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三日で終わらす異世界転移  作者: 岸野 遙
一日目 ~大会予選にパーティを~
40/60

1/10 10:40

 2畳程度のワンルーム、お風呂はないがトイレは完備。ベッドもお部屋に備え付け。

 壁や天井は分厚く防音性に優れ、しかし一面だけは全面が格子に覆われ通気性も抜群です。

 過度の眩しさを避けた天井照明は薄暗く、穏やかな眠りと暗い未来を暗示してくれます。


 独りで始める牢屋生活inディルエニア。

 勇衛も近くの牢に入れられ、フィアの居場所は現在不明。状況も先行きも、牢屋の照明のように薄暗い。



 しかし、初回の冒険に続いて、またも牢屋生活かぁ。

 前回みたいに―――


……ああ、そうだ。

 近くの牢屋にいた猫耳のメイド(・・・・・・)先生が助けてくれたんだった。

 リメルの解呪を条件に協力してもらい、それから一緒に夜の森でパワーレベリング。

 城に戻った後は一悶着あったが、見事リメルの呪いを解いて―――


 魔王に、殺された。

 いや、自爆だから正確には殺されてない気もするんだけど。いずれにせよ、そこで冒険が終わったんだ。



 ため息一つ、苦笑も一つ。初回の冒険を振り返るのは、女神の所で散々やったからもういい。

 牢に入れられるのは二度目。振り返るより、前回の経験を活かそう。

 まずは、状況を整理してやれることを考えなくちゃな。


 まず、現在の状況だ。

 オレは国家反逆罪ということで、兵士達に捕まった。

 殴って逃げ出すことも出来たが、フィアがすでに捕まっているみたいなのでそれは得策ではない。

 なので、フィアを救出し、疑いを晴らすため、オレは連行されることにした。

 そうして今、エルフの剣と鎧を取り上げられ、一人で牢に放り込まれている。


 勇衛は、オレと一緒に捕まって、同じフロアまで連行されて来た。

 多分、隣か2つ隣か、すぐ近くの牢屋に放り込まれていることだろう。



 捕まる時にオレは、勇衛は道案内なので無関係だと訴えた。

 だがその発言は、ほかならぬ勇衛自身によって否定された。

 曰く、師匠の濡れ衣は弟子が脱がすんだとか。

 勇衛が言うと変態な意味に聞こえてしまったが、オレは悪くないと思うんだ。


 あいつひょっとして、牢屋に捕まって拷問されるとかを夢見ているだけなんじゃ……

 いやいや、そんなはずはないよな? 仲間で弟子を信じていいよな?



 今与えられている情報は、2つ。

 フィアが『失われた女神の使途を名乗った』ということ。

 それから、オレ達は国家反逆罪と言われていること、だ。


 国家への反逆なんて、穏やかじゃない。

 失われた女神の使途―――この言葉がキーワードなんだろう。

 女神は、失われた。だから女神の使途を名乗ることが、大罪となる。



 まあ、なんだ。

 考えるのは必要だが、考えすぎて時間を使うのも問題だ。

 情報を仕入れて、考えても分からない部分はあっさりと諦めよう。

 誰かに聞けば済む話だ。


 そんなわけで、誰かに聞くとしよう。


「勇衛、聞こえる?」

「ここにござるよ」


 鉄格子の側に腰を下ろして呟けば、少し離れた場所から返事があった。

 2つ隣の牢、くらいかな? 少なくともすぐ隣じゃないようだ。


 というか、気配感知を使えば牢屋周辺の気配は丸わかりだった。うん、位置から言って2つ隣だな。

 まだまだスキルを使うことに慣れてないなぁ。ちゃんと練習して慣らさないとな。


「大会行ってくれて良かったのに、付き合わせてすまんな」

「いいでござるよ。

 拙者、一度は謂れのない罪で牢屋に入れられて、私刑と称して牢番から卑猥な事を―――おっと」

「おっとじゃねーよ!」


 見える範囲に牢番は居ないが、他の人間が居ることは気配で分かっている。

 今の発言が聞こえてたらどうするんだか、色んな意味で油断ならない奴だ。


 勇衛の怖いところは、分かっててやってるかもしれないとこだよな。

 まさか、この状況下で挑発しているとは思いたくないけど。


「師匠、大会予選の受付には間に合うようにお願いするでござるよ」

「お前、余裕だよな」

「むふー、師匠がついてるでござるからね!」


 牢屋に放り込まれても、ここから出れることについては疑っていないらしい。

 信頼なのか、何を考えてるのか。相変わらず掴みどころがない奴。


「ところで勇衛、オレと言うかオレの仲間が、女神の使途を名乗ったら国家反逆罪にされたみたいなんだが。

 心当たりとか、あるか?」

「んー……

 師匠とそのお仲間が女神の使途である、というのはまことでござるか?」


 オレの質問に、ある意味で当たり前の事を訪ねてくる勇衛。


「ああ。オレは、女神に頼まれてこの世界にやってきた。証拠はないけどな。

 大聖堂に来ていたフィアは元々女神の眷属で、オレの仲間として一緒にやってきたんだ」

「なるほどでござる。

 師匠の言葉が全て真実だとしたら、確かにディルエニアにとっては由々しき事態でござるな」

「一体、どういうことなんだ?」

「この世界には、いくつもの宗教があるでござる。

 拙者の故郷しかり、この聖賢教団しかり」

「ああ、そうだろうなぁ」


 直接神様が姿を現して力を振るっているわけじゃないんだ。

 人の解釈の数だけ宗教が出来ても、なんら不思議はないだろう。


「聖賢教団の教えでは、女神はもう死んでるでござる」


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