表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

特別なクリスマスソング ~絆~

作者: 琥月澪

もともと違うところでとある企画で縛りつきで書いたSS(ショートストーリー)になります。

言い訳になりますが、時間がなく、一日で作ったため見直していますが誤字脱字、前後の文の矛盾、名前のミス(ヒロインの結城紗愛を紗恵としてる可能性あり)などがあるかもしれません。

見にくい作品ですが目を通していただけたら光栄です。

 クリスマス。

 誰がそう名付けたのか知らないし知ろうとも思わない。知らない方がクリスマス事態を楽しめる気がするから。

 街を歩くとどこからか軽快なクリスマスソングが流れてきてそれを見見え感じて人々の心を和ませる。

 辺りを見れば全てがイルミネーションなどでキラキラと光る美しい世界を作り出し、人々の心を高揚させる。

 寒いけれど雪が降るとホワイトクリスマス。365分の1だけれどそんな運が、偶然があったって良いじゃないか。こんな日くらい寒さを忘れられる。

 そんなものなのだ、クリスマスってものは。

 その聖なる日は一般的にカップルの日、そう考えるのが普通だし街にはたくさんのカップルがいるのだから嫌でもそう考えてしまう。

 そう、クリスマス……。



「さむっ……」


 学校帰りの夜、絆有(きずなゆう)は吐く息交じりに呟いた。口から零れる白い息がゆっくりと形を失って消えてゆく。自分も、この季節が近づくと一緒に混ざって消えてしまいたい。

 マフラーに手袋、コートを着込んでも冬は寒い。

 今日は12月18日、クリスマス一週間前。

 クラスメイトは近づく冬休みを前に日に日にテンションが上がり、忘年会をやろうかとかお年玉がいくらもらえるだろうかなどと言ったいつまでも子供みたいに過ごしている。いや、高校生なら子供だしそれが普通なのかもしれない。

 そしてイベントとして忘れられないクリスマスも少しずつ、町が彩られるのを感じながら近づく。

 勝ち組の奴らはそれぞれクリスマスの過ごし方を決めたりプレゼントを買ったり。負け組の奴らは互いに励ましあって「また来年だ」何て言う。

 当たり前、普通、ノーマル、ナチュラル、そんなものだ。でもこの季節になると有のテンションは周りのテンションが上がるのと比例して下がってしまう。

 クリスマス、生まれて16年間誰かといたことがない。だがそれは負け組を意味しているわけでもない。


「……」


 夜空を見上げると星もクリスマスを待っているかのようにキラキラと光っている。それぞれが必死に存在を示そうと力一杯光っている。そんな中、1つだけ見つけた。


「はは、今の俺と一緒じゃん」


 光ろうと、頑張っているのに光りきれない。名前があるのかも分からない星を見つけた。


「俺と一緒じゃん」また呟いた。


 でも漏らすたびに切なくて悲しくて、そして辛い。拳を握りしめてもすぐ緩めてしまう。自然と漏れてしまいそうな嗚咽を奥歯を噛みしめながら堪えて、涙は流さない。

 右手の指の先に触れていた携帯を取り出してメールアドレスを見る。今年の春、高校入試合格後に買ってもらった携帯。でも……そこに形はない。あってほしいものは……無い。

 見つからない、記録もない。


「遅いんだ、もう……」


 携帯を再びポケットに直して歩みを進める。あってほしい名前、結城紗愛(ゆうきさえ)の名前がないことを確かめて―――――。


☆     ☆     ☆


 絆家と結城家はお隣さんで子供が生まれる前から仲良しだった。両家で旅行にだって行ったし招いて共にご飯を食べることも多かった。そのせいか子供が同じ年に生まれたことが運命に感じられた。これからは幼馴染の子供たちを見ていける、そう思って。

 そして2人を形だけの許嫁にした。それは強制ではなく子供が嫌がれば白紙と言う意味での許嫁。でも互いの名前に意味をつけた。例え結婚とかの形にならなくとも2人はいつまでも仲良くいてほしい、そう思って。

 そんな中、絆有と結城紗愛は生まれ育った。親の願い通り2人は仲良く一緒に遊び、見ているだけで癒される。

そして今からちょうど1年前、2人が中3の12月18日、有は紗愛に告白した。変な時期だったかもしれないが長く一緒にいたため分からなかった気持ちを整理するのに時間がかかったのだ。


『紗愛、長く一緒にいたから分からなかったけど……好きだ、付き合ってくれ』


 ストレートに気持ちを伝えた。心臓はうるさく鳴り響いていたし返事までの時間が長く感じられた。その返事に紗愛は、


『よろしくお願いします』


 と笑みを浮かべながら言った。

 その日から二人は恋人、カップルとなったのだ。

 有の心はもう張り裂けそうなほど高鳴っていた。好きな人に告白してそれを受け入れてくれた。初めての彼女が出来た。何よりすぐに訪れるクリスマスが楽しみでしょうがなかった。こんな気持ちは初めてだ。夢じゃないか自分の頬を何度も抓ったしその後何度も紗愛に「さっきの返事ホント?」と尋ねては「ホントだって!」と少し怒りながら返される。それがまた嬉しい。クリスマスまで後1週間、早く来ないかと思っていた。

 だが、すぐにそれは終わった。心の中のいろんなものが音を立てて崩れた。


――転校。


 紗愛の父親の仕事の都合で転校することになった。それは明後日。あまりにも突然で意味を理解出来なかった。転校、転校って……? 何度も繰り返し思っている内に紗愛は転校した。

 中3の時、同じクラスで最後右側の席に座っていた。転校後も紗愛が学校に来ないことを不思議に思っては実感する――転校したのだ、と付き合った、付き合っていたと言えるのか分からない期間はわずか2日にも満たない。

 クラスで別れの挨拶をしてすぐに転校先へ発ったため話すこともままならなかった。

 好きだったのに、付き合えたのに……。これからだと思えたもの。そしてクリスマスが来てほしくないものになった。いてしまうと紗恵を思い出してしまう。

 携帯に彼女の連絡先はない。当時互いに携帯を持っていなかったから。向こうの電話番号も変わったためこちらからかけることも出来ない。そして紗恵からかけてくることもなかった。


「本当に欲しいものなんか……手に入らないんだよ……」


 12月19日、今は授業中。ふと右側の席を見て言った。いつも有の右側は空席でそこに中3の頃の紗愛の姿を思い出し重ねる。また会いたい、そう思って。


「名前の意味もねぇじゃんか……」



 そうした思いの中クリスマスは刻一刻と近づいてきた。今年のクリスマスも明日、やってくる。誰かと一緒に過ごす予定はない。それはもちろん結城紗愛でもない。

 今までのクリスマス、記憶のないころから絆家と結城家一緒にお祝いをしていた。朝、枕元にプレゼントがあってそれを有と紗愛は見せ合って笑みを浮かべた。サンタさんの存在を信じていた幼き頃、最初にサンタさんの存在が親だと気付いたのは紗愛だった。


『知ってる? サンタさんってお父さんとお母さんなんだよ?』『え?』『夜、絶対サンタさんを見るんだ~って思って起きてたの。するとね、お父さんが枕にプレゼントを置いてお母さんは部屋のドアのところで笑うの』『そんなのウソだよ』『じゃぁ有も起きててよ』『うん』


 そして有はサンタさんの存在を知った。小学6年生の頃だった。

 それから中1、中2と一つ大人になってもクリスマスは一緒だった。中1の時は家族みんなで仲良くパーティーゲームをして、中2の時は雪が降った。街が白いキラキラとした世界に包まれ新しい世界を作る。クリスマスソングとイルミネーション、そして加わった雪は街の人々皆を幸せにした。この1日だけで疲れがなくなってしまいそうな、そんな気さえした。

 そしてこの日、中2の紗愛は一曲歌を唄った。その歌は拙くて下手くそで、吹き出しそうになったが有の心の中に深く深く刻み込まれた。今も忘れることのない当時の紗愛の声、リズム、すぐに蘇る。唄い終わって有は拍手した。

『どうだった?』照れながら訊くこの表情は単純に可愛いだった。もしかしたらこれが好きって感情のきっかけだったのかもしれない。

 そして告白してすぐに終わりを告げた。



 12月25日クリスマス。

 ついにこの日が訪れた。1週間前から準備されてきた街は朝から盛大に盛り上がり、ツリーも広場に飾られている。朝だというのにすでに街は人で溢れ、今すでに今年のクリスマス一番の盛り上がりなのではないかと錯覚してしまう。でもまだ、まだ始まったばかり。

 高校はこの日が終業式で昼までの学校生活。無駄に長い指揮をして通知表をもらい終わり。そう、終わり。

 この日、昼までと言うことで急遽友達にカラオケを誘われた。全員男で華やかさのかけらもないが有はついていった。どうせ帰ってもすることはない。互いを励ます、正直残念なものだったが有難かった。クリスマスを友達と過ごすことは今までなかったし何より紗愛のことを少しの間だけ忘れられた。

 なぜ、こんなに有の心は暗いのに空は青いのだろうか……。

 カラオケを出て皆と別れたころにはもう7時を回っていた。イルミネーションは輝き、ツリーは力強く存在感を表す。

 当然、そこにいるのはカップル。男一人防寒バッチリでいるようなところではない。

 寂しい、それしかなかった。いつか自分も向こう側にいけるのだろうか。しかしそう思うたびに名前の意味が思い出される。紗愛を忘れられない。


「今何してんだろうな……」


 夜空にそっと呟く。場違い、そう思って足を速めた。早く帰って早く寝ようと考えながら。どこからか聴こえてくる定番のクリスマスソングを聴きながら涙を浮かべる。すでに家の前まで来たんだ。少しくらい感情に任せよう。


「もう、要らないものばかりだ……」


 そんな時だった、それが起こったのは。

 雪が少しずつ振ってきて街を包み込む。ホワイトクリスマスがやってきた。

 だが俺には関係ない。家の柵を開けた。


「世界のどこに居たって私達は結ばれている♪」

 それは、いつか聞いたことのある声だった。


「どんなに離れていてもその間には絆が有る♪」

 それは、いつか聞いたことのあるメロディー。


「お互いさえあれば心は通じ合っている♪」

 それは、いつか聞いたことのある拙い歌だった。


 有は思わず振り返った。定番のクリスマスソングに混ざって透き通る声が聞こえる。


「……さ、紗愛……?」

「久しぶり」

「ど、どうして……」

「……知ってる? 有……この世界はね広くて狭いんだよ? だから絆さえ有ればつながってる、また会えるんだよ」


 久しぶりに会った紗愛は転校先の制服に身を包んでいた。少し見ないだけで大人っぽくなった印象。


 止まっていた、中3から止まっていた時計が動き始めた。



……名前の意味。

絆有と結城紗愛に込められた名前の意味。


―――――絆さえ有れば愛は結ばれる―――――


end

SSのため、キャラの容姿などは詳しく書いておりません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ