とある逆ハーの結末
乙女ゲームもの、初めて書きますので、おかしい点が多々あると思いますが、生暖かい目で御覧ください。
「神宮寺様、風見様、上条様、伊集院様、御当主樣方の命令です、海外にある規律の厳しい寄宿舎学校に転校して頂きます、片倉先生、貴方はご実家よりお話があるそうなので、そちらに向かって頂きます、これからの事は車にてご説明致します」
きっちりしたスーツを着た、弁護士からの言葉に、名前を呼ばれた五人はフリーズしました。その状態のまま屈強なボディーガード達に羽交い締めにされ、連れていかれる…………前に、ハッとした五人が弁護士さんを睨み付けました。あぁ、やっぱり分かってないですね、こいつら。これが文字通り、最後のチャンスである事を理解していないようですね。仕方ありません。このわたくしが、説明して差し上げます!
「まだ、ご理解して頂いていないのですね、皆様?」
それは優雅に私は笑って姿をみせました。
先に自己紹介からいたします。わたくしの名は、妙道院 麗子。とある一流企業のご令嬢です。そして、この不甲斐ないメンバーの一人、神宮寺様の婚約者でもあります。本当に、本当にっ! 苦労の連続でしたけれど、これでしばらく会わないと思うと、胸がスッキリしますわ!
「おいっ! 麗子! これは何の茶番だっ!」
「そうですよ!」
「離しやがれ!」
「離してよ!」
順番に、わたくしの不甲斐ない婚約者、神宮寺様、眼鏡をかけた優等生、風見様、不良みたいな姿の上条様、可愛らしいといえる年下の伊集院様ですわ。まるで乙女ゲームに出て来る俺様、メガネ、熱血、ワンコみたいな方々です。皆様、美形ですからね。因みに教師たる片倉先生は、唯一理由が分かったのか、がっかりとうなだれていました。
「ちょっと麗子、あなただけズルいわ!」
と、出て来た美しい方々に、四人の目はますます険しくなってますが。はい、お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、こちらの美人さん方は、先生の婚約者を除く四人の婚約者です。わたくしに待ったをかけたのは、上条様の婚約者、橘 弥生様。
「そうですわ、麗子お姉様、わたくしとて何度、伊集院様との婚約を白紙にしようと思ったか」
とは、伊集院様の婚約者、斎藤日和様。わあ、凄い言われようです。私達の中で一番、年下の方でもあります。
「さて、皆様、皆様はこれより寄宿舎学校に行くわけですが、何故そうなったかですわね? それは簡単ですわ、皆様が自分に課せられた事を怠り、それが各家の御当主樣の耳に入りました、それこそ一族からの追放を考える程のお怒りでしたわ」
ようやく彼らは、自分達のこれまでの行動の不味さに気付いたようです。
「しかし、まだ我々は未成年です、追放では無く、再教育をという事で、我々婚約者達で仲裁に入り、今回の転校処置が決まったのですよ、まあ、無事に卒業出来なければ、今度こそ、追放が待っていますが……………ああ、言い忘れておりました、わたくし達、婚約者はあなた方が当主に相応しくない場合、別の方を婚約者にしますので悪しからず」
最後の言葉に、今度こそ彼らは顔色を無くしました。実はわたくし達と婚約し結婚した方が、次期当主として選ばれるという、決まりがありまして。だって彼ら、婿養子候補ですからねー。それでもこれまで彼らの婚約者でいた我々としましては、これが唯一出来る助けでした。まあ、彼らは自分のこれからに必死で、そこまで気付いていないでしょうけれど。
「最後、なんだな?」
おや、神宮寺様、神妙な顔という事は、理解して下さったのですね? このままアホな事をいったら、彼の従兄と婚約を考えなければなりませんでした。
「はい、次期当主になりたいのでしたら、しっかりと勉学に励んで下さいませ」
わたくしが肯定すると、まわりの五人がうなだれました。ようやく自覚しましたか。自分達の足場の脆さに。
ふと、近くの木の下に、今回の騒動の発端である方を見つけました。ふーん、盗み聞きとは、随分な真似をしますね? 自称ヒロイン様?
「いい加減、出て来たらどうですか? 桃井 姫花さん?」
ビクッとなりながらも、出て来たのは可愛らしい少女です。思わず守ってあげたくなるような。まあ、それは外見だけで、中身はクズでしたが。目は今や焦りをうつしてますがね。外見だけで判断してはいけない、まさにいい例と言えるでしょう。
「あ、あのっ! 彼らをどうするつもりですか?」
必死な姿をアピールしつつ、彼らを案じる言葉で問う桃井さんの姿は、確かに可愛らしいです。中身さえ知らなければ、ですが。
「皆様は海外に転校しますわ、日本に帰るのは無事に卒業した後でしょう、まあ、先生は本家にて再教育が始まるそうですが」
桃井さんに答えたはずなのに、約一名が更にうなだれました。自業自得という言葉をご存知ですよね?
さて、桃井さんですが、何やらぶつぶつと呟いております。あの、真面目に怖いですよ? 気付いてますか?
「何で皆が転校するの?! ありえないわ!」
え、いきなり何を言ってるんですか? 頭大丈夫ですか?
「何をおっしゃっているのです? 彼らが転校するのは既に決まった事なのですよ、貴女が何を言おうと、覆る事はありません」
かなり焦った様子ですが、桃井さんの姿はまだ、婚約者達には可愛くて優しい子としか思ってないのでしょうね? 実際、婚約者達は先生も含めて、優しい彼女が心配する姿が嬉しいのか、頬を緩ませている。本当におめでたい頭をしてますね〜。既に事実を知っている我らが婚約者連合は騙されませんよ。だって彼女、何でわざわざこんな場所でやっているのかの理由も知らないで、わたくし達を睨み付けてますからねー。
「そんな! 転校なんて横暴です! 確かに、確かに皆が仕事放棄しちゃったかもしれないけど! でもっ、だったら、この学校でやり直せばいいじゃないですか!!」
「えぇ、我々もそう言いましたよ」
「えっ?」
即座に肯定されて、桃井さんも驚いてました。そりゃあ、我々とて同じ事を言いましたよ。それ言ったら、当主様の奥様と先代当主夫人様に、泣かれました。うちの息子(孫)が申し訳ないと。当主樣の土下座には、こっちが泣きそうになりました。
「しかし、ここでは彼らの為にならないと判断されました、この学園は金持ちに優しい学園ですからね」
「でもっ! 皆が仕事しなくなったのは姫の所為だから! ちゃんとするように言うから! だから、だから、皆を転校させないで!」
涙ぐみながら凄い事いいましたねー。裏が泣ければ、本当にいい子だと、言えたんですけどね? 婚約者連中も感動してましたし。端から見たら、婚約者である悪役令嬢達に立ちはだかるヒロインの図でしょうか?
「では何で自覚があるのに、促さなかったのですか? 桃井 姫香さん?」
「そ、それは………」
口籠もっちゃいました。普通、分かりますよね? 悪いことをしたら、反省しないといけないのですよ? 彼女、頭はあまりいいわけではないようです。テスト順位は真ん中行かないくらいでしたから。ついでに、彼らからちやほやされて大層ご満悦だったでしょうね。自分の所為だからと、自覚もあるみたいですし?
「貴方は自覚があったのに、このままでいようとしたじゃないですか、彼らは成績も今まで築き上げた信用も、何もかも失ったのに、貴方は何も失ってないわよね?」
「えっ!?」
「あら、何で驚くの? 当然、貴方も今回の処罰の対象なのに?」
それを告げると、彼女の他に、婚約者方も驚いたように此方を見ました。あら? わたくし、変な事を言いましたかしら?
「な、何で私も!?」
「そうだ! 姫香は何も悪くない!」
我が婚約者たる神宮寺様が叫ばれます。他の方々も、彼女が悪い事をするなんて、全く思ってないようです。が、残念ながら証拠があります。
「さて、桃井様、此方の映像は何かしら?」
そういって見せたのは、携帯できるDVDレコーダー。映し出されたのは、彼女の教室での所業の数々。勿論、婚約者方にも見える位置ですよ?
「これは、我々が一年の時から始まった虐め対策の一つだったのですが…………まさか、こんな事を貴方がしていたとはね? 桃井 姫香さん、これは貴方の机ですわよね? 何故、嬉しそうに、貴方は自分の教科書をバラバラにしていらっしゃるの? 確か、貴方は誰にされたか知らないと言ってませんでしたか?」
今日の朝に起きた、この事件は、今現在、風紀委員の預かりになっています。そう、このわたくし、風紀委員委員長の。
「これはどういう意味です? 姫香?」
あら、風見様、青筋が出てますわ。これは風見様のお怒りの時のクセ。
「てめぇ、オレらを騙したのか?」
とは、凄んだ姿の上條様。不良だけあって怖いです。
「これ、婚約者達がやったって、姫ちゃん言ってなかった?」
可愛らしく首をかしげた伊集院様。目が笑っていません。
「こんなのに騙される、皆様も皆様ですわ!」
うわっ、婚約者のご令嬢方、怖い、怖いです!
「分かりましたね? 桃井さん、貴方も自分の教科書をバラバラにして、被害者の振りをしたわけです、貴方にはご両親に来て頂いてもらってますわ、今頃、他の諸々の事も校長と話し合っているはずです、急いで校長室に向かった方が宜しいのでは?」
そう促すと、桃井さんは真っ青なまま、校長室に向けて走って行きました。婚約者達など、見向きもしないまま。
「さて、皆様、海外で死ぬ気で頑張って来て下さいね? 20歳迄に帰って来なければ、我々は違う方を選びますので、頑張って来て下さいね?」
我々ご令嬢達に言われて、後が無い皆様は、必死な形相で海外へと向かって行きました。愛しいと思った人の現実を見たわけです。頑張って来て下さいね? 本当に。
さて、その後をお話しましょう。結果から言えば、婚約者の皆様は頑張りました。ハイスペックを無駄にお持ちのためか、飛び級に飛び級を重ね、一回りも二回りも大きくなって帰って参りました。有名大学まで卒業するなんて、流石ですわ!! 帰ってきた彼らを見て、婚約者のままで良かったと、心から思いました!
年下の伊集院様は、来年帰国予定ですが、其方で博士号まで取っており、婚約者の方をハラハラさせております。ほら、誰かに取られそうという、乙女心です。
そうそう、片倉先生ですが、彼は今も先生をしております。ただし学園は変わりました。市立の一般の子達が通う普通の学校に勤務しております。まあ、一族でも彼はあまり権限が強くないため、放置されたが正解でしょうか。婚約者の方は、それでもいいと追い掛けて行ってしまった為に、一時騒然となりましたが、まあ、懐妊の報告が来まして、社会勉強が終わったら、一族に戻る事で何とか解決しました。
さて、最後になりますが、自称ヒロイン様は、あれからすぐに転校されました。転校した先は、何とカトリック系の厳しい女子学校。桃井さんのお祖父様がとても厳しい方で、今回の事実を知るやいなや、彼女に甘い両親を一喝し、彼女を此方に転校させたそうです。わたくし達の婚約者と同じように、卒業まで帰る事を禁じて。勿論、長期の休みの帰省の場合は、自宅ではなく、お祖父様のご自宅に帰る事も決めたそうです。
まあ、しかし。彼女も幸せになるでしょう。別に学園からお咎めは無かった訳ですし。
皆、ハッピーエンドですよね?
海外で過ごしたメンバー、風見様と上條様は、無事に卒業を果たしました。やっぱり婚約者が好きなもよう。風見様はもうアタックをかけて無事に結婚しました。
上條様は、不良が嘘のように真面目な好青年になって帰国。上條様の婚約者はその姿に一目惚れを果たして、無事に結婚しました。
ヒロインさんは、結局、誰とも結ばれませんでしたが、きっと素敵な出会いがあるはずです。
はい、こんな感じになりました。ご不明な点などありましたら、作者までお問い合わせ下さい。
実は乙女ゲームの世界なんですが、誰も知りませんでした(笑)なんてオチです。 更に、ヒロインさんはあまりスペックが高くないために、ギリギリ魅了はなってましたが、彼らも完全に遊びになってました。まあ、やり過ぎた訳ですが(汗
婚約者たるご令嬢達は、彼らが海外に留学中はモテモテでした。が、彼らを信じて待ってました。
はて、多分この中で一番報われないのは、もしやヒロインのご両親でしょうかね?
まあ、後は皆様の想像に任せるとして。
本日はお読み頂きまして、ありがとうございましたm(__)m
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