一時限目
「起立、令、着席」
委員長の号令によって授業が始まった。
まぁ、授業といっても実験はおろか生徒からの発言も少ない。
ただ教師の言ったことをノートに写し、内容の確認のために演習を行う。
そして、演習終盤にで数人が回答し、添削される。
そんな単純作業の毎日だ。
こんなので理解ができ、覚えることができるものがいるのだから不思議でならない。
そう、ライトこそがその一人だったのだ。
俺は隣の空席にしばしば目をやりながらノートをとっていた。
元素の結合に関すること。電子とは何なのか。結合の種類など最初に習うことだろう。
普通に考えたら難しくはない範囲だろう。
だが、俺は、授業そっちのけで朝の夢のことを考えていた。
あれは夢だったのか。夢だとして、ライトの言っていた事とはいったい何だったのか。
頭の中はそのことばかり。
だからこそ気づいていなかった。
演習問題の回答者として自分が指名されていたことに。
「おい、シロウ!聞こえているか!」
大声をあげられるまで全然気づかなかったのだ。
ガタッと音を立てて立ち上がる。
「この問題を解いてみろ」
周りを見ればみな余裕で解いているようだが、
授業内容が一切入ってない自分には何が何だかわからなかった。
どうするべきかと悩んでいると、親友の声がどこからか聞こえてきた。
「何悩んでんだよ。そんな問題簡単だろうが。どこで詰まってんだよ。」
俺はきょろきょろとあたりを見回すが、親友の姿はどこにもない。
そして、クラス中の人々が不思議そうに俺を見ていた。
その時に、俺にしか声が聞こえていないことが分かった。
が、そのまま立っているのもあれなので、問題をもう一度確認し、考え、答えた。
多少時間はかかってしまったが何とか乗り越えられたのだ。
席に着き、先ほど聞こえた声について考えていた。
が、それはすぐに終わった。
なぜなら、本人がそこに、自分の隣に座っていたからだ。
座っていたといっても見えているのはシロウにだけ。
しかも、体は透けていて、まるで幽霊のようだった。
「なんだ、上の空だったにしては簡単に解けんじゃねえか。
それはそうと、授業はしっかり受けろよなぁ。」
俺の心配をよそに、隣に座るやつはそういった。
「誰のせいだと思ってるんだ」
俺は小声でそうつぶやいた。
「て、何でお前がここにいんだよ!」
俺は大声で叫んでいた。
直後教室にいた者全員が俺のほうを向く。
不思議そうな顔をして。
ミキも心配そうにこちらを見ている。
『そうか、俺にしか見えていないし、聞こえていないのか。』
不思議と俺は自分の中で納得していた。
授業が終了すると、ミキが近くに来たので、なんでもないよと言って教室を後にした。
ミキにこのことを伝えようかと悩みはしたが、すぐに答えはでなかった。
後ろから追ってきたミキも合わせ、三人?で次の教室へ向かう。