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世界の裏の魔法則  作者: 初日
第五章 異端の少女
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「ん?」


 悠夜がいつものように目覚めると、腹のあたりに柔らかいものを感じた。

 布団をどけてみると、濃い金髪の少女が悠夜に抱き着いた状態で安らかな寝息をたてていた。


「ああ、梓か」


 そういえば、昨夜は梓が自分部屋へ来たのだったか。


「梓、朝だぞ」

「……ん……んぅ……」


 軽く肩を揺さぶると梓は眠気眼をこすりながら起き上がる。


「朝の鍛錬の話覚えてるか?」


 梓が普通の魔法を上手く扱うことができないのは、普通の術式が高すぎる魔力密度に耐えきれないのが原因だ。

 そのため悠夜は、普通の術式を展開するときに魔力密度をその術式が耐えられるギリギリのところまで抑えている。

 梓にもその技術を教える約束をしている。


「……うん、覚えてる」


 梓は眠そうにしながらもコクリと頷く。

 その後、まだどこに何があるかよく覚えていない梓を洗面所に連れて行き、丁度一葉を起こしにいくところだった雪菜に、一葉の服を借りてきてもらって梓に着替えさせる。


 そして、一人増えた風霧家全員で川の畔へ移動。


「じゃあ、まずはこの術式を展開してくれ」

「わかった」


 四人がいつもの魔力密度を上昇させる鍛錬を行う傍で、梓にはその逆の魔力密度を低下させる術式のレクチャーを開始した。




「よし、そのまま質量を維持しつつ体積だけを増幅させるんだ」

「こ、こうか?」

「そう、その調子」


 梓はなかなか筋が良く、すぐにコツを掴み始めた。

 もし、魔力密度が高過ぎなければ、梓は普通の狩人としては非常に優秀な使い手になっただろう。


「よし!今の状態を維持だ!」

「お、おう!」


 だが、今はそんなことを気にしても仕方がない。

 まずは梓に、普通の魔法をきちんと使えるようにしてやらなければ。


「今梓の維持している魔力密度は、普通の術式が耐えられるギリギリのところだ。しっかり覚えとけよ」

「うん……なぁ悠夜。これでオレにも普通の魔法が使えるようになるのか?」


 梓はどこか不安そうに悠夜を見つめる。


「ああ、早速試してみよう」


 今の梓なら、その不安もすぐに拭えるはずだ。


「そういえば、梓は今までどんな魔法を習得しようとしてたんだ?」

「一応全部の術式は、習得できないか試してみたんだけど、特に強化と雷に力入れてた……結局習得できなかったけど……」

「それも今日で終わりだ」


 俯き気味になってしまった梓の頭を撫でて励まし、魔法発動の準備をする。

 まずは雷魔法からだ。

 梓が近くに木に向けて突き出した手に、悠夜はそっと自分の手を添える。


「いいか、細かい制御とかは考えなくていい、もし魔法が暴発なんかを起こしそうになったら僕が止めるから、梓は魔法の発動だけに集中しろ。焦る必要もないから初めはゆっくりでいい」

「うん、わかった」


 梓は緊張しながらもしっかりと頷く。

 そして、魔力密度を下げる術式を組み込んだ雷魔法がゆっくりと、しかし着実に展開していく。

 そして完成。

 後は発動するだけの状態となる。

 触れた手は微かに震えており、これまでにない緊張が伝わってきた。


「大丈夫だよ」


 しかしそう言って、添えた手に少し力を入れると震えもすぐに治まる。

 梓は一度深呼吸をすると、意を決したように標的に定めた一本の木を見据えて魔法を発動させた。


バチバチバチバチバチ!!!


 梓の手から白い光と共に強力な雷撃が放たれ標的にぶつかる。


 川の畔に、梓の雷魔法を受けた木がゆっくりと地面に倒れる音が響いた。




「よくやったな」


 呆然とする梓の頭に手を置き軽く撫でてやると、梓が感極まったように抱き着いてきた。


「……うっ……悠夜っ……オレ……!」


 梓が泣きじゃくっていると、今の雷魔法を見た四人が寄ってきた。


「凄いじゃない!今の雷魔法かなりの威力だったわよ!」

「うん!初めて使ったとは思えないよ!」


 一葉と雪菜が賞賛の言葉を掛ける。

 梓は一瞬 ビクッ となり悠夜の後ろに隠れようとするが、ギリギリのところで踏み止まり


「…………うん、ありがとう」


 涙を拭い、ぎこちないながらも笑みを浮かべて礼を言った。


「(この調子なら、もう少しすれば二人とも仲良くなれそうだな)」


 梓も悠夜以外の風霧家の人達に歩み寄ろうと努力しているのだ。

 悠夜には、その姿がとても微笑ましく見えた。



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