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『見捨てられた聖女は魔導師として世界を救う』  作者: ダッチショック
見捨てられた聖女は魔導師として世界を救う

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第2話:一年の猛特訓と、王子の失策

1. 時は光速で過ぎて

辺境の魔導工房に籠もってから、一年の月日が流れた。


王都での優雅な生活とはかけ離れた、リリアンの日常は過酷な修行そのものだった。しかし、その成長速度は常軌を逸していた。


古代魔導師ゼノンの残した工房は、まさに魔術の理想郷だった。無限に魔力を供給する魔力炉、最適な魔法陣を自動生成する壁面、そして魔術の威力を正確に計測する実験空間。


リリアンは、己の固有スキルを最大限に活用した。


『鑑定』スキルで魔法陣の構造を瞬時に解析し、効率の悪い部分を特定する。次に『古代語翻訳』スキルを使い、古代魔導書に記された理論と照らし合わせ、魔力経路の最適解を導き出す。


この超効率的な学習法により、たった三ヶ月で、リリアンは現代の宮廷魔導師が一生をかけても到達できない、緻密な魔力制御技術を習得した。


「現代魔術は、いかに大量の魔力を叩きつけるかしか考えていない。でも、古代魔術は、一滴の魔力をいかに純粋なエネルギーに変換するか、という芸術ね」


リリアンの魔力総量こそ「平凡」のままだったが、その質と制御力は、もはや別次元に達していた。


2. 失われた次元魔術

リリアンが次に挑戦したのは、現代では「不可能」とされ、理論すら失われた次元魔術だった。


古代魔導書に記されていたのは、空間を歪曲し、別の次元に物品を収納する『次元収納ディメンション・ストレージ』。


現代の魔導師が、物品を収納するために高価な魔導具を必要とする中、リリアンは自らの魔力のみでこれを実現しようとした。


「魔力経路を極限まで精密化し、位相を安定させる……」


繊細な魔力操作の末、リリアンの手のひらに小さな空間の亀裂が生じた。それはすぐに安定し、まるでポケットのような状態になる。彼女は試しに、工房にあった巨大な岩を収納してみた。


岩は音もなく消え、空間の亀裂が閉じる。


「成功……!」


リリアンは、古代魔術の応用により、魔力さえあれば無限に物を持ち運べる体を手に入れた。食料、水、そして工房の重要な魔導具までも、これでどこへでも持ち運べる。


追放時の、たった一枚の金貨の屈辱は、もう二度と味わわない。


3. 極光雷炎の創造

そして、リリアンは修行の集大成として、古代魔術の奥義に挑んだ。それは、複数の異なる属性の魔術を統合し、単一の魔術ではありえない威力を生み出す複合属性魔術。


リリアンが選んだのは、高熱を生む炎と、収束と加速に優れた雷の統合だった。


工房の試験空間で、リリアンは無詠唱で二つの魔法陣を同時に展開した。片方は赤熱する炎、もう片方は青白い稲妻。そして、二つを衝突させずに、魔力制御だけで一つのエネルギー体へと融合させる。


「古代魔術、極光雷炎オーロラ・サンダーフレイム


リリアンの手から放たれたのは、青いオーロラのような光を纏い、凄まじい轟音を立てる炎の塊だった。


それは、熱量と速度、破壊力を兼ね備えた、現代魔術の常識を遥かに超えた代物だった。試験空間の標的として設置されていた、厚さ数十メートルの特殊合金の壁が一瞬で蒸発し、工房全体が激しく揺れた。


(これなら、王都の精鋭騎士団全員が放つ攻撃魔法を、一人で上回れる……!)


リリアンの瞳には、もはや追放された少女の影はない。そこにあるのは、圧倒的な力を手に入れた、孤高の魔導師の冷徹な輝きだった。


4. 王都の惨状と驕れる王子

その頃、リリアンを追放した王都は、深刻な問題に直面していた。


真の聖女と称賛されたイザベラは、強力な治癒能力を持っていたが、攻撃能力は平凡。その上、精神的に不安定で、王子の言葉に依存しがちだった。


「アルベルト様、魔物の群れが……治癒だけでは間に合いません!」


「うるさい! イザベラには聖なる力がある。無能なリリアンを追放したことで、王国は清められたはずだ!」


第一王子アルベルトは、魔物の活動域が拡大している状況に対し、イザベラの治癒力で切り抜けられると過信していた。彼の傲慢さは変わらないどころか、リリアンを追放した自分の判断を正当化するため、さらに増幅していた。


しかし、王都を襲った強力な魔物『ロック・イーター』を前に、イザベラの治癒魔法は対処療法にしかならない。宮廷魔導師たちが放つ旧式の攻撃魔法は、岩肌を持つ魔物には効果が薄く、討伐は難航していた。


アルベルトは、失策続きで疲弊していく騎士団と、焦燥感を募らせる民衆を前に、苛立ちを隠せない。


「くそっ、なぜだ! なぜ、この国の最強の戦力である私が、こんな雑魚に手こずるのだ!」


彼が、かつて追放したリリアンの存在など、思い出すことはない。


5. 外の世界へ

修行を終えたリリアンは、工房の中央で静かに深呼吸をした。体には、強大な魔力が満ちている。


「これで、準備は完了よ」


リリアンは、次元収納を使い、工房全体を空っぽにした。誰も知らない知識と、圧倒的な力が、手のひらの中にある。


(あなたたちが、私を評価しなかった。その代償は、あなたたちがこれから直面する危機で、嫌というほど味わってもらうわ)


リリアンが向かうのは、王都の勢力が及ばない、さらに広大な世界。真の力を試す場所だ。


辺境の廃墟を出たリリアンの背中には、極光のような力強い輝きがあった。

第2話、お読みいただきありがとうございます!どうでしたか、今回の盛り上がりは!


リリアンちゃんのチート能力が炸裂しましたね! たった一年で、普通の魔導師が一生かかっても無理な古代魔術をマスターしちゃいました。特に『次元収納』は、これでどこでも最強の装備を持ち運べるようになったわけで、超便利チート確定です!


そして、集大成のオリジナル複合魔法『極光雷炎』! もう名前からして強そう! 王都で苦戦している王子なんか、リリアンの一撃で蒸発しそうですね(笑)。


一方、追放した王都は相変わらずのザマで。傲慢なアルベルト王子と、回復しかできない偽聖女。これから魔物が増えて、どうにもならなくなって、そこでリリアンの力が必要になる……という展開を期待してしまいますね!


さあ、力を手に入れたリリアンがいよいよ外の世界へ。次話も、ワクワクする展開をお届けできるように頑張ります!

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