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世界の裏の魔法則  作者: 初日
第三章 初仕事
24/45

22

「(来たか)」


 農場の近くの草むらに身を潜めてしばらくたったとき、悠夜は討伐対象の鼠のものと思われる魔力が複数近付いて来るのを感じ取った。じきに他の狩人達も気が付くだろう。


「来たぞ」

「まだ仕掛けるな、もっと引き付けてからだ」


 予想通りところどころで小声が上がる。


 そして、鼠の群れが農場の周りを囲うように立てられた簡素な柵のすぐ近くまで来たとき


「撃て!」


 橘が攻撃開始の合図を出した。


 それと同時にあちこちで術式が展開し、火、水、氷、雷、風、土の六つの種類の属性魔法が、鼠の群れに向かって放たれ辺りを照らす。

 幾つもの魔法を浴びせられ、一斉に逃げ出す鼠の群れ。


「強化魔法部隊、誘導開始!」

「行くか!」

「おっしゃ!」


 光夜と斉藤が飛び出し、悠夜と鳴宮、他の強化魔法使いもそれに続く。

 悠夜達の役割は、鼠の群れを左右から挟むようにして退路を限定することだ。

 悠夜のように、強化に加え遠距離攻撃も可能な者は誘導を行いながら攻撃にも参加する。

 他の狩人達より、遙かに優れた魔力感度を持つ悠夜には、幻影を作り出している本体の位置が魔力の流れから分かっているため、目立たないよう他の狩人達の攻撃に自分の攻撃を紛れさせながら、次々と鼠を屠っていく。


 しかし、悠夜以外の狩人達は幻影に惑わされて、あまり攻撃を当てることができず、多くの鼠が森の中へと逃げ込んでしまい、悠夜達は夜の森へと踏み込むこととなる。




「火属性の魔法が使える者は松明に火を着けろ」


 橘の指示に従い、あちこちで松明に火が灯る。悠夜と鳴宮も用意していた松明に高野の魔法で火を着けて貰う。


「よし、行くぞ!」


 そして一同は追撃を開始する。


 だが、平地でもあまり攻撃が当たらなかったのだから、木々が邪魔な森の中でさらに命中率が下がった状態では満足に攻撃を当てることなどできず、結局森の深い場所にあたるところまで、後少しとなってしまった。


「これ以上踏み込むのは危険だ。討伐作戦はここまでで切り上げる」


 橘が撤収を告げた。


 悠夜もこのあたりが引き際だと思った。

 階級制限のないこの依頼には、実力の低い者もいる。もし、強力な魔獣が出てくれば、対処できる可能性は低い。


 しかし、ここで予期せぬ事態が発生する。


「おい!あの鼠もう幻影を出せないみたいだぞ!」


 一人の狩人が声を上げる。

 どうやら鼠は、幻影を作り出すための魔力が底を突いたようだ。


「本当か!」

「よっしゃ!これで仕留められる!」

「待て!引くと言っただろう!」


 本来なら喜ぶべきことだが、この状況では最悪だ。

 攻撃が全然当たらず、鬱憤の溜まっていた狩人達が、橘の静止を無視して突っ走る。

 すでに危険地帯がすぐ近くにあるのだが、先ほどから雑魚を追い回してばかりだった彼らは、危機感が麻痺しかけていた。


「これ以上、この近辺に留まるのはまずいだろう」


 悠夜は、自分の悪い予感が当たってしまったことに溜息を漏らす。

 さらに頭の痛いことに、突っ走って行った狩人達の中には鳴宮も入っていた。


 ここは無茶をするころではない。悠夜も無茶をすることはあるが、時と場合は考える。この依頼はやり直しが効くのだから、欲をかくのはやめておくべきだ。


「おい悠夜、どうするよ」


 突っ走らなかった光夜が、悠夜の方へ向かって来た。


「ほっとくわけにも行かないだろ。橘さんはみんなを止めるの諦めて、早期に決着つけることにしたみたいだし」


 悠夜の視線の先では、橘が戦闘に加わっていた。


「くそ、仕方ねぇ」


 悠夜と光夜も戦闘に加わろうとしたとき、悠夜の魔力感度に鼠の魔力より、かなり大きな魔力を持つ何かが引っ掛かった。


「父さん、何か来る。今すぐ全員引かせた方が― いや、もう遅いか」

「なんだと、そいつは―」

「ぎゃあああああああああああ!!」


 光夜が言い終わるより早く前方で、一人の悲鳴が上がった。

 そしてそれを合図に、前方で次々と悲鳴や怒号が飛び交う。


「まずいな、少し暴れる必要があるかもしれない」


 ついさっき感じた魔力は、一体だけだが大きさは、以前遭遇した悪鬼より上だ。


「おい、お前」

「大丈夫、使うのはあくまで既存の魔法に留めておくさ」


 撤収のことは光夜に任せ、悠夜は悲鳴と怒号のする方へ走り出した。




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