ナルシストは恋をする
泣いていたお前を見てつい声をかけてしまった。きっと、俺を見たらあまりの美貌で見惚れて泣き止むだろうと思ったから。
予想通り、驚いた顔でこっちを見てた。想定内だ。俺の美貌は人の想像を超えるから。驚くのは無理もない。
あれから五年。俺の美貌はますます人を魅了する。
「それはないと思う。」
好みがあるからね〜としみじみと言うあの時の少女、日真るり子。俺はるりと読んでいる。
「そんなことない。現にみんな俺のことを王子と呼びチラチラみてくるだろう?」
「あー、う〜ん?」
なんだその微妙な反応。
「まぁ、なっちゃんって目立つから」
と、笑った。
「知ってるよ」
だって、俺、美青年だし。
俺は昔からモテるが、付き合った人数はゼロ人。周りも俺が好きな人がるりだとすぐに気づいて、いつの間にか俺のことが好きと言ってた人は俺の恋を応援してくれるようになる。
これも俺の人徳ってやつだろうか?
というと、やっぱりるりは違うと思うと言うのだろうなぁ〜と思いながら真剣に授業をうけるるりの横顔を見つめる。
別に特別可愛いわけではない。俺にとっては最高だけど。
頭だって良くないし。教えてあげるとるりの喜ぶ顔が見れるからアホなままでいてほしい。
と、るりを見つめていると横から視線が。
「なんだよ、後藤」
授業中であるため小声で聞く。
後藤貴志は俺には敵わないがそこそこの顔の小学校からの友人である。
み す ぎ、と口だけを動かし伝えてくる。
その後小声で
「今日、だろう?」
コクンと頷き俺は黒板の方を向いた。
今日はるりに告白するのだ。
いつでも、一緒にいたくても、この歳になるとそれがなかなか難しいことがわかってくる。
きっと、るりは喜んでくれる。みんな俺が好きだから、みんなも喜んでくれる。そうするためには、、、、。
よし、と気合を入れると、再び横から視線が。
なんだよ、と見ると
ふ た り き りで こ く っ て や れ !
なんてことをいうんだ。
みんな俺の告る瞬間はみたいに決まっている!!
ふざけたことを言うな、と思いやつを無視して前を向くとちょうどチャイムがなった。
さぁ、放課後の始まりだ。
後藤とのやり取りをみていたクラスメイトがクラスメイトに今日は姫の誕生だと伝える様子が伺える。
みんな、俺のことがほんとに好きだな。
みんな、るりが好きな俺が好き。
俺も、るりが好きな俺が好き。
ねぇ、るりは俺が好き?
好きならずっと、好きでいて。
泣いてた君に恋してる。
「なんでここで言うのかな!?大好きだけど!!!!ずっと好きでいる自信あるけど!!!」
そう言ってあの時とは違う、笑顔で俺を見上げて笑った。
後藤だけは、常識あります。
いつも、なっちゃんの暴走を止めようとしても止まらない。