表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

神のいとし子と滅びの黒き魔女

作者: どんC

 光の中に私は居た。


 ここはどこ?


 辺りを見渡す。


 何も無い白い空間。


 誰も居ないの?


 私は死んだ?


 いえ……処刑された。


 何時? 誰に? どうして?


 ああ……思い出した。


 私の名はエレイン・ド・スライク。


 伯爵令嬢だった。


 いえ……結婚したからエレイン・ロード・ブルゾ王妃……


 ああ……違う。


 私は……処刑されたから……身分も剝奪されてただのエレイン……


 私は無実の罪で殺された。


 国王に。


 第14代ヨハン・パッヘルベル・ロード・ブルゾ。


 それが私の夫だった男の名だ。


 私を処刑した男の名でもある。


 あの男はとても美しかった。


 男に美しいと言うのは失礼になるが。


 あの男は本当に美形だった。


 取柄はそれしかなかったが……


 処刑される前でも私は彼に釘付けで。


 ギロチンの刃が落ちる寸前でも彼を見続けていた。


 無実を叫びながら。


 馬鹿馬鹿しい。


 私達が無実なのは皆知っている。


 あの女のせいで無実の罪で殺された。


 父も母も兄もみんな……


 我が家は代々王家の剣として仕えてきた。


 それが反逆罪で処刑されたのだ。


 あの女。


 小原利恵こはらとしえ


 私とヨハンが結婚して一年がたった、結婚記念日のパーティに大広間に光と共に現れた。


 人々は驚き神に問うた。


『彼女は何者で何故ここに来たのか?』


『彼女は【神のいとし子】で国王の伴侶となって生まれるはずが間違えて別の世界に生まれてしまった。そこで慌ててこの世界に連れ戻した』


【神のいとし子】神はそう告げた。


 寝耳に水とはこの事だ。


【神のいとし子】と結婚した王はこの世界の覇者となる。


 国は富み全ての災いは排除される。


 直ぐに私達一族は無実の罪を着せられ一ヶ月後処刑された。


 私のお腹には彼の子供がいた。


 子供を助けてと懇願したが。


「腹の子は私の子供ではない」


 あの男はそう言った。


 別の男の子だと。


 浮気相手として近衛騎士が生贄にされた。


 真面目な騎士だった。


 彼には婚約者がいたのに。


 正気に返った今なら言える。


 あの男は屑だと。


 何であんなのに夢中になっていたんだろう?


 確かに私は面食いだが、飽きっぽいのだ。


 顔だけで十六年以上夢中になるなんて可笑しい。


 何か変だ。


 あれ? この話何処かで……


【時空を超えて今あなたの所に行きます】


 あの乙女ゲームに似ているな。


 長ったらしいタイトルで余り人気が出なかった。


 絵も綺麗だし豪華声優陣だったのに。


 ヒロインが馬鹿で騒がしく共感するのがいまいちだったせいだろう。


 その時の私はOLで社会人としてバリバリ働いていたし、彼氏もいたから余り夢中になれなかった。


 私も友人に借りてやったけど王子を攻略すると飽きて直ぐに友人に返したっけ。


 でも……ヒロインが現れたのは王太子と悪役令嬢の婚約パーティの時で結婚一周年記念パーティの時じゃない。


 ????????


 えっ? 乙女ゲーム?


 日本? OL? 彼氏?


 何それ?


 私の中に日本人として生きた記憶があった。


 死んだ時の記憶は無いが……


『あらあらあらあら~~思い出したのね』


 びくりと肩が震えた。

 気が付けば、美人が隣にいる。


「あ……貴方は……女神様……あっ違うか」


 確かにその人は美人だがなんか薄汚れている。


 そう言えばこの世界も何だか煤けてきた?


『そうなのよ!! そうなのよ!! 私の力が弱まったのよ』


「貴方はもしかして女神様?」


『そう私は女神リリス』


「あの……女神様大変失礼ですが。何か煤けてませんか?」


『そうなのよ!! そうなのよ!! これも全てあの糞ビッチのせいよ~~~!!』


「女神様相当口悪いですね。でっ糞ビッチって誰の事ですか?」


『小原利恵に決まっているじゃないの!!』


「えっ? 彼女【神のいとし子】ですよね?」


『はあ~~~。聞いてちょうだい!! 語るも涙聞いたらお笑いの物語を~~~』


 何かこの女神様大阪のおばちゃんの乗りだな~~まあ聞くけど。


 いつの間にか畳に丸テーブルそれにお茶にお煎餅が現れた。


 あっ!! このお煎餅浅草で売っているお煎餅だ!! 懐かしいな~~友達がお土産でよくくれたな~~


『彼女は本来この世界に生まれるはずだったのよ』


「神託で言ってましたよね」


 女神様がお茶とお煎餅をすすめてくれる。


 お礼を言って頂く。


『所があっちの世界に生まれてしまったの、【祝福】を持って』


「【祝福】をですか?」


『そして彼女は【祝福】を使ってあっちの世界で逆ハーしていた。【桜花学園ラブラブ旋風~貴方は私とスターになる~】っていう乙女ゲームにいたわ。そうとは知らず私は彼女をこっちの世界に呼び戻してしまった。出がらしを……』


「出がらしって……また【祝福】を付けたらいいだけですよね?」


『出来ないのよ!! あの女援助交際と枕営業もやってて処女じゃないのよ~~~!!』


「あ~~らら~~じゃあの国どうなりました?」


『滅びたわ。あんたの一族が処刑された後に。災害・飢饉・内乱・戦争でね』


「えっ? 【神のいとし子】に偽りありですね」


『そうよ~~~!! お陰で神に対する信仰心がた落ちよ~~~!!』


 ちゃぶ台に泣き伏す女神様。うんシュールだ。


『ほらあんたのお母さんギルモワ皇国の第五皇女だったじゃない。怒った皇国に滅ぼされたわ。糞王も糞ビッチも火炙りにされた。王族を代々守ってきた一族を殺した王なんて誰も味方しないわよ!!』


「あ~~お祖父様お母様の事溺愛してましたね~~要するに。ざまぁ~~~」


『お陰で神の信頼がた落ち。神の力である信仰心が集まらず私の力は弱まる一方』


 女神はため息をつく。


『そこで貴女にお詫びとお願いがあるの』


「嫌です」


『即答!! 話聞く前に即答!!』


「面倒ごとの予感しかないから」


『あなたを生き返らせてあげるから【祝福】を持って行ってよ~~!! 適当な王と結婚すればいいじゃん。ほらあんたの皇国の従兄弟とか~~』


「え~~めんどい。それにコウドウイナー君(従兄弟)は年下なんだよな~~。ショタはあんまり好きじゃない。可愛い弟みたいなもんだし」


『家族を生き返らせる事はできないけど貴女が産む子供にすることはできるのよ~~!! お願い~~』


 女神様が拝みたおす。


「あれ? 普通なら時を戻して私が子供の時に覚醒するのが王道では?」


『今の私にそれほどの力は無いわ。ほらまた家族に会えるのよ』


 お父様・お母様・お兄様は大切な家族だ。


「しょうがないなぁ~~」


 私は渋々頷いた。


 ぱかり


 私が座っていた畳が開き、そのまま下界に落っこちる。


「きぃやあぁぁぁぁぁぁぁ~~~!! 忍者屋敷かあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!!」


『【祝福】は付けたわ。頑張って王族と結婚してね~~~~♥』


 ポンコツ女神がハンカチを振っている。


 私は下へ下へと落っこちる。





 ここは元ブルゾ国の王都。


 広場では殺されたエレインの一族の追悼式典が行なわれていた。


 神官達が祈りを捧げる。


 小原利恵が来てスライク伯爵家が処刑されてから十年たった。


【神のいとし子】はこの国に恩恵をもたらすはずが、彼女が齎したのは災害・飢饉・内乱・戦争そうしてブルゾ王家の滅亡であった。


 人々は噂した。


 小原利恵は邪神がこの世界を滅ぼすために送り込んだ【滅びの黒き魔女】ではないかと。


 もし本当に小原利恵が【神のいとし子】なら【神のいとし子】を殺したコウドウイナー皇太子やギルモワ国が何の天罰も受けずに存在するはずが無い。


 王家の剣として代々仕えてきたスライク家を処刑するのは可笑しな事だった。


 ましてミイナ伯爵夫人はギルモワ国の皇女だ。


 軍部の要であるスライク家を廃した為に軍はガタガタになり、他国の侵略を受けることになった。


 ブルゾ国を滅ぼしたコウドウイナー皇太子も27歳の青年となった。


 彼には婚約者はいない。


 頑固に拒んでいる。


 エレインは彼の初恋の相手だった。


 優しく努力家のエレイン。


 花畑で彼に花冠を作ってくれたエレイン。


 体が弱く治療の為にこの国に滞在した時エレインと出会った。


 辛い治療を耐えられたのもエレインやエレインの母親の励ましがあったからだ。


 お陰で今はすっかり健康体になった。


 だからこそエレインとスライク一族が処刑された時、祖父よりも激怒した。


 災害・飢饉・内乱・戦争が起きた時ようやくブルゾ国に攻め込む事ができた。


 ブルゾ国はギルモワ皇国の領地となり何とか立て直す事ができた。


 まだまだ災害と飢饉の後遺症に悩まされているが。


「エレイン……」


 ギルモワ皇国の皇太子コウドウイナーは俯いた。


 多くの者が一族の死を悼んでいる。


 広場の祭壇には花が溢れ、あちらこちらからすすり泣きの声が漏れる。


 もっと早く動けていたら……


 コウドウイナーの心は後悔で一杯だった。


 あの小原利恵と言う女。


 = 私は【神のいとし子】よ!! ねえコウドウイナー今なら許してあげるわ。さあ女神の怒りに触れる前に私を助けなさい。貴方を私の夫にしてあげる =


 最後まで見苦しく喚いていた。


 この女のせいでエレインは殺された!!


 怒りで手が震えた。


 エレインの夫だったあの男も見苦しかった。


 = 私は悪くない!! 騙されたのだ!! あの魔女に!! 何が【神のいとし子】だ!! 祝福なんて何も無い!! それどころか災害・飢饉・戦争・反乱とんだ疫病神だ!! ああ……エレイン……エレイン……彼女のお腹には私の子供がいたのに……=


 あの女が【神のいとし子】などではないともっと早く分かっていたら……


 君を助けられたのに。


 ふと祭壇の上が光った。


 光が溢れ中から一人の少女が現れ。


 金髪碧眼の少女は白いドレスを纏い地上に舞い降りた。


 人々の間からざわめきが起こる。


「エレイン!!」


 コウドウイナーはエレインに駆け寄る。


「あっ? コウドウイナー? ここどこ?」


 コウドウイナーはエレインを抱きしめる。


「あれ? 私若返ってない?」


 死んだ時20歳だったエレインは17歳の少女の姿になっている。


「【神のいとし子】だ!!」


「本物の【神のいとし子】だ!!」


「女神様が本物の【神のいとし子】をお与えくださった」


 神官たちは口々にそう叫ぶ。


 神官たちの目にも人々の目にもエレインの周りを飛ぶ妖精が見えている。


【神のいとし子】は妖精を引き連れて出現するのだ。


「コウドウイナー? あなた泣いているの?」


「ああ……こんな嬉しいことは無い。女神よ感謝します。私のエレインを蘇らせてくれて……」



 それから二人はどうなったかって。


 物語の終わりはいつだって。


 王子様とお姫様は結婚して末永く幸せに暮らしました。





                     ~Fin~



 ~ 登場人物紹介 ~


 ★ エレイン (享年20歳)

 エレイン・ド・スライク伯爵令嬢。国王と結婚してエレイン・ロード・ブルゾ王妃となる。

 王族に嫁いで一年したら【神のいとし子】が現れ王妃の地位も家族も子供も奪われた。

 世界の強制力でヨハンに惚れていたが、強制力が無ければヨハンには見向きもしなかっただろう。

 前世の記憶は死んだ後に思い出す。

 OLで浅草の煎餅が大好物だった。


 ★ ヨハン・パッヘルベル・ロード・ブルゾ (24歳)

【神のいとし子】が現れたらエレインをエレインの家族共々皆殺しにした。

 しかし【神のいとし子】は搾りかすの為、何の恩恵も無く皇国に滅ぼされる。

 火炙りの時利恵を罵る。糞王である。両親は結婚前に病で無くなっている。


 ★ 小原利恵 (18歳)

 こっちの世界で生まれるはずが日本に生まれ逆ハーしていた。

 援助交際と枕営業もしていた糞ビッチ。その為女神は【祝福】を与えることが出来ない。

 搾りかすとして転移する。無実のエレイン一族が処刑されるのをゲラゲラ見ていた屑女。

 皇国に攻め滅ぼされる。火炙りの時必死でエレインの従兄弟(皇太子)に媚を売るが無視される。


 ★ コウドウイナー・ギルモワ (27歳)

 ギルモワ皇国の皇太子。エレインとは従兄弟になる。ブルゾ国に病気療養に来ていた。

 その時エレインとスライク家と知り合う。エレインは初恋の人。



 ★ 近衛騎士

 エレインの浮気の相手として殺される。気の毒な人。

 可愛い婚約者あり。後に婚約者は反王族派になり皇国と手を組んで皇国軍を引き入れる。

 ヨハンと利恵の火炙り用の薪に火をつけたのは彼女である。彼女と結婚したら完全に尻に敷かれていただろう。


 ★ 女神リリス

 この世界に生まれるはずのヒロインが日本の【桜花学園ラブラブ旋風~貴方は私とスターになる~】と言うスター誕生の乙女ゲームに生まれていた。慌ててこっちの世界に呼び戻すが異世界で時間がずれまくり婚約発表から二年後に転生させてしまう。おまけに【祝福】をゲームの世界で使いまくり搾りかすだった。

【祝福】が無い為ブルゾ国は滅びる。女神の株は大暴落。そこでエレインに【祝福】を付けて転移さす。

 この世界はエレインの前世の乙女ゲーム【時空を超えて今貴方の元に行きます】に似ている。

 ヒロインが酷インで搾りかすだったのは日本の神の陰謀。日本にいる魂を勝手に転移や転生をさせられたので女神リリスに怒っている。


 ★ 【桜花学園ラブラブ線風~貴方は私とスターになる~】

 乙女ゲーム。スターを目指すヒロインが5人のアイドル(攻略対象)と共に桜花学園で学園生活を楽しむストーリー。しかし小原利恵は【祝福】を使い、5マタの上に援助交際や枕営業をしていてバットエンド暴進中だった。バットエンドの中には硫酸を顔にかけられたり、刃物で刺されたり、薬物中毒になったりとネットではホラーゲーム?と囁かれていた。


 ★ 【時空を超えて今貴方の元に行きます】

 乙女ゲーム。こちらの世界に生まれるはずが、日本の神の嫌がらせで日本に生まれてしまったヒロイン。再びこの世界に呼び戻され城の大広間に出現した。大広間では王太子と伯爵令嬢との婚約発表の真っ最中だった。5人の攻略対象がいる。王太子・魔導士・騎士・神官・大富豪の美形の貴族子息達。

 人気漫画家の絵と豪華声優陣を起用していたがヒロインに魅力が無かったためにいまいち売れなかった。

【祝福】がある為魔王や魔物退治をする必要が無かったしチートも無い。そこら辺がいまいち人気が出なかった理由かも知れない。


 *************************************

 2019/2/9 『小説家になろう』 どんC

 *************************************



最後までお読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] すべての原因は、このクソ女神のせいなんじゃ……。 で、その尻拭いを何故エレインがしなきゃならないのかという。 というか、コウドウイナー君にとって将来生まれる自分の子供達が叔母夫婦と従兄なんだ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ