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よろしくお願いします!
「これに決めます!」
とリリーの声が響いた。他の何着かも決まっていたらしく、5、6着の服が積まれていた。
何時間たったのか、いや、きっと数十分のことだがぼーっとしている着せ替え人形の自分にはとても長く感じた。
やっと終わったかとため息をはいた。
「はぁ。よし、じゃあ帰ろうか」
重い腰を持ち上げ椅子から立ち上がろうとしたが、ナタリーが指を指す。
「あちらの服はよろしいのですか?」
ナタリーの言葉を聞いた瞬間、ピクッと耳が動く。指の先にあるのは一目惚れしたワンピース。
(そうだっ!あのワンピース!)
さっきの体の重さは何処へやら、軽々とした足取りで先ほど目につけたワンピースの元へ向かう。
「せっかくですし、何着か見繕いましょう」
「これがいい!」
ナタリーの話は耳を通らず、気に入った淡い水色のワンピースを抱きしめる。嬉しさのあまり、思わず頬が綻ぶ。
「ふふふ、よほどそちらが気に入ったのですね。帰りはそれを着て帰られますか?」
「いいの?!」
「はい」
「やったー!!」
ルンルン踊り出しそうなテンションであった。
「もしよろしければ、二階で化粧や髪型をセットできますがいかがでしょうか?」
きっと男装しているのは訳ありだと察したのか、店員がそう提案してくれる。
聞いた途端、目がキラキラと輝きだす。
ねぇいいよね?!ねぇねぇ!!と無言で訴えながらナタリーを見上げると「しょうがないですね」という顔をしながら頷いてくてた。
やったぁ!!!
「髪型はこの子がやるので化粧をおねがいします。私はもう数着選んでおきますので、いってらっしゃいませ」
そう言ったナタリーを置いて、リリーと私は二階に向かった。
◇◆◇
二階に上がると早速服に着替えさせてもらい、鏡の前に座った。
てきぱきと準備をして私の前に来ると店員は「ほぉ」と息を吐く。
「それにしてもお肌がとても綺麗ですね。それに御髪の子のツヤ!」
「そうでしょうそうでしょう!このもっちもちの卵肌、髪の艶を維持にするには毎日のケアが欠かせないのですっ!」
「こんな綺麗なんて羨ましいですっ!」
それを聞いたリリーがどやぁっとする。店員さんがリリーに秘訣を聞いているうちに意気投合したのか、私の自慢を始めた。
いやいや、おかしくないかい…?
私のことになるとちょっと、いやだいぶおかしくなるのはどうしてだろう…?
頭の中でぐるぐるしているといつの間にか寝てしまっていたのか「できましたよ」と起こされた。
目を開けると、その鏡には天使が映っていた。
「うわぁ!!!」
髪は複雑に編み込まれ、ハーフアップにしている。残った後ろ髪はウェーブのようにゆるく巻いてあり、動くたびにゆらゆらと銀髪が揺れる。
化粧は、シンプルながらも女性らしさがあり、はかなく消えてしまいそうな女の子なしさも兼ね備えていた。
(す、すごい!化粧1つでこんなにかわるなんて!)
感動に浸っていると視界の隅で2人は「やりきったぁ」と幸せそうな顔をして汗を拭っていた。
早速ナタリーにも見せようと階段を降りた。
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