ちょっと待って!!!」


 完全に油断していた。


 素早く手にある1本の肉串をナタリーに押し付け少年を探す。


 走り出した途端ヒールのせいでぐらっと体がよろける。


「「っリリアス様!!」」


 とタイミングバッチリなナタリーとリリーの悲鳴にも似た声が響く。


「ナタリー!お会計よろしく!ちょっと取り返してくる!」


 と言い残し、ぽいぽいっとヒールを脱ぎ捨て、裸足のまま全速力で駆けだした。





ありがとうございました

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