十四章 利害
利害 『SとM』
【招待状】
プロフ確認→契約成立後、直接メールでやり取りしてください。
尚、交渉成立後は私どもは一切関与致しません。
http://www.00000_000.com/00000/
隠れセレブ【真理子様より】
是非一度お会いしませんか?
目的はあくまで【H】なので、ラブホテル等の場所でも構いません。
勿論こちらがお支払い致します。
投資もご相談下さい。
まずは私の自己紹介ページをご覧ください。そして私の切実な思いを少しでも感じ取っていただけたら幸いです。
【年齢】22歳
【身長】157cm
【体重】44kg
募集可能時間は24時間です。
お受けできるのであれば、募集が終了する前にお返事を宜しくお願い致します。
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※前金及び報酬の取得は依頼者が指定する場所での手渡し、振込み等の手段でお受け取り下さい。
正人がこのメールを受け取ったのは登録した翌日の事だった。
無知で教養のない正人は、雑誌の広告にまんまと乗せられたのである。
金が必要だった。
学校は中退して働いてはいたものの、僅かな賃金ではどうしようもなかった。
対策の為に手にした雑誌ではない。
パチンコでどうにかしようと云う浅はかな考えで捲った雑誌。
その中に山ほどある広告の一つだ。
俗に云う『出逢い系』サイト。
『セレブの逆投資』の文字にひっかかったのである。
余程でなければ有り得ない話であるが、正人は常識的な判断力を欠いていた。
“あわよくば”
入会の為の前金を銀行から振り込む際、正人の思考を文字にするとこの言葉がよく当てはまる。
そして通常、“カモ”になる。
届いたメールからサイトへアクセスし、本来ならば“サクラ”相手に無駄なポイントを消費し、ただ金をドブに捨てるはずだった。
しかし彼は有り得ない幸運を手にした。
無智な初心者の正人には、この幸運がどれ程の確率であるか等知るところではなかった。
ただ彼の“予定通り”、真理子と云う女とはたった三度のやりとりの後、待ち合わせる約束を交わす事に成功した。
およそ待ち合わせには相応しくない、大型書店の『地図コーナー』。
目印のイタリア観光の案内を手に時間を待つ正人の前に現れたのは、イメージ通り“セレブ”と云う言葉がぴったりの女性だった。
静かな書店の大きなフロアの一角。
「前金ね」
そう言って、会って間もない正人の持つ『観光案内』を手に取り、パラパラと中程まで捲って札を何枚か挟んだ。
そのままレジに向かう真理子を正人は無視して出口に向かう。
会計を済ませた真理子は正人を車まで誘い、買ったばかりの本を何も言わずに手渡し、
「これで今日一日はあなたを買ったよ」
その言葉の後、真っ直ぐにホテルへと車を走らせた。
助手席で開いた頁には万札が10枚挟んであった。
ホテルでの真理子は、先程の気品あるお嬢様からあきらかな“雌”に姿を変えた。
真理子は正人に名を聞いたが、正人は“さとし”と名乗り、その名を彼女は何度も呼んだ。
互いに身体を接点に欲求を満たすだけの関係。
真理子とさとし。
さとしの身体を何度も求める真理子の性欲を、さとしの若い身体は全て受け入れた。
さとしは歳を偽り真理子と対峙したが、真理子はおよそ察していた。
この時さとしの年齢は17歳。
真理子はその漲る性欲が欲しかった。
10万の金でどれだけの奉仕をしたのか……
通常の身体であれば例え十代の若い身体であっても衰えてしまう程、真理子はさとしを快楽の為に“使用”した。
しかしさとしの身体……いや、さとしの感覚は“通常”のものとは違っていた。
その為に金が必要なのだ。
この夜一晩で破格の報酬を受け取り、幸運だったと自覚出来れば良かったが、さとしはそれ程大人ではない。
もう一度会えるかと聞いたのはさとしだった。
10万の金でどれだけの奉仕をしたのか……
通常の身体であれば例え十代の若い身体であっても衰えてしまう程、真理子はさとしを快楽の為に“使用”した。
しかしさとしの身体……いや、さとしの感覚は“通常”のものとは違っていた。
その為に金が必要なのだ。
この夜一晩で破格の報酬を受け取り、幸運だったと自覚出来れば良かったが、さとしはそれ程大人ではない。
もう一度会えるかと聞いたのはさとしだった。
一晩の欲求を吐き出した真理子は、タオルを巻きながらこう言った。
「いいけど毎回十万はきついよ。一回で五万にして」
さとしは心の中で、(十分だ……)と答え、
「いつもこんなに激しいの?」
と嫌みっぽく聞いた。
「二度目があるならもっと要求するよ。因みに“一回”って言うのは一晩って事だからね」
「金で買われた奴隷みたいだな」
「そうだよ。もっともっと喜ばせてね。奴隷と言っても快楽の奴隷よ」
(金がありゃ、あんたにも使ってもっと喜ばせてあげるよ。俺から離れられなくなる位に……)
覚醒剤を使用したさとしの身体や感覚は、文字通り“覚醒”状態にあった。
それを女性に使用し、敏感になった身体で交わるとどうなるのかを知っていた。
「イニシャルでは“Satoshi”と“Mariko”なのに、俺が奴隷じゃ逆だな」
真理子はさとしの首筋に舌を這わせ、耳元まで来るとこう言った。
「真理子は本当の名前じゃないから……本名は“Shiori”だよ」
「何だ。俺は“Masato”だからあってんじゃん」
「SかMなんてどっちだっていいよ。気持ち良くなるならどっちだって……」
帰りの車中、詩織は携帯を取り出しメールを送った。
『今、友達とお茶してたよ。吉行、愛してる』




