第1話:辺境の廃墟と、真の才能
1. 荒野への旅立ち
王都を追放されてから三日が経過した。リリアンは、わずかな荷物と王族から押し付けられた金貨一枚を頼りに、ひたすら南西の荒野を目指して歩いていた。
足取りは重い。聖女として王宮で過ごした生活は、体力とは無縁だった。しかし、リリアンには確固たる目的があった。
「ここなら、誰も来ない。邪魔も入らない」
目指す場所は、地図にも載らない辺境の廃墟。かつて、古代の偉大な魔導師が隠れ住んでいたとされる場所だ。この場所の存在を知っているのは、リリアンが転生時に得た固有スキル『古代語翻訳』で読み解いた、図書館の片隅に眠っていた古文書のおかげだった。
追放された夜、リリアンは一人静かに決意した。
(私には、治癒の力はない。だが、魔力総量は平凡でも、魔術の構造を理解する力は前世の知識のおかげで異常に高い)
リリアンが注目したのは、もう一つの固有スキル『鑑定』の真の能力だった。
ただステータスを見るだけでなく、魔法陣や魔導具の構造を解析し、欠陥や効率化の余地を見抜くことができる。そして、『古代語翻訳』と組み合わせることで、失われた古代魔術の理論を完全に把握できるのだ。
「王族が欲しがったのは、即戦力の『聖女』。私がなれるのは、誰にも理解されない『魔導師』よ」
雪は止み、荒涼とした大地が広がる中、ついに目的地が見えてきた。
2. 古代魔導師の隠れ家
そこに存在したのは、自然に半分埋もれた石造りの遺跡だった。周囲には、強力な結界の痕跡があり、一般の人間や魔物が近づくのを防いでいる。リリアンは古文書に記された解除コードを古代語で詠唱し、結界をくぐり抜けた。
内部は、予想以上に広大だった。中央には、巨大な魔力炉が鎮座し、壁面には無数の古代文字と、複雑極まりない魔法陣が刻まれている。
リリアンはすぐに『鑑定』スキルを発動させた。
「鑑定」
名称:古代魔導師ゼノンの魔導工房 特性:自動魔力供給、空間歪曲(修行用)、古代魔法陣生成機能 備考:起動には、高レベルの魔力供給と特定の古代言語での認証が必要
リリアンは胸が高鳴るのを感じた。
(すごい。これは、ただの廃墟じゃない。私が理想とする魔術を学ぶための、最高の環境だわ)
すぐに起動に必要な呪文を翻訳し、魔力を注ぎ込む。王都で「平凡」と評価されたリリアンの魔力が、魔力炉に吸い込まれていく。
「古代の叡智よ、我が魔力を糧に、再び目覚めよ」
古代語での認証が成功すると、魔導工房の空間全体が淡い光を放ち、周囲の結界が強化されたことを『鑑定』で確認できた。これで、少なくとも一年は、誰にも見つかることなく修行に集中できるだろう。
3. 第一歩:魔力の再定義
リリアンがまず着手したのは、自身の魔力操作の改善だった。
王都で教えられたのは、ひたすら魔力を込め、定型的な呪文を詠唱するだけの、効率の悪い現代魔術。
しかし、古代魔導書には、魔力の流れを緻密にコントロールし、最小の魔力で最大の効果を得るための理論が記述されていた。
(現代魔術は、水道の蛇口を全開にするようなもの。古代魔術は、注射針の先を通すように、正確に魔力を流す技術)
リリアンは、自身の魔力を体内で再定義することから始めた。そして、工房の壁に描かれた古代の魔法陣をトレースし、無詠唱での発動を試みる。
「魔力操作、一点集中」
追放されてから五日目の夜。
リリアンの手のひらに、一筋の青白い炎が灯った。
それは、現代の火炎魔法とは似ても似つかない、純粋なエネルギーの塊。古代魔導師ゼノンの魔法陣を応用し、魔力を完璧に制御することで生み出した、極限まで効率化された魔術の光だった。
「成功……! これなら、私の平凡な魔力でも、強力な魔術を連発できる」
辺境の暗闇の中、リリアンは小さく笑みを浮かべた。その炎は、彼女を追い出した王国に対する、静かなる復讐の炎のようにも見えた。
(王都の偽聖女、アルベルト王子。あなたたちが評価しなかったこの力が、やがて世界を揺るがすことになるわ)
リリアンの孤独な修行の旅が、今、始まった。
『見捨てられた聖女は魔導師として世界を救う』第1話、お読みいただきありがとうございます!
いやー、リリアン、ひどい目に遭いましたね! 聖女として期待されてたのに、力がなかったからって即追放とか、王子も王族もひどすぎ! マジで「ざまぁ」したくなりますよね。
でも、安心してください。リリアンの真のチート能力は、その平凡な魔力じゃなくて、前世の知識と、魔法陣を超解析できる『鑑定』スキル! 王国が欲しがったのは「聖女の回復魔法」だったけど、リリアンが目指すのは「古代の超効率魔導師」です。
ボロ屋じゃなくて、超ハイテクな古代魔導師の工房を手に入れたリリアン。ここから彼女の怒涛のレベルアップが始まります!
次からは、誰も知らないチート古代魔法をガンガン習得して、王都でリリアンを追放した連中が「あ、やべぇことした」って顔になるまで、じっくりと力を蓄えていく展開にご期待ください!
続きも頑張りますので、よろしくお願いします!




