十二章 密談
密談 『二カ所での会話』
この時期、秘密裏に進められていた法改正の事は世間はまだまるで知る由もなかった。
「この改正が纏まれば我々は世界に一目置かれる事になるな」
「同時に危険視も否めません」
「いやなに、すぐに同調するさ」
「国民も……ですか?」
「議論の行く先を無くすかも知れんな。またすぐに反対派が騒ぐのだろうが、それも一時だ」
「大臣の理念はもはや浸透してます。少なくとも能無しの政界ではこれ以上の反対は無理でしょう」
「そうだな。しかし君も論理的だ。そもそもこれは君のテコ入れだ。君のバックアップがあればこそだよ」
「恐れ入ります」
政府が実行に移そうとしていた大きな法改正には、この『母子殺害事件』は重要であった。
有効に働きかける為に様々な手段を用いた。
その一つが、優秀な弁護士である『重光』である。
裁判官を勤めた『原』と云う人間もまた首謀者の一人だった。
「これでまた次の法廷までしばらくは時間が稼げますな重光さん」
「しかし政府は怖い。まあ、私にとっては好都合ですが」
「しかし法務大臣の隣に侍る若い男……あの男は切れますな。」
「何と言いましたかな、親しげに名前を呼んでましたが……」
「確か、黒男君とか……」
「正義の塊のような目だった。いや、しかし恐ろしい」
この二カ所での会談の数ヶ月後に正式に設置される事になる新法。
しかし一部機関と政府のみが認識するこの法律は国民には知らされる事はしばしない。
大掛かりな着工には数年の歳月を要した。
一部機関と政府の要人は、暗号化してこう呼んだ。
『J.U.N.K LAND』PROJECT




