第四話
「それでは、スカイマーシャルが携行する武器について説明する」
スカイマーシャルの訓練が始まって数日後、とうとう戦闘に関する訓練が始まった。
スカイマーシャルとして集められた隊員達は、元々SATに所属していたりして、基本的な戦闘技能は身に付いているため、座学を優先した結果だが、木山からすればようやくといった気持ちが拭えない。
「隠して携行することが困難な、89式小銃等が除かれているくらいで、銃器そのものはSAT等で使用されている物と変わりはない。
違うのは弾丸だ」
そう言って教官は訓練生達に弾丸を見せる。
「この弾丸は通常の弾丸に比べて、貫通力が落とされて作られている。
木山、なぜだか分かるか?」
「貫通力の高い弾丸を使用し機体に穴を空けてしまうと、機内の気圧に変化が生じ、飛行への障害や低気圧症の危険が発生してしまうからです」
座学で習った航空機の性質を思い出しながら答える。
「その通りだ。
では貫通力の低い弾丸を使用することによって生ずる交戦時の影響を……山口、答えてみろ」
「敵がボディアーマーを使用した場合の相対的な影響の増大、及び通常では弾丸が貫通していた遮蔽物の影響の増大が考えられます」
山口と呼ばれた訓練生も、スラスラと答えていく。
新人とはいえ、流石に日本の精鋭部隊から集められているだけのことはある。
「その通りだ。
次にその他の装備についてだが、まずはこのバッグだ。
民間人に扮する必要があるため、何種類か用意されているが、全てに共通しているのは中に防弾プレートが仕込まれていることだ」
このような防弾プレート入りのバックというのは、SP等も使用している。
「中には予備の拳銃と弾倉などが納められているが、最も重要な物はこれだ」
そう言って教官はトランシーバーのような物を取り出す。
「この通信機は集音機能に優れており、電源を入れれば周囲の音を自動で地上に発信する。
これによりスカイマーシャルが動けない状況でも、地上で状況の把握が容易になる。
さてと、装備の紹介はこれまでにして、射撃訓練に入る、右方向に視線を転じろ」
言われた通りに右を向くと、射撃レーンが目に入る。
ただし的の前に椅子に座ったマネキンが置いてあり、的は上の部分二十センチ程度しか見えない。
「あのマネキンはハイジャック犯の前の座席に座っている民間人だ。
始めの合図をしたら、三秒以内に民間人に当たらないように的に弾を当てろ。
では、木山から始め」
そう言って拳銃を渡してくる。
木山は射撃レーンに立つと、準備が整ったことを確認した教官が合図を出す。
合図と同時に木山は二発の弾丸を発射する。
銃を下ろし確認すると、マネキンを避けて見事に二発とも的に命中している。
「良し、次、小島」
教官は命中を確認すると、次の訓練生を指定する。
特に指示もなかったのに、木山が二発発射したことにはなにも言わない。
このように二発の弾丸を同じ部分に射撃することをブルタップと呼び、確実に目標を無力化するための基本技術だからだ。
木山の後に続く三人の訓練生も、同じように二発発射し、命中させていく。
このような訓練は、犯人が人質を盾にしていることを想定してSAT等でも行われているため、当然の結果といえる。
訓練は、まだ始まったばかりだ。