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デートでドキドキさせてね

 うさぎの形をしたリュックを背負い、青空を見上げる。スカイブルーが視界いっぱいに広がり、身体ごと吸い込まれそう。手をかざして伸ばしているとルッシーがもの言いたげにこちらを見ている。


「どしたのルッシー?」

「アキがどこかに行きそうな風に見えた」

「わたしはどこにも行かないよ。ルッシーのいるとこがわたしの居場所――わっ!」


 あやすようにポンポンと背中を撫でた。

 ルッシーはわたしというツガイを得てから、喜怒哀楽が激しくなっている。

 

 笑う回数だって格段に増えた。

 無表情で眉間にしわを寄せてるよりかはだんぜんこちらの方がいい。


 喜ばしさを感じながらてくてく歩くと、レンガで舗装された道なりが見える。ルッシーと一緒に、人々にならって進むと大きな壁に囲まれた街が見えた。


「これがプレシェンタの街!」


 自由に行き来できるヒトの多さに、わくわくと気持ちが高揚する。荷車を引き歩く行商人や旅人たちの歩くさまを見てふらふら着いていこうとすると、誰かに腕を掴まれる。


 旦那さまのルッシーだ。

 美しく長い銀髪をフードで覆い隠して旅人が纏うような白装束に身をつつみ、人化して人込みに紛れているのだけど。立ち姿だけでもそのまま絵になるもんだから、目立とうとしなくても必然と周囲からの視線を浴びちゃうんだよね。それを誰がさせてるのか――間抜けな自分です。ごめんよルッシー。


「アキ、リボンが解けている。くれぐれも我から離れぬように」


 首飾りの桃色リボンはルッシーが使える三原色のおかげで、桃色フリフリなレース仕様に様変わりした。つまるところ何でもできるのかよと、魔物としてのわたしは悪態づきたくなる。


「分かってるよ、旦那さま……」

「その呼び方も良いな」


 上機嫌なルッシーの手を取って、私はしっかりと地面を踏みしめる。あれ、洞窟はどうしたのかって? 入り口を巨大な岩で固定した状態のまま、空に放置してまいりました。


 チート使って、洞窟を出し入れ可能にしないのかって? ノンノン。そんな力、洞窟レベル5の私にできるかっての。よちよち幼稚園レベルのわたしに難しいことを求めなさんな、である。


「ふふっ」

「嬉しそうだな、アキ」

「うん、私って洞窟化のままルッシーの力でぷかぷか浮遊してたに過ぎないじゃん。外の景色だって、上から周辺を見てただけだし、地上で歩くのなんて初めてなんだよ?」

「そうだったな」


 ちゅう、と唇にキスをされた。

 ルッシーの不意打ちにわたしはしばし茫然。


「アキのハジメテを独占できるのは我だけだな」

「う……ん」


 なんかヤラシイ響きに聞こえるのは気のせいかな。


「服も似合ってる、我の見立てどおりだ」


 白を基調、丈端を桃色カラーで縁取ったワンピースはルッシーからのプレゼントだ。肌触りの良いワンピースが無料だなんて思わないのだけど、ルッシーはいとも簡単に何もない空間から出現させた。


「服や下着までぜんぶルッシーに用意してもらっちゃったね。ありがと、ルッシー」


 際どい下着はお返しさせていただきました。

 紐パンは百歩譲って頷いても、シースルーなパンツとキャミソールなんぞいらん。大事なとこが隠せてないから!


「三原色ならなんでも展開できる。ただ、布については所持していてよかった」

「ん?」

「いつか出会うかもしれないツガイのために、何かしらの役に立つのではと亜空間にずっと残しておいた。これからは我のものはアキのもの。アキのために使えるなら我も嬉しい」


 わたしは、赤面した顔を見られたくなくて帽子を深く被ってやり過ごす。



***



「ね、プレシェンタって何かの意味があるのかな?」

「無数の花びらの集う花。女神がこよなく愛した花を街の名前につけたという」


 手をつないだ状態のまま、ルッシーと共に進みゆく。

 良い匂いがして鼻をくんくんしてると、ルッシーがクレイプを買ってくれた。


「あ、ありがとう。で、でもルッシー、わたしはお金持ってないよ?」

「アキはそんなこと気にするな。そうだな、換金しておくか」

「へ?」


 果物豊富なクレイプ食べて路地を進むと、一軒の店に入る。出迎えた店主はこわもてだけど、ルッシーはお構いなしに話しかけた。それをハラハラしながら見守っていると、ルッシーが自分の懐を探り始めているではないか。なになに、何があるの?


「これを硬貨に換金してくれ」 


 ジャラリと音のする袋を二袋取り出した。

 それを見ておやじさんは目を剥いている。


「しょ、少々お待ちください……これは純度の高い宝石ですね。どれもこれも素晴らしい……」


 丸メガネを耳に引っかけて鑑定しているおやじさんは、もう怖くなかった。


「おおよそで構わない。すぐに換金してほしい」

「かしこまりました。では、これくらいでどうでしょう。うちではこれ以上の換金は無理ですね。大手の銀行へ行かれますか?」


 二十箱くらいのトレーな容器に金硬貨と銀硬貨を差し出された。

 それを見たルッシーは首を振る。


「いや、上等だ。ではこれを交換してくれ」

「旦那、宝石入りの袋は一袋で構いません。二袋も多すぎるでしょう」

「では何かの足しに。そうだな、何か他に代わるものはないのか」


 うむむ、と唸る店主オヤジはポンと手を叩いた。


「宿屋にお泊りになるのはいかがでしょう。うちと提携している宿屋がありますが、そちらへいかがですか? 見たところ、お客さんたち夫婦はこちらにお越し頂いたばかりでは? 三食付き・風呂付きのお部屋をご用意できます。もちろん、旦那さん達なら一生、うちを無料でお使い頂けますが」

「それほんと? うわ、凄い!」

「アキはそれでいいのか?」

「うんうん、ゆっくりできる場所が増えるのは嬉しいもんね」

「ではそのようにしてもらおう。店主、無理な願いに感謝する」

「ではこちらにいらしてください」


 

 ――ぷくぷくマンプク亭――



「マンボウ?」


 ふっくらしたお魚さんの絵が、看板と一緒に張り付けられている。


「ささ、お部屋へどうぞ。ではごゆっくり」


 お隣にある宿屋に案内してもらい、二階の奥の部屋へと入る。

 窓からはとんがり屋根の城が見えて、夢心地に浸れそうな雰囲気だった。


 質素であたたかみのある内装と、布製ソファと籠編み仕様のふかふかベッドが二つも用意せれている。ベッドの上に座ってバウンドを確かめるとふっかふか。ベッドが二つあると、ルッシーからのエロ頻度が減るんじゃないかと期待しちゃう。熟睡は大事だよね。


「至れり尽くせりなデートだね。そうだ、ルッシーそのお金どうするの?」

「すべては使わぬし、亜空間に放りこんどくか。それとこれはアキの分」


 八箱の金硬貨の入ったトレーを膝の上に落とされた。

 こんないっぱい、わたしが使えるか。お金の使い方もわからないのに。


「使わない硬貨はこちらの金庫にしまうか。アキの好きなときに使用できるようにしよう」

「鍵で閉めておくのね」

「そんなものがなくとも、アキの魔力があれば自然と開くように設定する」

「あっ」


 三原色を使い、そのなかの金色だけが飛び出した。

 魔力の渦がわたしを包み、金庫へと突進する。

 

「いずれアキも亜空間を使用するだろう。その時がくれば金庫ごと仕舞えばいい。この地に訪れないときは我の方で管理するから安心してくれ」

「……」


 もうなにがなんだか言葉にでない。


「そーだ、どうしてルッシーはあんなにたくさんの宝石を持っていたの。わたしの洞窟内では最奥の部屋はつぶれちゃったのに」

「アキ以外の洞窟にも多数の財宝があったぞ。減るどころかどんどん増えていくので我が持ち運んでも大した被害にはならぬ」

「冒険者達に取り尽されてるんじゃ?」

「隠し部屋や隠し通路は我にはお見通しだ」


 意外とアクティブなドラゴンだったのね、ルッシーは。


「では気を取り直してデートの続きだな」

「うん!」


 金色の硬貨が日本円だと一万円。

 銀色の硬貨が日本円だと五千円。

 銅色の硬貨が日本円だと百円かな。


 もうだめだ、私は数学全般苦手でおつむが悪かったのね……ルッシーもそんな感じだし……いや、一緒にするなと怒られそうだけど。


 頭の中がぐるぐる回りながらも、プレシェンタの中央部ではさらに人がひしめいていた。武器持った男性らが厳めしい目つきで周囲にガンつけているではないか。


「な、なんだろうこの熱気は」

「闘技場と書かれている。もうすぐトーナメントが始まるのだろう」

「ルッシーは文字が読めるの?」

「すべての言語を扱える」


 このチート能力のかけらでもわたしに備わっていれば!

 なんだか自分の旦那さまが恨めしくなってきた。異世界きてるんだから、私にもチート寄越しなさい旦那さま。

  

「ルッシーも参加するの?」

「我と人では勝負にならぬ。それとも……勝てば何かご褒美をくれるのか?」


 くい、と顎を持ち上げられて口づけされた。


「んぅ……そ、そんなのない! ご褒美関係なくてもわたしを食べるくせに!」

「くく、そうだな、我はアキを毎日食べたい」


 頭から沸騰しそうになりながらも、わたしとルッシーは闘技場が見える真ん中の席に座った。第一、第二、第三試合と進む中、知ってる人物を発見する。星屑が流れるような金髪と、青紫色の瞳を持つ勇者デイルだった。



主人公と同じく作者も数学(算数までも><)全般苦手です。あと、性格のためか物語の進行速度や他にも多数、おおざっぱに決めているところがあるのであしからず。

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