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JUNK LAND【→】  作者: 笑夜
18/39

十七章 NICKNAME





NICKNAME 『スティッチの知る男』









スティッチは腕に女を抱きながら、NewsPaper(新聞)のある記事を見てニヤリと笑った。



(さすがに大したもんだ……こんなの奴しか居やしない)



そこに記載されてある人物は、恐らくは彼の唯一の友と呼べる男であった。


そしてGossip(噂話)ではあるが、あながちでっち上げのデマでもないのだろうと云う事が何となくわかった。


それは“彼”を見て来たからである。


常に野望を抱き邁進するその男の存在を知ったのは、HighSchool(高校)に入って間もない頃である。


とある雑誌に掲載されたコラムを読んで、惹きつけられたのだ。





よもや、その男とカルフォルニアにて顔を合わせる等予想もしなかったスティッチであったが、その“危険思想”は彼の興味を存分に煽った。




『人類の滅亡』




そう題されたコラム。


その内容は軸は違えど、“破壊願望”を持つ自分と同じ匂いを本能で感じたのだ。









※※※狂気のコラム※※※


『人類の滅亡』



人類は滅亡の危機に立たされる事を恐れている。


自ら様々な悪事を行い、支配者と嘯き、果ては自虐的に地球の“癌”だと口にする。


数々の滅亡説を興味本位で語り尽くし、主観で捉えられない我々人類。


そして危機に直面した時、慌てのたまうのだ。


地球の為等ではない。


人類が存在しない地球の顛末に等そもそも興味すらないのだから。


人類そのものが悪だと口にするのなら、滅ぶ事に異論等あるだろうか?


世界各国の上層部が手を結び、今こそ声を大にして叫ぶ必要がある。


「環境問題」なんかではない。


「出産の禁止と繁栄の放棄」だ。


さすれば子孫は残ることなく、静かに“逆三角形”を築きながら滅亡して行くだろう。


人類の滅亡は、外的要因でもたらされる必要はない。


人類自らで幕を降ろすのだ。


地球の為かなんかじゃない。


未来を断ち切った後、今ある様々な悩ましい問題は何も解決する必要がなくなるのだから……


もし実現するのなら、不可能であれ自分が最後の一人になりたい。


全ての諸悪が滅ぶ様を見た後で、静かに目を閉じたい。


※※※※※※※






その記事には、経済破綻や企業努力の無意味さ、化学発展の終焉、都会離れや生活保証の為の自給自足等。


その他、滅亡までの仮想シナリオが克明に記されており、コラム欄の見出しには『もう一つの滅亡のシナリオ』と書かれていた。


およそ実現する事等ありえない“極論”的な内容であったが……


その内容もさることながら、当時16歳のスティッチを驚かせたのは、記事を書いた男の年齢であった。



記事執筆時の年齢、僅か13歳。



しかもその男はスティッチと同じ年齢であった。






更にスティッチを驚かせたのは、地元LA(ロサンゼルス)に帰郷した時の事であった。


13歳当時の顔写真の面影を残す日系の男が、ダウンタウンのオルベラ街辺りを地元民に紛れ自然に歩いていたのである。


すかさず声をかけたスティッチに、その男はこう言ったのだ。



「何だ……あんな記事に興味を持って声を掛けるなんて、変わった男だな」



同じくLA(ロサンゼルス)のSanta Monica(サンタモニカ)に在住すると言ったその男は、連絡先だけを残しまたダウンタウンへ消えて行った。





以来……スティッチにとって、本来親友等必要のない存在であったが、その男には唯一本心で接する事が出来た。


無論、自身の“性癖”は口にはしない。


しかし、自分と正反対にして同じ匂いのするその男への興味は止む事はなかった。


その男を……FirstName(名前)からもじって『B.J』と呼んだ。


彼の母国のアニメから付けたNickname(ニックネーム)である。


──黒い男。


男は名前を“黒男”といった。







「ねえ……何を熱心に読んでいるの?」


腕の中の女は気だるげに息を吐きながら視線を上げた。


「友人らしき人物の記事があっただけだよ」


「そう……、どうせGossip(噂話)でしょ。それより、ねえ……もっと構って」


スティッチは、クレアへの蔑みと嫉妬心を使って簡単に手に入れたこの女(道具)を見ながらこう思った。



(壊し時だな……)



そしてTabloid(タブロイド紙)を静かに閉じた。






【The SanFrancisco Examiner】


(サンフランシスコ エグザミナー)




『米日間に新二カ国条約の動き』


米日の主席に謎の接見の噂がある。


案件については全くの未公表ではあるが、新たな条約設立の噂が密やかに取り沙汰されている。


日本メディアによる動きも特になく、情報があまりに乏しい為に推測の域を脱してはいない。


元CIA(アメリカ中央情報局)のD氏は次のように語っている。


「各国の主席が内密なこう云う動きを見せる時は、必ず裏に進行している何かがある。


諜報機関であるCIAも動いているようですし、内容が重要であればある程情報は隠匿され、外部に漏れる可能性は低いでしょう。」


尚、この動きの背後に一名の謎の人物の影があるとの噂は一部の筋ではOccult(オカルト)的に話題になっており、それらも含め今後の動向を追っていきたい。




( 2***年**月**日)





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