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「いやいやいや、三日間で魔王を倒すって、どんだけ無茶苦茶なのさ?
さすがに、もっと時間くれよ。そんなブラックワーク勘弁してくれよ」
「三日間なのも、理由があるのよ。面倒だからとかじゃなく、伸ばしたくても伸ばせないの。
時間があれば、後で説明してあげるわ」
「ん……そうだな、説明を頼む」
「ええ。残り10分もないし、大事なことから話すわ。全部頭に叩きこむのよ」
「メモとかマニュアルとか、ないの?」
「ないわ!」
嬉しくない内容を、力いっぱい断言されてしまった。
「まず、あなたは勇者として、成長すればほとんどのスキルや魔術を扱えるし、誰よりも強くなるわ」
「勇者様だからな。ふふん」
「ただし、転移直後は全く何の力もない、いわゆるレベル1の状態よ」
「……三日間なのにそれはひどくね?」
「あなたの肉体を送り出すわけじゃないの。そこまでの干渉は無理よ。
現地でゼロから肉体を構築し、そこにあなたの精神を転移させる形ね。
だから、あなたの肉体は真っ白の状態から始まるわ」
キャラメイク途中からスタートな感じか……
首を振りつつ説明してくれる謎の美女に、とりあえず頷く。
「……美女と呼んでくれてるのは悪くないけど、私は転移先の世界の女神よ。
女神様とかそれっぽく呼んでちょうだい」
「女神……様?」
「なんで不思議そうなのよ!」
いや、だって……なぁ?
確かに、顔だけはすっげぇ美人だ。こんな美人、人生初だ。顔だけは。
「なんで顔だけを連呼してるのよ!?」
そりゃ……なぁ?
すげぇスタイルのいい美女なのは認める。
ただ、なんでそれが、ジャージ姿なんだ?
意味が分からない。引きこもりの干物女にしか見えない。胸の突っ張った窮屈そうな部分を開放して欲しい。
「う、うるさいわね! ジャージは素晴らしいじゃない、寝ながらゲームやるのに最適なのよ!」
「うわ、こいつ駄目人間だ……」
「って、そんな話してる時間ないの、説明が足りなくて困るのはあんたなのよ!」
おっと、ついつい我慢しきれず突っ込んでしまった。話を聞こう。
「説明を続けてくれ」
「……はあ。
そういうわけで、何も持ち込めないしあなたは自力で強くなる必要があるわ」
「なるほど。
開始時点のスキルとかは選べるのか?」
「現地についてから、自分で取得してもらうことになるわ。初期スキルポイントでね」
キャラメイク後、スキル未振りの状態なわけね。オーケー。
「そうそう、この世界の、ファンタジー作品で言うところの異世界転移文化はだいたい把握してあるわ」
「……さいですか?」
「時間もないし、できるだけ理解しやすいように説明を続けるわね。あんたも黙ってしっかり覚えなさい」
そんなわけで、色々説明されました。
・ 経験値、レベル、スキルポイント、スキル取得。標準な感じ。
・ スキルポイントの割り振りは異世界人の特権。ステータス画面から操作可能。
・ 好感度などが高ければ、従属する仲間のスキルも操作可能。
・ スキルポイントで手に入るのはあくまでスキルのみ。お金や道具は別途入手する必要がある。
ただし武器を生み出すスキルや、空腹に強くなるスキルなどもある。
・ スキルポイント以外でのスキル取得も可能だが、三日間だから現実的には無理。
・ 異世界言語での会話はスキルなしで可能。読み書きは勉強かスキルで習得が必要。
・ まず最初に取るべきは成長補正やスキルポイントボーナス、三日鉄人などと思われる。これがないと三日間とか絶対無理。
・ スキルの種類は数百にもおよぶ。ステータス画面の取得可能スキル一覧で見れるが、全部見るには時間がもったいない。検索とかすべし。
当然だが、魔王討伐の役に立たないようなスキルも多数。種族固有スキルも、場合によっては取得可能。
「ざっとだけど、こんなもんかしら?
これで最低限はやっていけそうよね?」
「成長とかについては、だいたい了解した。
つまり、適当にファンタジー知識でやればどうにかなりそう、ってことだな」
「……ぶっちゃけ、そうね。間違ってないわ」
ちょっと苦々しい顔でジャージの女神が頷いた。
説明の時間が惜しいなら、最初からその一言でいいのに。
「誰がジャージの女神よ……はあ」
「つっこまないつっこまない。
で、現地の情勢とか魔王に関する知識を教えて欲しいんだが」
「……わからないわ。ごめんなさい」
オレの質問に、ジャージの女神が少し辛そうにうなずいた。
わからない……って、どういうことなんだ?
「魔王を倒して欲しいのに、状況が分からないのか?」
「ええ。
私が最後に世界を見てから700年ほど経っているわ。その時と比べて今がどう変わっているか、全然わからないのよ」




