第5話:妖精王の試練と、世界を統べる魔導師
1. 暴走する力の痕跡
リリアンが北方荒廃地帯に入ると、周囲の魔力の密度が一変した。
大地は白く凍り付き、空には常時、青白い雷光が渦巻いている。これは、四聖獣・白虎が持つ「破壊と加速」の力が制御不能となり、領域全体に影響を与えている証拠だった。
リリアンは『鑑定』スキルで環境を解析する。
特性:魔力位相の乱れ(極大)、空間の不安定化 危険度:絶大(現代魔導師の魔力は即座に乱され暴発する危険あり)
(現代魔術では、ここで魔法を使うことすらできないわね。魔力の安定性を追求した古代魔術の私だからこそ、この領域に進める)
リリアンは、乱れた魔力を自身の体内で完璧に濾過し、魔術の発動に備えた。
白虎の力の中心部へ進む途中、彼女は突如、空間の歪みの中に、圧倒的な自然の魔力を感じ取った。それは、白虎の荒々しい魔力とは全く違う、純粋で、生命力に満ちた、王者の魔力だった。
2. 異界の王との遭遇
リリアンは、歪んだ空間を古代魔術で安定させ、その奥深くへと足を踏み入れた。
そこにいたのは、白いローブを纏い、黄金の瞳を持つ、一人の青年だった。彼の周囲には、数えきれないほどの光の粒子が舞い、その美しさは人間のものではない。しかし、その肩には、白虎の放った雷光によってつけられた深々とした傷があった。
『鑑定』が発動する。
名称:シエル・エリュシオン 種別:妖精王(世界樹の末裔) 特性:生命魔術の極致、自然界の支配、魔力の純粋化 状態:重度の魔力損傷
「何者だ。この混沌の地に足を踏み入れる人間など、白虎の召喚者たち以外にいるはずがない」
妖精王シエルは、リリアンに鋭い警戒心を向けた。
「旅の魔導師、リリアン。私は、暴走する白虎を止めに来た」
「止める? 傲慢な人間よ。白虎の力は、もはやお前たちの手の届く領域ではない。お前も、あの愚かな『聖女』とやらの仲間か」
シエルは、リリアンが発する魔力に、現代魔術の不純な痕跡がないことを感じ取りながらも、人間に対する不信感を隠さなかった。
3. 古代魔術の証明
リリアンは、弁解するよりも、力を示す方が早いと判断した。
「私を追放したのは、その愚かな王族よ。彼らへの復讐は、白虎を止めてからで十分だ」
リリアンは、シエルの傷と、彼が守っている空間の結界を『鑑定』し、瞬時に解析した。彼の傷は、ただの雷ではなく、魔力位相を破壊する白虎特有の攻撃によるものだった。現代の治癒魔術では修復不可能だ。
リリアンは、無詠唱で特殊な魔法陣を起動した。それは、古代魔導書に記された、『純粋化と再生』の魔術。魔力の流れを完全にリセットし、あるべき状態へと修復する、次元魔術に近い高難度な魔法だった。
リリアンは、シエルの傷にその魔力をそっと流し込んだ。
一瞬。
シエルの傷は、まるで時間が巻き戻ったかのように塞がり、周囲を舞う光の粒子が、彼に魔力を注ぎ始めた。
シエルは、驚愕に目を見開いた。
「この魔術は……! まるで、世界の理そのものを書き換えるような、古代の叡智……。お前は、人間に伝わる劣化魔術ではない、真の力を扱うのか」
妖精王の硬い表情が、初めて緩んだ。
4. 妖精王の決断と同盟
傷を完治させたシエルは、リリアンの前に跪いた。
「失礼した、リリアン。お前の力は、この世界のあらゆる魔術師の常識を超えている。我々、妖精族が長きにわたり守り継いできた叡智に匹敵する、いや、それを凌駕する安定性だ」
シエルは立ち上がり、リリアンに協力することを申し出た。
「白虎の暴走は、北の『神殿の塔』で強行された召喚儀式が原因だ。あの場所には、白虎の力の供給源となった古代の魔導具がある。それを破壊しなければ、白虎は止まらない。そして、愚かな召喚者たち、偽聖女イザベラと王子アルベルトは、今もそこにいる」
「古代の魔導具……」リリアンは、自身の『鑑定』スキルと知識が活かせる状況に、静かに笑みを浮かべた。
シエルは続けた。「私も同行する。白虎の力は、自然界のエネルギーをも歪める。お前の安定した古代魔術と、私の自然魔力の制御があれば、白虎の力を鎮められる可能性がある」
リリアンは、最強の知識と力を手に入れただけでなく、世界を知る王者の同盟者を得た。
「感謝するわ、シエル。さあ、行きましょう。私を追放した愚か者たちに、私がどれほどの力を持っているか、見せてあげる番だ」
リリアンと妖精王シエルは、白虎の雷光が激しく降り注ぐ、北方の『神殿の塔』へと向かって、歩みを進めた。その先に待つのは、傲慢な元婚約者たちと、世界を揺るがす最終決戦の幕開けだ。
第5話、いかがでしたか!ついに新キャラ、妖精王シエルが登場です!
白虎の暴走で荒れ果てた超危険な領域で、まさかの王族との遭遇! しかも、シエル様、いきなり白虎にやられて負傷中。
でも、そこは我らがリリアンちゃん! 現代魔術じゃ治せない傷を、**古代魔術の「純粋化と再生」**で一瞬で完治させちゃいました! シエル様もびっくり、人類の魔術を超越したリリアンちゃんの力に、すぐさま心酔しちゃいましたね。
これでリリアンちゃんのパーティーは、「超チート古代魔導師」と「世界を知る妖精王」という最強タッグに!
さあ、次話はいよいよクライマックスです! 暴走する白虎がいる『神殿の塔』で、傲慢なアルベルト王子と偽聖女イザベラが待ち受けています! 彼らがリリアンを「役立たず」と追放した代償を、世界と妖精王に見せつける最高の「ざまぁ」展開にご期待ください!
続きもお楽しみに!




