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雨はいつか止んで、優しさが世界を包む  作者: 佐田やすひ
第1章
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また朝が来た。


最近、朝起きるのがつらい。

ふと目を覚ますと正午をこえていたということがよくある。

さらにひどいときは、窓を覗くと太陽が西から上っていたことがあった。

何事かと思い時計を見ると午後の4時である。

やることもなくPCをいじっているうちに一日が終わる。

こんな生活を送っていられるのも春休みの間だけだ。


寝返りをうつとなにやら柔らかいものが後頭部に当たって、それを頭の下にひく。

なんて柔らかくて暖かい枕だ。

深い眠りに落ちかけたその時、不意に枕が動いてなにか鋭いものが顔に突き刺さる。

驚いて枕を見ると今度は飼い猫の後蹴りが顔面にヒットする。

どうやらこの悪党はご主人様が昼間までおやすみしているのに便乗して、枕もとで惰眠をむさぼっていたようである。

猫は一日12時間、つまり半日を寝て過ごすのだが、もしかしたら俺は猫より寝てるかもしれない。


こうして家に何日かこもっていると、うすぼんやりとした不安にさいなまれる。

学校選びからまちがえたのかな。

なんとなくもの作りが好きでなんとなく工業高校に入って、なんとなく過ごしていたらもうすぐ三年生だ。

こんな調子で就職や進学ができるのか。

同級生たちは野郎どもばかりだ。

むさくるしい。

体育の後などは特にやばい。

吐いてもいいレベルのむさくるしさだ。

もしこのまま就職したとしてその会社に女がいなくて一生女と接点のないまま俺は人生を終えていくのか?

友達はいるが、休みに入ってからはほとんど連絡もしていない。



また眠くなってきた。


しかし、今日は約束がある。


時計は午後の5時を指している(新記録だ)。


菊池大樹はベッドから体を起こすと、のろのろと身支度を始めた。

昨日の朝(といっても午前11時)、突然昔の友達から明日会おうとの連絡がきた。

何の用事か聞こうか迷ったが、どうせ用事なんかあるわけないし、なにより久しぶりに友達から連絡がきたのが正直うれしくて、二つ返事でOKした。

菓子パンを腹に押し込み、歯を磨き、私服に着替え、階段を下り、玄関を開けようとした瞬間、二階でインターホンが鳴るのが聞こえた。

そのままドアを開けて外に出る。

「あ、ヤケルトですー。」

「あ、今日は大丈夫ですー。」

俺は2秒でヤケルトレディーの訪問販売をかわすと、颯爽と自転車に飛び乗り、暗くなり始めた街へ繰り出した。


春のにおいがする。




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