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三日で終わらす異世界転移  作者: 岸野 遙
一日目 ~大会予選にパーティを~
51/60

1/10 13:10

 雲はそれなりにありつつも、日差しは暖かく降り注ぐ。

 学校の校庭にあったトラック半分ぐらいの闘技場の周りには、出場チーム達がそれぞれ固まって並び。

 さらに外側、塀の向こうには多数の観客達が思い思いの様子で、けれど言葉を潜めて選手達を見つめていた。


「それでは、これより―――」


 選手達は闘技場の外から、ただ一人舞台に居る司会に視線を集める。

 拡声魔導具を手にした司会が、選手と観客に向けて、手を振り上げ。


「ディルエニア武術大会、予選午後の部を開始致します―――!」


 雄叫びと歓声があちこちであがる中、戦いの火ぶたは今切って落とされたのだった。


 さあ、予選開始。

 初の本格的な戦闘だ、フィアのためにも自分のためにも力いっぱいやってやろうじゃないか。




 オレ達が参加する午後の部は、四人一組のパーティによるバトルとなる。ルールはこんな感じだ。


・ 四対四のチーム戦で、トーナメントを行う。

  戦闘は闘技場の上で行い、降参、転落、戦闘不能などで個人個人に脱落を判定する。チーム全員が脱落した方が負け。

・ 出場は11チーム。A・Bブロックに分かれ、それぞれの優勝チームを決める

  オレのいるAブロックは6チームでのトーナメントとなるので、3回勝てば優勝(オレ達は冒険者ランクが低いため試合数が一回多い)

・ ブロックの優勝チームからは3人、準優勝チームから1人、午後全体で8人が本選へと進む事ができる

  チーム内の出場者決定については、チームの自由

・ 戦闘はパーティ同士のチーム戦が基本だが、対戦者同士の合意が得られれば対戦方法は任意となる。

  一騎打ちでも勝ち抜き戦でも、勝敗が決定し司会や観客が認めればOKらしい。

・ 武具、魔術など使用は全て自由。強い装備も実力と見なされる。

  ただし人質やら脅迫やらについては、大会参加者としても冒険者ギルドとしても厳罰に処されるとのこと。

・ 生命の危機に瀕すると自動で非戦闘エリアへと排出されるため、死者はよほどのことがないと発生しないらしい。

  腕の一本や二本なら、高位の聖職者(聖賢教団だな)が戦闘後に余裕で治療してくれるそうだ。


 そもそも、全員が今日であったばかりのオレ達としては、チームワークとか望める気はしない。

 アレットは自称二流、イグレーナも他3人よりはだいぶステータスが落ちる以上、勝ちぬきが一番ありがたいのかもしれないなぁ。

 ああ、でも勇衛が武器がないんだっけ。鎖がないから盾でぶん殴るしかできないとかなんとか。

 色々と悩ましい……




 さて、ここでうちのチームの紹介をしておこう。


 まずは期待の新人、イグレーナ。

 地獄の眼差しが特徴の、エルフの射手である。

 エルフなのに(?)一切魔術は使えないが、弓術と速射術を高いレベルで有し、器用のステータスもかなりのもの。

 典型的な物理火力である。


----------------------------------------

■ 詳細ステータス

● 基本情報

名前 : イグレーナ

職業 : エルフの射手

レベル: 30

性別 : 女

年齢 : 34歳

● 能力値 

 筋力:  273

 体力:  210

 敏捷:  180

 器用:  510

 知力:  210

 精神:  180

 魅力:  210

 幸運:  120

● スキル

1 魔皇竜の末裔

1 魔断結界

7 弓術

5 速射術

2 武術

2 命中

3 筋力補正

7 器用補正

1 精神耐性

4 視力低下

2 危険感知

4 気配感知

1 文字理解

5 巨乳化

● 称号

エルフの射手 魔皇竜の末裔 魔法なき精霊種 睨むもの 

----------------------------------------


 スキルおよび称号に、不穏な文字が見え隠れしているんだが……

 なお、この情報は鑑定で見て知ったものである。

 パーティメンバーのステータスとして見ると、上2つの不穏なスキルは見えませんでした。

 隠しスキルって扱いなのか、まだまだよく分からない法則があるようだ。

 なので、勇衛とアレット(パーティメンバー・鑑定なし)の二人はこの情報を知らないはずである。


 あ、一番下の浪漫溢れるスキルと、1つ目以外の称号も見えませんでした。念のため。


 巨乳化5……いったいあの服の下に、どれほどの……!




「師匠、もう出番でござるよ?」

「お?

 おお、早いな」


 一回戦の開始から、まだ3分程度。

 それでも舞台を見れば、チーム戦のはずなのに四対一の状況となっていた。

 いや、勝ってる方の三人は何もしてないから、実質は一対一か。


 片や、二刀流で小剣を構えた、シーフ風の覆面男。

 片や、長剣に大盾を構えた、いかにもな感じのぴかぴか光る鎧のイケメン。


 観客の黄色い声援が、そこはかとなくむかつくと言うかシーフ頑張れ。


「実力差があり過ぎたでござるな。

 片や達人級の冒険者、片やまだ一般級のパーティ。一対四でもあっという間でござる」

「え、一対四で始めて、もう三人倒したの?」

「でござるよ。

 師匠、勝ちあがれば対戦することになるんだから、ちゃんと見とけでござる」

「う、すまん」


 勇衛に真っ当なことを言われると、なんだか凹むなぁ。


「ところで、達人級ってどの程度すごいんだ?」


 オレの質問に、勇衛がわざとらしいため息をついた。

 むかつく態度の勇衛に代わって、アレットが説明してくれる。


「そういや、スクネは説明も受けてなかったんだったな。

 えっと、冒険者や魔物には全部等級があってだな―――」


 冒険者の等級とギルド証のプレートの色は、以下の通りらしい。

 ついでに教えてもらった魔物の強さの等級もあわせて記載しよう。


冒険者 色 魔物

―――――――――

新人級 緑 集落級

駆出級 黄 町村級

一般級 赤 都市級

熟練級 紫 国家級

達人級 青 大陸級

英雄級 白 世界級

伝承級 黒 伝承級

神話級 金 神話級


「達人級……プレートが青で、5ランク目ってことか」

「そうだな。

 熟練級までは探せばすぐに見つかるが、その上となるとかなり数が減ってくる。

 去年の優勝者だって、当時は達人級だったはずだしな」

「いきなり優勝候補か……」


 なんて話している間に、さしたる手傷も負わせられずに決着がついてしまった。

 さすが達人級のイケメン。


「しっかし、すげー歓声だなぁ」


 余裕の勝利にも関わらず、飛び交う黄色い歓声。

 なんだか嫌な気分になるオレと同じような表情で、呆れ混じりにアレットが呟いた。


「わりと有名な冒険者でござるからな」

「お、流石は冒険者。勇衛は知ってるのか?」

「まあ、冒険者として話したことはあるでござるよ」

「すごいな……ぼっちのくせに」


 人と会いたくないからと、早朝に一人で森に着ていたことは忘れない。

 いや、そのおかげで出会えて助けてもらえたんだから、感謝も忘れてないよ。口にはしないけど。


「ぼ、ぼっちじゃないでござる。

 拙者は引く手数多過ぎて、うんざりしてギルドから距離を置いているだけでござる」


 オレ達がそんな風に盛り上がっていると、


「いてっ」


 なぜかイグレーナが矢を手で握って頬に突き刺してきた。


「……」

「う、血が出てるじゃんかよ、普通に呼んでくれればいいだろ?」

「……」


 相変わらず、何を考えているのか分からない怒りの眼差し。

 一人で歩き去るイグレーナを擁護するように司会が次の試合を告げ、オレも頬を治しつつ立ち上がる。


「勝ち抜き戦が望ましい、できるだけアレットとイグレーナに負担を掛けない。で、いいな?」

「そうだな。

 一般級の二流聖職者で良ければ戦ってやるが、あたしじゃ大会に参加するレベルには達してないだろ。

 予選くらいならなんとかなるかもしれないが」

「二人には参加をお願いした状況、拙者と師匠で勝つから大丈夫でござるよ。

 いざ、参ろうぞ!」


 鞘を握り、柄を撫で。

 深呼吸して、意識を切り替える。


「ああ、いこう。

 ゴブリン討伐に続き、次は武術大会だ」


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