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「えっと、もう少し説明を頼みたい」
「そうね。かいつまんで説明するわ」
数千年以上昔、女神と邪神が争っていた。
女神が勝ったが、邪神の最後の呪いにより、女神は世界に干渉できずその様子を見ることもできなくなった。
唯一、約700年に一度、三日間だけ邪神の呪いである結界が弱まる時がある。
その時だけは、世界を見て、最低限の影響を与えることができる。
「つまり、その『最低限の影響』ってのが、勇者を異世界へ転移させること?」
「そうよ、理解が早くて助かるわ。
だから勇者の精神以外は送り込めないし、今世界がどうなっているのかも分からないのよ」
「なるほどなぁ……」
三日間しかない理由も、とりあえずわかった。
現状であれこれ分からないって理由もわかった。
「これまで700年ごとに、何度も勇者を送り込んでいるの。
前回の勇者は、二日目の夕方に魔王の軍勢と正面から戦って死んだわ」
「まあ……そういうこともあるよな」
と言うか三日間で魔王を倒せとか、改めてどんだけハードなんだよ。
これじゃぁ異世界で旅やら美食やら美少女やら、あれこれの夢が全然かなわないじゃないか……!
「ああ、そうね。報酬、って言えるか分からないけど。
もし魔王を倒せたなら、元の世界に帰っても、そのまま勇者として世界に居残ってもいいわよ。
ただし魔王を倒して結界を破壊しない限り、邪神の結界が復活するとともにあなたの精神は世界から跳ね飛ばされるわ」
「お、なるほど。
三日間だけ死に物狂いで働けば、あとは自堕落でチート満載な異世界パラダイスが待ってるわけか!」
「なんだか少しだけ非常に気になる言い方だけど、多分だいたいはそれほど間違ってないんじゃないかしら?」
すみません、その虫を見るような目をやめてくれませんか……
ちょっと苦手で心が辛いです。
「ああ、ごめんなさい。そうね、悪かったわ。
こちらは一応お願いしてる立場だし、無事に魔王を倒してくれた時にはある程度の願いは叶えられるように頑張るわ。
力は随分弱まってるから、どれだけ出来るか分からないんだけどね」
「ん、報酬についても了解した」
異世界に勇者として転移、という出来事自体が丸ごと報酬みたいなもんだ。
口約束でも、そこにおまけが追加されるなら不満は一切ない。
「一応、700年前に人類側で一番栄えていた国へ送るわね。
今は小国になってたりするかもしれないけど、いきなり魔王の城に送るよりいいでしょ?」
「もちろんだ。レベル上げと仲間集めは必須だし、人の多いところの方が都合がいいだろ」
「わかったわ」
ジャージの女神に頷く。
こいつもこいつで、どうやら苦労してるんだなぁ……
自分の命だけは懸かっていないんだし、やれる範囲で頑張ってみよう。
「そろそろ時間ね。
私も出来るだけ手助けしたいけれど、おそらくあなたを送り込むだけで力の大半を使ってしまうと思うわ。
だからあまり期待はしないでね」
「わかった。
魔王を倒すと約束は出来ないけれど、頑張ってみるよ」
「ありがとう。
これでも結構、あなたの手際やゲーム知識なんかには期待してるの。よろしく頼むわね」
言うなれば、プレイ期間が三日間限定の、異世界勇者ゲームだな。
ゲーム内で死ぬか、時間切れならゲームオーバー。
見事に魔王を倒せればハッピーエンドだ。
「どこまでやれるか、頑張ってみようじゃないか!」
「ええ、いってらっしゃい。応援しているわ。
願わくば、あなたが魔王を討ち倒し、再びここで再会できますように―――」
そう言って、ジャージの女神は。
初めて微笑みを見せると、オレの頬を両手で挟んで。
ゆっくりと、口付けを―――
『三日で終わらす異世界転移』
皆さま、いかがでしたでしょうか。
三日間というとても短い時間でしたが、少しでも楽しんでいただけたなら
違うよ!
終わってないよ!
今回は、まだ打ち切りじゃないよ!
というわけで、皆さま初めまして。
今更ながら、超王道、飽食気味の世界にあえて転移して。
期間限定で、勇者が魔王を倒す、その王道を歩いてみたいと思います。
少しでも皆様に楽しんでいただけるよう、全力で頑張っていきます。
どうか皆様にも、三日間だけお付き合いいただけますようよろしくお願い致します。
72時間ぶっちぎりハイテンション異世界耐久レース。
これより、スタートとなります。
ブクマ、評価、感想など随時超歓迎です!
三日間走り切れるよう、作者の補給も生暖かくよろしくお願いします☆