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オーバードライブ  作者: よっと君
3/5

豚とセドリック先生

もう止めようもないくらいコメディーに仕上がってきてしまいました。笑いながら読んでいただけると満足です。

お腹が満たされたからなのか、私はだんだんと落ち着きを取り戻してきた。

「さぁ、戻るぞ」

リオンは私の手を取った。

「戻ったら殺されちゃうじゃない」

「ばーか。セドリック先生置き去りにしとけねーだろ。薄情な奴だな」

あ、セドリック先生の事忘れてた。リオンの言う通りかも。私が死んでから、私は自分の事しか考えてない。これからこの世界で一緒に生きてくんだもんね。先生とは仲良くしなきゃ。



坂を下って、さっきの巨大ムカデがいた所まで戻ったが、そこにはムカデもセドリック先生もいなかった。まさかムカデに食べられた!?

「もうこの辺にはいねーみてーだな」

「なんでそんな事分かるのよ」

私がそう言うと、リオンはふところから小さなレーダーのような物を取り出した。

「先生、チップ持ってんだよ。このジャックにチップの場所が映るんだけど。もしここでさっきの魔物に殺されてんならこの辺にチップが落ちてんだろ」

「ジャックって今リオンが手に持ってるやつ?だったらセドリックが今どこにいるか分からないの?」

リオンは難しい顔をしてジャックに顔を近づけた。

「これ、半径100メートル以内じゃねーと分かんねーんだよ」

つ・・使えない。それじゃあ自分の目で確かめた方が早い。まぁ、あんな適当なあの世の人達が作ったんだからこんなもんか。

「聞き込みするしかねーな。ただ気をつけろよ。この辺りの人間は信用度0だからな。誰が魔物か分かんねーぜ」

リオンはイヒヒと笑いながら私の前を歩き始めた。私を怖がらせて楽しんでいるとしか思えない。そういえばリオンはなんでこの世界に来たんだろう。まぁ、いて困るわけじゃないし、これからあのオタク先生と2人きりになるよりはずっといい。

「リオンはセドリックが見つかったらあの世に帰っちゃうの?」

「帰ってほしかったら帰ってやるよ」

「う、やだ」

とりあえず1人ぼっちになるのだけは避けたい。


そんな事を話していたら、

ピコーン ピコーン

ジャックが反応を示したようだ。私とリオンが辺りを見回すが、畑を耕している人以外人はいない。特にセドリック先生のような巨体は見つからなかった。

私がジャックを覗き込むと、レーダーの反応は東の方にある。だが半径100メートル以内となると民家しかない。リオンが1番近くの民家の戸をガラガラと開ける。

(あ、そんな勝手にいいのかな?)

そう思ったが、私もリオンに続いて家の中に入った。入ると、驚きの光景が目に飛び込んできた。

子供達が「豚ー!ブーター!」と言いながら取り囲んでいるのは、吊るされたセドリック先生。先生の真下には大きな鍋。どうやら先生は料理される直前だったようだ。

「フー、フーーーッ!」

先生は汗をぐっしょりかいていて怒っている。

「あんたら、何勝手に入ってきてんだい?」

鍋に箸を入れ、回しているお婆さんが私達を睨んできた。

「そっちこそ何勝手に人の知り合いを食べようとしてんのよ!あんたら魔物ね!?」

私は傍にあった水汲みをぎゅっと握りしめると、剣のように構えて見せた。ほんの少しの抵抗のつもりだ。だがその手をリオンが止める。

「婆さん、俺ら怪しいもんじゃねーよ。この家の前を通りすぎようとしたらいい匂いがしたんでちょっと覗いちまったんだ。それ何ていう食材なんだ?」

(さっきまでセドリック先生を心配してたくせに、今度は食材扱いですか)

「あんたらの目は節穴かい?これはどう見ても豚だろう。今から煮るとこさ」

ぐるぐると箸をかき混ぜるお婆さんはまるで童話に出てくる山姥やまんばそのものだ。私は呆れて顎が外れるくらい口を開くしかなかった。

「そんなに見つめてもやんないよ」

「婆さん、それ俺らの豚なんだよ。さっきそこで逃がしちまってよ。返してくれるとありがてーんだけど」

(先生を豚あつかいか)

「セドリック先生も何か喋ってよ!」

私は目一杯セドリック先生を睨みつけた。

「コト・・・ミ・・・」

やっと先生は口を開いた。喋れるんなら最初からそうすればいいのに。

「ひっ!豚が喋った!?」

「な?喋る豚なんて気色悪くて食えないだろ。もしかしたら妖怪の類かもしれねーぜ?俺らに渡してくれよ」

お婆さんは子供達を奥の部屋へと押し込むと、自分も机の下に隠れてしまった。リオンは腰にさしてあった短剣を取り出すと、セドリック先生を吊るしてあるロープを思いっきりかき切った

ドボン!

勢いよく鍋の中に先生はハマってしまった。これって助けたっていうより事態を進めただけじゃないか?そんなツッコミをしようとしたが、何だか馬鹿らしくなって止めてしまった。

「先生大丈夫か?」

リオンが覗き込むと、セドリック先生は鍋から這い上がり大きく息を吸った。

「リオン、あっち・・・行け!」

「おいおい、助けてやったのにそりゃねーぜ」

と言いながら、戸を開けて外に出て行ってしまったリオン。あれ?この2人って仲が悪いのかな?そういえば美形の先生も、リオンがイレーネ様直属の部下なのに「ただの門番」という言い方をしていたし。まあ、リオンってひねくれてるから目をつけられるんだろうな。そんな事を考えていると、自分の半身に妙な違和感を感じた。

「コトミ、ちゃん・・・・・」

見ると、鍋の汁でべとべとのセドリック先生が上目使いで私に抱き着いていた。

「リオン~~!」

私は外で暇そうに待っているリオンに助けを求める。

「琴美。なんでお前はいっつも変な野郎にばっか好かれんだよ」

「ばっかって何よぅ~。これでも男の人にモテたのなんて初めてなんだからね!」

でも最悪。最初に自分を好きになってくれた人がこんなオタクだなんて。

「初めて?ふーん。そっか」

何だろう。今リオン少し寂しそうな顔した?そんな事よりシャワー浴びたい。大ムカデから逃げて、べたべたのセドリック先生に抱き着かれて・・・もう体中汚れちゃってる。

「ねぇ、リオン。私お風呂入りたいなぁ。ほら、セドリック先生だって味噌汁まみれじゃ可哀想でしょ?」

本当は自分の事しか考えてなかったが、少し罪悪感がして先生の名前を使ってみた。

「お前はともかく、先生には風呂が必要・・・か。いいぜ。銭湯に行こうぜ」

豚扱いされるセドリック先生を書くのは思いの他楽しかったです。これからどんどん面白くしていけたらなぁと思います。

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