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三日で終わらす異世界転移  作者: 岸野 遙
プロローグ
1/60

1/9 23:37

 ドラゴンの爪が立ちはだかる重戦士の大盾に突き立った。

 吐きかけられる灼熱の炎に包まれた仲間達を、先ほど倒れた僧侶が事前に張っていた結界が辛うじて守る。

 だが飛び上がったドラゴンの尾が戦場の半分以上を薙ぎ払うと、結界が音を立てて砕け、後方の魔術師が間合いを誤り軽々と弾き飛ばされた。

 立ち上がらない仲間。最後まで立っているのは二人。

 守りに特化した重戦士と、攻めに特化した剣士。


 天に掲げた大盾を振り下ろすと共に、空から降り注ぐ光の鎖がドラゴンの巨体を次々と縛り戒め、巨躯を、翼を地へと縫いとめる。

 怒りの唸り声をあげ、苦し紛れの炎を吐くドラゴン。

 その炎を耐える重戦士の背を蹴って、剣士が高々と飛び上がり―――


 一閃!


 真っ向から振り下ろされた両手剣が、地に伏せるドラゴンの巨体をやすやすと切り裂き。

 千切れかけの腕から繰り出される爪の一撃を剣で受け流し、返す刀で片腕と片翼を斬り飛ばす!


 光の鎖の効果時間が途切れ、ドラゴンが自由を取り戻す。

 しかし、空を飛ぶ翼も、敵を切り裂く爪も、もはや半分しか残っていない。

 叩き潰すように真上から振るわれた腕をバックステップでかわすと―――


「これでっ、フィニッシュだ!」


 腕を駆けのぼり、迫りくる牙を蹴って飛び。


 空中で構え直しながら、持続時間が一瞬しかない超強化を発動。


『ファラール : 青龍穿鱗戟!』


 刹那の一瞬を違わず、技名と共に手にした両手剣をふかぶかと弱点である眉間に突き刺し。


 ついに邪悪なドラゴンを討ち果たしたのだった。




 激闘が終わり、倒れていた者も起き上がる。

 戦後の処理のあれこれを片付けて、拠点へ撤収。

 今日の戦果や反省をかわす仲間達。


「く、ふあぁ……」


 そんな様を見つめ、オレことファラールも発言する……よりも前に、大きな欠伸を一つ。ああ、ねみぃ。

 戦闘中はなんともなかったんだが、戦いが終わった今はひたすらだるくて眠かった。


 悔しさや反省をかわす仲間達を見ながら、二度目の欠伸に袖口で涙をぬぐい、頭を軽く振る。

 なんだ、今日はえらく眠たいな……

 時計を見れば、11時半を過ぎたくらい。いつもはまだまだこれからなんだが、今日の睡魔はレイドボス並に凶悪だな。


 そういえばボス戦中は全く眠くなかったが、そこに辿り着くまでの長いダンジョン中にも少し眠たかったっけ。今ほど酷くはなかったけど。

 明日から連休だし、まだまだ夜更かしするつもりだったんだがなぁ。

 ここまで眠いと最悪寝落ちしそうだし、仕方ないから今日は早く寝よう。



 戦利品は余りものでいい。適当に受け取る。

 もともと今日は、仲間の魔法使いのレア装備狩りだった。オレのキャラファラールは手伝いで来てただけだし、すでに十回以上も倒している相手。特に欲しいものはない。

 現物が出なかったのは残念だろうが、レア狩りは根気との戦いだ。

 オレにとってはそこまで辛い相手でもないし、また元気な時に協力することを約束して今日は早めに撤収させてもらう。


 オレ、と言うかオレのキャラクター『ファラール』は、このネットゲー『ガイレインマギア』の世界ではそれなりに知られた存在のつもりだ。

 公式の大会で一度だけ優勝した事もあるし、トッププレイヤーの一人と名乗って差し支えないはず。

 順番待ちでオレをあてにしてた夜行性の仲間からは悔しがられたが、まぁすまん。明日だ、明日。

 仲間達に挨拶をして、アイテム袋の整理もせずにログアウト。

 そのまま、ガイレインマギアと共にパソコンを落とすと、何度目だかも覚えていない欠伸が出た。


 あー、しかし今日は本当に眠いな。

 昨夜遅かったわけでも、今日一日ハードだったわけでもないんだが……


 ぼやきながら、歯磨きやらなんやら済ませる。

 立ったまま寝そうだったのは内緒だ。



 早く起きれたら、朝から狩りにでも行くかなぁ。

 じゃあ早めに、平日と同じ時間くらいでいいな。一応弱めの目覚ましをかけて、っと。


 うう、眠い。最低限やることはやった、寝よう。


 最後に部屋の電気をリモコンで消し、オレは枕に顔を突っ込んだ。


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