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三日で終わらす異世界転移  作者: 岸野 遙
一日目 ~旅立ち編~
9/60

1/10 00:31

 ジャルカさんの協力を取り付けた後、最初にやったことは詳しい情報を確認することだった。

 当面の目標は、姫様の呪いを出来る限り解くこと。

 そのために、まずは現状を正確に把握する必要がある。

 姫様の呪いについてまとめると、こんな内容だった。


・ 姫様の声には魔力が宿り、特別な力があった

・ 十歳の誕生日に、魔王の呪いで声が出なくなった

・ 魔王は呪いを掛ける時に、邪神による祝福だと言った

・ 魔王曰く、邪神の祝福のため、魔王を殺しても声は戻らない

・ 二十になった時、魔王が気に入ったら声を返して嫁の一人にすると言われた



 次に確認したのは、レベル上げやスキル全般だ。

 ジャルカさんが強いなら、さくさくとパワーレベリングしてもらえないかなーとか期待してるんだよ。

 それでいくつか現状で必要なスキルを取得して、約束を果たすとともにこの異世界ライフの準備を整える。

 そんなわけで、教えてジャルカ先生。


・ 敵を倒すと経験値を得て、一定値たまるとレベルが上がる

・ 通常のパーティでは、戦闘に参加した全員に経験値が与えられる。

  ただし、レベル差、貢献差などが大幅に異なる場合、均等な配分とはならない

・ 主従関係を有するなど、特殊なパーティ構成であれば配分自体をパーティ設定として変更することができる



 どうやら、効率はあまり良くなさそうだけど、無事にパワーレベリングしてもらえそうです。

 あとスキルポイントについて聞いたら、そういう概念自体が確立してないそうだ。

 人間の間ではそういう理論が語られているけど、実際にスキルを割り振れるわけじゃないし、机上の空論扱いらしい。


 スキル振りは異世界人の特権とか言ってたし、まあ仕方ないよな。

 スキルの取得やスキルランクの上昇は、レベルが上がった時に自動で増える場合があるらしい。

 でも自分で振り分けられないとなると、欲しいスキルがある場合は自力で勉強するしかないってことか。だとしたらすごい大変だよなぁ。

 ボタンぽちりで何でも覚えられる異世界人、それだけでとんでもなくイカサマくさいね。



 そういうことで、情報確認は一旦終了。

 この後の予定を確認する。


 まずは、脱獄する。そして服を入手する。

 裸なのは転移の事故って説明した。ジャージの女神のせいだし、間違っていないよな?

 なので服を入手する。もちろん着る。

 そしたら、一度城を抜け出し街を抜け出し、レベル上げをしてもらうんだ。


 初期スキルポイントはすでに『SPボーナス』につぎ込んである。

 スキルランクを上げれば、獲得できるスキルポイントがそのまま(1+ランク)倍になるらしい。

 通常で1レベルごとに10点のポイントが入ると仮定すると、最大の10まで上げれば11倍、毎回110ポイントだ。おいしいというか、効果がでかすぎて余りにも必須スキル過ぎだろ、これ。


 ともあれ、まずはSPボーナスを最大にするとして。その後に欲しいスキルとか必要なスキルポイントなんかは、ジャルカさんと話しながらだいたい一覧を確認して計算してある。

 今とりあえず欲しいのは12レベル。経験値ボーナスは後回しになるけど、これだけあれば姫様の呪いを解くことができる!

……はず。

 オレがスキル割り振りできることはジャルカさんにも今のところ内緒なので、兵士に突かれても死なないように、ある程度上げたいって説明した。

 兵士のレベル、いくつくらいだろ?

 12程度じゃ、一突きでころっと死んだりしてね。ははは、笑えない。




「それじゃ、打合せはこんなところで」

「うむ。姫様の声を取り戻すため、作戦実行と行くかのう」


 よし。早速脱獄しよう!


……どうやるかって?

 そんなの、ジャルカ先生に丸投げですよ!


「それで先生、いい加減脱獄の方法を教えて下さいよ」

「先生か、悪くない響きじゃな。

 よっこいしょ、っと」


 そんな軽い声とともに、牢屋の鉄格子の隙間からもこもこの毛玉が転がりこんできた。


「……え?」

「お初にお目にかかるの。

 わしが、ジャルカじゃよ」

「え、ええー……?」


 意外に若く、性別の分からない声。

 さてどんなお姿か、合法ロリかじじショタかとわくわくしてたら……毛玉!

 人型ですらねぇ! 顔もねぇ!

 というかサイズ小さいな、鉄格子の隙間から普通に出入りしちゃってんじゃん!


「なんじゃ、その顔は。

 ぷりちー過ぎて驚いたか?」


 ぷりちー……そうなんだろうか?


 例えるなら……えーっと、どうだろうか。

 ほんとに毛が長くて丸い毛玉がころりんってしてる感じで、目鼻も口も、何にもない。前も後ろも分からない。


 大きさは、鉄格子の隙間より小さい、だいたい野球のボールくらいかな?

 試しに両手で持ち上げてみると、重さも野球のボールくらいでとても軽かった。


「ふふふ、驚きで声も出ないようじゃな」

「え、ええまぁ……人型どころか、手も足も顔もないとは思いませんでした」

「顔は前髪で見えぬだけじゃよ」

「前髪なんだ、その辺」


 全く持ってよく分からないが、ジャルカさんには顔と前髪があるらしい。

 見た感じ、毛の長さが球体の直径以上あるから。ロン毛を掻き分けたら色々見えてくる……かもしれない。


「お前さんこそ、平凡なツラをしておるのぅ。

 角でも生やせば、その辺の街中に溶け込むには不自由しなさそうじゃな」

「平凡ですみませんね。手も足も顔もあるもんでね」

「わしだって眉も前髪ももみあげもあるもんね!」


 わかんねーよ、全部毛だよ!




 そんなわけで、衝撃的な出会いを終えたオレ達は。

 ジャルカさんがころころと取ってきてくれた鍵で無事に脱獄を果たしたのでした。


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