表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三日で終わらす異世界転移  作者: 岸野 遙
一日目 ~旅立ち編~
7/60

1/10 00:11

「なんじゃ、いつまで経っても騒がしいやつじゃのぅ……」

「え?」


 絶望的な状況に頭を抱えてたら、ふいにどこかから声が聞こえた。

 男とも女とも判断のつかない、口調の割には若い声。


「誰か、いたんですか?」

「夜中にばたばたと騒ぐもんじゃから、すっかり目が覚めてしまったよ」

「おおお……第一村人発見!」

「は?」

「あ、すみません。

 オレの故郷の言葉で、偶然出会えて嬉しいって意味です」


 もちろん、微妙に嘘が混じってるが。人が居て嬉しいことは本当だ。

 今一番欲しいのは情報、あいにーどいんふぉめーしょんである。


「なんだか、変な兄ちゃんのようじゃな」

「ははは。色々あって牢屋に捕まってしまったんですよ」

「なにを言っておるんじゃ。

 牢屋に捕まる理由なんて、犯罪者以外にないじゃろう?」

「いや、まぁ……はい、その通りですね」


 猥褻物陳列罪。

 いや、チンはカタカナで書くべきだろうか? 光より速くどうでもいいけど。


「ただ、オレ自身も捕まった状況どころか、ここがどこなのかもよく分からない状態でして。

 もしよろしければ、色々教えていただけませんか?」

「……まぁ、眠たくなるまでぐらいなら、付き合ってやってもよかろう」

「やった、ありがとうございます!」


 姿も見えない誰かだが、意外と気のいいお方のようだ。


「でしたら、まずはここがなんて国のどこで、この国の情勢なんかを教えていただけないでしょうか?」

「はぁ?

 お前さん、自分がこの場所に居るくせに、ここがどこか分からないってのかい?」

「は、はい。

 お恥ずかしながら、えっと……」


 理由りゆう、知らない理由、えーっと


「その、魔術で突然、転移した……みたいでして。気が付いたら、この城の中だったんですよ」

「なんじゃと……!?」


 オレの言葉に、声を荒げる村人さん。

 あれ、転移の魔術とか、やばかったのか?

 ジャージの女神に異世界転移させられたから、嘘はついてないんだけど。


「し、信じられん……この城へ転移してきたなどと。

 じゃが嘘はついていないようだし……むむぅ」


 オレの言葉を信じてくれたのか、唸り声が聞こえる。

 嘘はついてない……って、嘘ついたら分かるってことなのかな?

 やっべぇ、気を付けよう。


「オレ……いや、私は宿禰すくねと申します。

 良ければ、お名前を聞いてよろしいですか?」

「ん? わしはジャルカという。気にせんから、不慣れな敬語なぞ使わんで良いぞ」


 口調は老齢ながら、声と同じく気持ちも若いジャルカさん。ええ人や。

 こっちとしても、慣れない敬語なんかよりよっぽど助かるよ。

 自然にしゃべれる程度、目上への丁寧な態度くらいで話させてもらおう。


「ありがとうございます。

 それでジャルカさん、良かったらこの国について教えてくれませんか?」

「いいじゃろう、簡単に教えてやろう」


 そもそもこの辺りには、国としての区切りは特にないらしい。

 人間風の言い方をするなら、魔族領。ここは魔都リーンスニルの王城で、城も街も同じ名前だそうだ。


「……ひょっとして、魔族領って、その……」

「ん、どうかしたのか、ん?」


 どこか面白そうな声で、ジャルカさんが訪ねてくる。

 あれー、これ、やっべぇ?


「じ、人類の、国だったり、とか……ははは、えっと」

「ほう! なかなかどうして、詳しいじゃないか。

 このリーンスニルは、かつては人間達の国だったのじゃよ。ほんの500年ほど前まではな」


 500年前。

 前回の転移勇者の居た頃から、200年後。


 え、人類最大の国家なのに、あっさり滅ぼされて魔族領になっちゃってるの!?

 ちょっとちょっとジャージの女神様! リサーチ足りてないよ、リサーチ!


「へ、へー……そうなんですねー……」

「うむ。

 スクネとやら。ここがリーンスニルであることを知らないくせに、人類の国じゃったなどと妙な知識があるなぁ。ん?」

「は、はははー……

 実はこれでも、結構勉強してるものでしてー……」


 一応大学生だからな、こっちの水準と比べれば学力については超一流なんじゃないかな!

 元の世界だったら? そんな意味のないこと聞くんじゃねーよ、知力のステータスから察してくれ。


 あ、知力は意外と高いんだった。えっへん。


「ふふん……まぁ嘘ではないようじゃし、そういうことにしておいてやろうかの」

「ありがとうございます!」


 訳有りなのは確かなんです、詮索されないのはすごく助かります。見えないだろうが頭を下げておいた。


「で、リーンスニルの情勢じゃったな。

 一言で言えば、魔王に睨まれておる、じゃな」

「なんと……」


 まさか、転移後30分程度で早くも魔王の話を聞くことになるとは!

 魔王討伐の課題のうち、魔王の居場所発見だけはスムーズに進みそうだな。


「魔王城から最も近い大都市じゃし、この城の王族は魔王と違って穏健派。

 その上、兵数としても魔族領内有数じゃからな。いつ反旗を翻すかと、魔王城の連中からは睨まれておるのじゃよ」

「何もしてないのに、居るだけで睨まれるの?」

「積極的に人間を滅ぼすでもないし、元々ここは人間達の国。

 まあ色々な要因はあるんじゃが……」


 ここで一度、ジャルカさんはためいきをついた。

 なんだ、言いづらいのかな?


「王妃様は人質として魔王に取られ、姫様もまた身柄こそ無事ながら魔王の呪いで声を奪われておる。

 この国の者達からすれば、恨みこそすれ忠誠を誓う相手ではないのじゃよ。魔王はな」


……えーっと。

 あの、姫様の声、戻った……みたいなんです、けど?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ