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オーバードライブ  作者: よっと君
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生き地獄へごあんな~い

ヒーローは美形じゃなくてこ汚い少年で、ヒロインはいじめっ子です。少し推理混じってますが、頑張って読んで下さい。

体中のだるさからして、私はもうじきダメになるのだろう。これが死か。こんなにあっけないなんて。今までの出来事が走馬灯のように駆け巡る。これから始業式で、新しい制服で、新しい学校に行く所だったのに。車に引かれるなんてついてないなぁ。こういう時、自分の名前は思い出せないって言うけど・・・えっと、私の名前は東野琴美ひがしのことみで、琴の音のように美しくなるようつけられたんだっけ。そんなことはどうでもいいか。

「おい」

「・・・・」

「おい!」

「・・・・・・」

誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。きっと救急隊員の人か何かだろう。

「返事しねぇか!」

声のした方をちらりと見ると、汚らしい服を着た私と同い年くらいの少年。ああ、最悪。どうせ助けられるのならもっと美形の男性がよかったのに。少年はしびれをきらしたのか、私の腹部をガンと蹴飛ばしてきた。

「何すんのよ!人が安らかに永眠しようとしてるのに!」

「何が永眠だ?お前ぴんぴんしてるじゃねーか」

そういえば車に引かれたはずなのに、全然痛くない。

「助かった・・・の・・・?私、天国に行かずにすんだ?」

「天国?琴美、お前天国に行けると本気で思い込んでたのか?だとしたら相当めでたい奴だな」

むっ!

「あたり前でしょ!比較的悪いことなんてしてないし。あんたこそ、初対面なのに随分と失礼な奴ね!」

「初対面・・・ね・・」

少年はため息まじりにそう言った。私はふらふらとおぼついた足取りでその場に立とうちした。が、よろけて転びそうになってしまった。気づけば少年の腕の中。

「ったく、危なっかしいなぁ」

あれ、この少年の匂い。昔嗅いだことのあるような・・・。

「おい、琴美。今からお前を地獄に連れていってやるぞ。喜べ!」

「うん・・・はあぁ!?」

聞き間違いだよね?

「何で私が地獄?天国の間違いでしょ?分かった、あんた死神ね!漫画とか小説とかに出てくるやつ」

思いっきり少年を指さしてそう叫んだ。

「んなベタなもんじゃねーよ。俺は死神じゃなく、門番だ」

「もんばん?」

「ああ、死んだ奴が行きつく先に門があってな。そいつが地獄か天国かに行く事を知らせにくるのさ。そっから先はアーサーの仕事だ」

「アーサーって?」

「そっちの世界では死神って言われてるやつらさ」

ふぅんと一瞬納得してしまったが、すぐに私は死んだのだと確信した。それにしても私が地獄行きなのはなんでだろう?門番に聞きたいが、こういう場合はえん魔様が決めることなので、えん魔様の所まで案内してもらった方がいいのかもしれない。

「ほら琴美、行くぞ!」

門番は手を差し出してきた。

「ねえ、門番。あんた下っ端なんでしょ?」

私はその手をパシッと払いのけた。

「俺はイレーネ様直属の幹部だぜ。下っ端じゃねーよ、ああ、イレーネっていうのはそっちでは神様ってことになるな」

「ふぅん。女の人なんだ」

そんな事を話しながら、私と門番は上へと続く階段を上って行った。そしてもうだいぶ上った所に大きな扉を見つけた。すると、門番は小さな手で大きな15メートルはあるであろう扉を、いとも簡単に開けてしまった。その扉の向こうに当然イレーネ様がいると思っていた私は、神様に会う緊張でごくりと唾を飲み込んでいた。でもそこにあったのは小さな机と、先生なんかが立っている教壇。私が驚いていると同時に、門番はチリンチリンと鈴を鳴らした。

「はいはーい!」

奥から出てきたのはえらい美形の大人の男性だった。こういうのを待ってたんだよ。最初に来てくれるのも、こんな口うるさい門番じゃなくてこの人ならよかったのに。男が教壇に立つと、手でそこの机に座るよう促してきた。

「んじゃな!頑張れよ!」

門番が私に挨拶すると、さっきの大きな扉から出て行こうとした。しかし、私はその手を止めていた。

「ちょっと待ってよ。名前くらい教えなさいよ」

自分でも少しびっくりしていたが、手が勝手にでていたのでしょうがない。

「お前、本当に覚えてないのか?」

「え?」

「・・・リオンだよ。じゃあな」

リオン?そんな名前聞いたことがない。でも、あいつ私を知ってる風だった。

「何をしている?座りなさい」

美形の男性はイラついた声でそう言った。私が恐る恐る机に座ると、男性は教鞭を取り出して、黒板をびしばし叩いた。

「えー、それでは今から転生の教えを行います。」

転生?

「あの、私地獄行きなんじゃ・・・ってそれも嫌ですけど」

「そうです。地獄に行ってもらいます。」

「じゃあなんで転生なんですか?また生まれ変われるってことですよね?」

私がそう言った次の瞬間、美形は深いため息をついた。

「人間が地獄は勝手にこういうもんだと思い込んでいるだけでしょ。本当の地獄とは現世にアリ!」

「じゃあ、私また人間に・・・地球に生まれるのね!」

「地球は地球でも、あなたがいた地球とはパラレルで違います。あなたが今から転生するのは魔物と妖怪の入り乱れた世界。もとあなたがいた世界よりずっと乱暴で危険な世界です」

一瞬で私は天国から地獄に引き下ろされた気分になった。転生できるのは魔物のいる世界?そんな嫌な世界に放り込まれるの?それじゃあまるで生き地獄だ。

「あの、なんで私地獄なんですか?いたって普通に生活していたはずですけど」

私の声は自分でも分かるほどに震えていた。

「・・・あなた小学生時代いじめられる側だったかいじめる側だったかどちらか覚えておいでですよね?」

「それは、どちらでもないです」

「嘘ですね。あなたのせいで死んだ人間がいることを、忘れてはなりませんよ」








琴美は基本美形好きです。私がモデルなので美人ではないという設定ですが、私はいじめは行っておりません。

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