nice to meet youとはいかないらしい
孤独ってかっこいいよね、
そう思わないと生きるのが辛い今日この頃
「お前、友達いないだろ?」
「う゛……」
スーツ姿が何故かエロい担任の容赦ない直球に俺は言葉を失った。
初夏だというのに爽やかな風が冷や汗を撫で、背筋に悪寒が走る。
今までの人生で似たような言葉は散々言われてきたが、ここまでのドストレートをきめてくる者はなかった……。
女教師は容赦ないぜ、まったくよ。
しかも、お決まりの『何か困ったこととか、相談したいこととかないか?』を省いてきやがった。
心のダムが決壊しそうだ。チクショウめ!
「む、まぁ、分かってはいたが、どうやら本当にいないようだな……」
担任の言葉が一言一言どころか、一文字の母音と子音にわかれて俺の心に突き刺さる。視認できるのならば地獄の剣山なみに言葉の欠片が突き刺さった俺の心が見えるだろう。
「ま!安心しろ!これからは私が協力してやる」
「はぁ……、ありがとうございます」
この言葉も聞き飽きた。しかし、結局彼らは何の手助けもしてくれない。友達なんて欲しいとは思わないからその方がいいけどな。周りに合わせて自分に制限をかけるなんて馬鹿げてる!そう思わないか?友達がいなくたって何も不自由はない。ちょっと寂しいだけ……。
「よし、じゃあ行くぞ!」
「はぁ。……って、は?どこに?」
「秘密だ」
ニヤッて感じで担任が笑う。これはアレだ。男子小学生が面白い悪戯を思いついた時の顔だ。うぅ、テンションレベルがガクッと落ちた。落ちるテンションもないけど(笑)
本館を抜け、部室棟を横切り、更に少し進むと古臭い木造校舎が鎮座していた。
なんかでそうな雰囲気を醸し出している。何が、とは言わない。
「ここはな、旧部室棟なんだ。数年前まではいくつかの部活動で使用していたが今じゃ全くだ。見ての通り古いからな。新しい部室棟を造ろうってことになったんだ。しかし、ここまで老朽化が急激に進んだのは新部室棟が出来てからのように私は思う……。」
イイハナシダナー
なんか思い出でもあるのだろうか?先生の年を考えるとーー
「ーー関口、言葉を慎め」
「は、はひっ」
何で分かったのだろう。
「くだらんことを考えていないで着いてこい」
慌ててエロい女教師のケツを追っかけていくとーーごめんなさいすみませんもうしませんギブギブプリーズヘルプミー!
げに恐ろしきは女の読心術。
先生の場合は独身じゅ……。
20分後、
「着いたぞ」
「……先生、学校内で生徒に暴力って……新聞に載ります……よ?」
「お前に誰かに告げ口する程度の社交性が存在していればな」
「しどいっ!」
誰かに告げ口しなきゃ助からないなんて、当に前門の虎、後門の狼じゃないか!
「さっさと入れ!」
ゲシッと背中を蹴られ、前のめりに部室に押し込まれた。
まさかこのエロ教師!誰も来ないことをいいことに抵抗できない生徒(俺)を美味しくいただく気かっ!?それは……!
……え、良くね?
上目遣い(超かわいいキャピッ)で担任を見つめると視殺された。
「……、いつまでそこでうだうだやっているのかしら」
「……幽霊っ!?」
バッと振り向くと幽霊にしては健康的な白さのシミ一つない(結構遠いのであってもわからないけど)肌を外気に晒し、長い黒髪を後ろで一つに縛っている美少女が片手に文庫本を持って立っていた。髪型は所謂、ぽにーてーる、ってやつだ。
そして究極の脚フェチマスターの俺を唸らせる一品だった。もし俺が美脚んぼの美脚倶楽部のオーナーなら板前を呼べ!と唸っているだろう。
とにかくキレイな脚だ。脚フェチサイコー!
いや、後ろ姿フェチでもあるんだ。後ろ姿って良くない?万が一にも本人と目があうことないんだぜ?安心して視姦できる。うなじとか……。
ふひ……。
コホン、自重自重。
「で、ヒイラギ先生?そろそろそこにいるフナムシを連れてきた訳を聞かせていただけませんか?」
フ…
クチ悪!顔はいいのに、クチ悪!
むしろ顔がいいからクチ悪?
あれ?とにかく美人にそんなこと言われると大分傷つく。
ブサイクに言われたら更に傷つくなきっと……んで、どっちつかずのヤツに言われてもなんだかんだで傷つく。なんだ、結局傷つくんじゃん!
アハハ、アハハ、アハハ、はぁ。
「ああ、コイツはな、新しい部員だ」
「せんせー、フナ……なんちゃらいう悪口に対する教育的指導はいずこへ?」
「私では手に負えん。教育委員会に訴えろ」
この女、出来ないと思って!まぁ、いいや、話が続かないから先を促そう。誰かが大人にならなくちゃいけないんだ。別に届け出る勇気も更に反論する勇気もないからじゃないよ?ほんとだよ?修二は強い子!
「……コホン、先生、新しい部員って……何?」
「共に部活動を楽しむために新しくグループに参加したメンバーのことだ」
知ってるよ!
「ヒイラギ先生、それなら彼は新入部員ではありませんね。彼といて苛立つことはあっても、共に楽しむ?フッ、有り得ない」
美少女のフッ、は馬鹿にしたフッ、ではなく、自然と漏れ出したようなフッ、であったため、それが本音なんだということがうかがえた。
フッ、分かっていたさ……。人は涙の数だけ強くなれるんだ……。がんばろう。
「分かったらそこに転がる不燃物を拾って出て行ってもらえませんか?」
……俺、寛容なほうよ?大抵のことは笑って許せるヤツだよ?でもさ?コレはあまりにも理不尽じゃない?僕が何したってのさ。先生に付いてきただけじゃないか。キレていいよね?ね?
よし、プツン
「お前さぁ、調子にのり過ぎじゃねぇか?何様だコラ!初対面の相手に随分とーー
「うるさいわね」
ーーすみませんでした」
女こえええええぇ!
「雫、これは決定事項だ」
「……。」
「とりあえず私は本館に戻る。早めに仲良くなれよ。じゃ」
言うと先生は俺を一瞥し、廊下(老化)へと進んでいった。
気まずい……。非常に気まずい……。
多分チキンハート関口じゃなくても耐えられねぇよこの空気。こんなバリバリのHARDこえてEXTRA MODEに『しゅうじ level 1』を放り込むなよ。
「単に悪口を言う女がツンデレだと勘違いするヤツが多いな。本物のツンデレはーー」
件の美少女、柊 雫というらしい、と反対の位置、すなわち教室のドアの前で体育座りをしてツンデレについて本気だして考えていると柊雫が白けた視線を送ってきた。え?聞こえた?
「……今日は厄日ね。次から次へと……」
言って立ち上がると柊雫は何故か設置されている放送危機のボタンを一つ押した。
途端に背筋が凍えるような声が降ってきた。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアア」
遠くから男子と女子のものと思われる悲鳴がこだましている。
「……ふ~ん、意外ね」
「何が?」
「初めてコレ聞いた人は絶対に悲鳴あげてたのに。取り壊しもコレで追い払ったわ」
「……そっか。まぁ、人間孤独より怖いモノはナシってことかな」
うんうんと首を縦に振る。勿論僕が。
だって柊雫に言わせると
「何悟った顔をしているの?気持ち悪い」
とのことだ。
「たまにいるのよね、ああいう馬鹿が。『旧部室棟に幽霊!?』なんて号外で新聞部が出した後からかしら。肝試しのつもりみたいだけれど、あまりにもうるさいうえに見たくもないイチャイチャを見せつけられて……。吐き気がするわ」
思い出したのか肩をワナワナと震わせて憤懣やるせない!と表現していた。
無表情なヤツだと思ったらちゃんと感情を顔に出せるんじゃん!
怒りのベクトルにのみ。
……それってただの無愛想。
「あ、ああ、それでこんな仕掛けを……」
「えぇ、だけどあなたに効かないようじゃ使い物にならないわね。何か別の物に変えようかしら」
シンキングタイムに入った柊雫を見ていると、ポケットの中の携帯が震え始めた。
画面には非通知と記されている。
「……もしもし?」
俺のメアド及び電話番号を知っている、というか友達が皆無なので絶対に同年代ではない。これは断言できる!
となると、架空請求かな……。ヤダな。
「もしもし」「はいすみませんでも俺そういうサイトとか携帯で見ないんで!家の大画面で見る主義なんで!だから違います!」
「ほう、そういうサイトとはどういうサイトなんだ?よもや16歳の身で18歳未満なんちゃらのことじゃあないよなぁ?」
「せんせ……?」
「なんだ」
担任だった。
「何故に俺の電話番号を」
「書類、提出しただろ?アレを見た」
「そ、そっスか。で、何の用ですか?」
「あぁ、お前に朗報だ」
「マジですか」
「あぁ」
「なんスかそれ」
「雫についてだ」
「へ……?」
「どうした?」
「いや……何でもないです。続けてください」
「む?うむ、雫はな、普段周りに超無関心なやつだ」
「見れば分かります」
「話のコシをおるな。で、そんなあの子がアソコまで暴言を吐くなんて稀なことなんだ。お前に何か特別なものを見いだしたんじゃないか?」
「……」
「ま、どっちに転ぶか、精々楽しませてくれたまへ。では。む、あ、そうだ。そこの部の名前をまだ言ってなかったな」
「あ、そうすね」
「始末部だ。じゃな!」
なんじゃそりゃ
主人公はツッコミ気質になる予定です。