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「ちょっと、いつまで起きてんのよ!」
んー……あー……?
寝てる脳みそに突き刺さる、どっかの誰かの声。
「と言うか、まずは起きなさい!
それで、夜更かししてたことを謝りなさい!」
ついで、ゆさゆさ……ぐらぐら……ぐるんぐるん……?
なんか、回っ、てる?
「う、うおっ?」
「やっと起きたわね、北村 宿禰!」
なんだなんだ、回ってる!?
目を覚ますと視界が高速で縦回転していて、ああきっと鉄棒の大車輪とかこんな感じなんだろう!
「って、なんで回ってるんだよ!」
「あんたが起きなかったからよ!」
突然、不自然に回転が止まると、空中から地面にどさりと落ちた。
「こ、こしが……」
「あんたは年寄か!」
「う、うるさい! 毎日椅子に座って長時間ゲームしてみろ、腰ぐらい痛くなるだろうが!」
「ゲームするのにわざわざ椅子なんか使うのが悪いのよ!」
「なんだと!?
椅子は文明の利器だ、人間の道具の象徴だ! 椅子に謝れ!」
「ゲームなんて寝ながらやれば―――じゃなくて!」
椅子に対して失礼なことを言った、目の前の……
「え、誰?」
「こんなバカな話をしてる暇ないんだった!
ちょっと北村 宿禰、あんたが夜更かししてるせいで時間がなくなっちゃったんだからね!」
そう言って、いかにもぷんぷんしてますって表情でオレを見つめてくるのは、知らない美女だった。
「え?
ていうか、ここどこ?」
「質問を受け付けてる時間はないわ!
いい、一度しか説明しないから、疑ったり疑問を持ったり面倒なことしないで、全て受け入れるのよ?
あんたにとってはいい話なんだからね!」
「お、おう?」
いい話だから受け入れろ、ってどんだけうさんくさいんだか。
なんだこれ。誘拐でもされたのか?
壁の見えない、だだっぴろい真っ白の部屋に、オレと目の前の美女の二人がいる。それ以外、何にもない。
「誘拐じゃないし、風景の描写とかもいいの! 時間がないんだってば!」
「いやいやいや、ちょっとお前、何オレの心の声に割り込んでるんだよ!?」
「いいから聞きなさい!
あんたにはこれから、異世界に転移して勇者をやってもらうわ!」
「……異世界転移? 勇者!?」
お、おお?
夢か? これは夢なのか?
夢でもいいじゃないか、こいつは最高にブラボーだ!
「夢じゃない!
時間がないから一度しか言わないわ、ちゃんと聞きなさいね?」
「わかった、まずは話を聞こう」
オレの言葉に美女が頷くと、少しだけ落ち着いた表情で口を開いた。
「あんたにはこれから、勇者として異世界に転移して、魔王を倒してもらうわ」
説明、一度しか言わないんじゃなかったのか?
「ツッコミもしない!
あんたの異世界転移だけど、現地で死んでもゲームオーバーになるだけで、こっちの世界に帰ってこれるわ」
「イージーモード素晴らしい!」
死んだらゲームオーバーでゲームは終了、リアルに戻ってくる感じか。
いいじゃん、どんだけやばい世界でもホントに死ぬことはない、それならかなり安心じゃん!
「ただし!
異世界に居られる期間は三日間だけ」
「……え?」
「あんたは異世界に転移して、三日間で魔王を倒して平和を取り戻すのよ!」
明日も一日で2度掲載の予定。
プロローグは全四話、明日で終了になります。
全ては予定?
いえいえ、そんなことは……多分きっと。ハハハ