プロローグ
「ようやくか」
待った
あれから15年待った
本当に長かった
今目の前ではこの国の王族の1人である王女が王城の地下に設置されている、遥か昔からある勇者を召喚する魔方陣の前に立ち、両手を魔方陣にかざし長い詠唱を開始した。
その光景を見学しながら、今までの人生を振り返り感慨深けに思い出していた。
しかしこれから始まるのだ。
この世界で15年ようやく勇者がこの世界へと召喚されそれに巻き込まれた者達もともにやってくる。
物語でいえば今までの主人公の人生はいわば第0章、物語が始まるまでの物語である。
勇者が召喚され魔王を倒す物語。
これから始まるのは勇者と巻き込まれた者達、そして巻き込まれ者達の中で自分だけが死に転生した主人公の物語だ。
主人公が思い出に浸っていると、長い詠唱が終わりいよいよ王女が勇者召喚を行った。
魔方陣が発動すると魔方陣がひかり始め、その輝きはしだいに増していった。
やがて魔方陣の輝きは一気に最高潮になり、その場にいた者達はあまりの眩しさに両手で目を覆った。
輝きが消えたのに気がつき皆が魔方陣の方を見ると、魔方陣の上には数十人の人間が倒れ地面に横たわっていた。
数分経過すると倒れていた人々が意識を取り戻し始めた。全員が意識を取り戻した頃、王女が人々に歩みより説明を始めた。
召喚された人々は王女の説明に衝撃を受け、絶望する者や泣き叫ぶ者がいる。しかし中には冷静に事態を把握しようと考えこむ者もいた。
「生きてこの世界に来る事が出来ただけでも良いじゃねえか」
唯一自分だけが死んだ事を15年経過した今でも、やはり完全には納得できていないようである。
召喚された人々を眺めながら、主人公は決意した。
自分の死が無駄では無かった事を証明するために。