第9話:記憶の賢者と青龍の秘密
1. 青龍の領域への侵入
リリアン、シエル、ガドの三人は、青龍の領域である東方大陸の天候山脈に到着した。山脈は常に激しい雷雨と雪に覆われ、魔力位相が乱れまくるため、上空からの侵入は不可能だった。
「先生、この天候は異常です! 船の安定制御も限界を超えています。魔力の乱れが、航法魔導具を狂わせる!」ガドが叫んだ。
「青龍の領域は、次元すら歪ませる。ガド、魔導船を限界まで小型化して、次元収納に入れて」シエルが指示した。
リリアンは、冷静に『鑑定』を発動し、この天候が自然現象ではなく、青龍の力が弱体化しているために発生している魔力の暴走だと見抜いた。
「シエル、この魔力は、青龍が意図的に制御しているものではない。力を失っているのよ。このままでは、山脈の天候が暴走し、大陸全土に大干ばつをもたらすわ」
2. 廃墟の図書館と賢者
三人は、乱れた魔力の中、唯一安定している魔力の場所を発見した。それは、山脈の谷間にひっそりと佇む、古代の図書館の廃墟だった。
図書館の内部は、外部の嵐とは隔絶され、静寂に包まれていた。しかし、中央に積まれた書物の山の中に、一つの奇妙なものが立っていた。
それは、頭に分厚い本を乗せ、全身をボロ布で覆った、痩せ細った人物だった。その人物は、目を見開いたまま、虚空を見つめている。
リリアンは即座に『鑑定』した。
名称:ルシウス・ノウリッジ 種別:人間(記憶の賢者) 固有スキル:完全記憶、知識探索 状態:極度の飢餓と疲弊。自身の知識に溺れている
「彼は、生きているわ。そして、この図書館の膨大な知識全てを、完全記憶スキルで記憶している」
ガドは驚いた。「完全記憶だと? それは古代の伝説でしか聞かない。世界中の知識を全て覚えられるスキルだぞ!」
シエルは警戒した。「彼は危険だ。知識に溺れ、外界との接触を絶っている。無理に話しかければ、精神が崩壊する可能性がある」
3. 知識の孤独からの解放
リリアンは、ルシウスの知識欲と孤独な状態を理解した。彼は、あまりにも多くの情報を取り込みすぎた結果、処理しきれずに自己の世界に閉じこもってしまったのだ。
リリアンは、ルシウスの前に静かに座り、無詠唱で『古代魔術:知識安定化』の魔法陣を起動した。
それは、記憶を整理し、必要な情報と不要な情報を自動的に分けるための、精神魔術の一種だった。
ルシウスの目が、初めて焦点を取り戻した。彼は、リリアンを見て、震える声で呟いた。
「ああ……君は……情報過多の混沌から、私を救い出した……究極の検索エンジン……」
ルシウスは、感謝の涙を流しながら、リリアンに尋ねた。「なぜ、このような魔術を……? あなたは、真に世界の理を把握している」
リリアンは、優しく答えた。「あなたの知識が必要だからよ。青龍の領域のどこに、青龍を弱体化させている古代の罠が仕掛けられているのか。この図書館の知識だけでは、解き明かせないリアルタイムの情報があるはずだわ」
ルシウスは、ハッとした。彼は知識に溺れるあまり、自分が持つ情報の価値を忘れていたのだ。
「罠……? ああ、そうか! 私はこの数十年、青龍の領域のすべての古代文献を記憶した! そこに、青龍の力を封じるための『古代の封印術』の記述があったはずだ!」
4. 最強の情報源と四人目の仲間
リリアンは、食料を与え、魔力を安定させたルシウスに、共に旅をすることを提案した。
「あなたの完全な知識と、私の古代魔術があれば、どんな謎も解き明かせる。力を貸して」
ルシウスは、力強く頷いた。孤独な知識の探求から、世界を救う旅への転換。それは、彼にとって新たな生きる意味となった。
「私のすべての記憶を、あなたの旅に捧げましょう。青龍を弱体化させている封印術の場所を、私が案内します!」
ここに、リリアンをリーダーとする最強の探求パーティが完成した。
リリアン:古代魔術、解析能力(戦闘・修理・調整担当)
シエル:妖精王、自然魔力制御(防御・均衡担当)
ガド:天才魔導具師(技術・製造担当)
ルシウス:記憶の賢者(情報・謎解き担当)
四人は、青龍の力が封じられているとされる、天候山脈の最深部にある『封印の祭壇』を目指して、図書館の廃墟を後にした。
彼らの旅は、もはや王都への復讐という小さな枠を超え、世界に隠された真の歴史と古代文明の謎を解き明かす、壮大な冒険へと進化していた。
第9話、お読みいただきありがとうございます!
ついに! 最強パーティに四人目の仲間が加わりました! その名も、『記憶の賢者』ルシウス! 世界中の知識を頭に入れているなんて、もう歩くデータベースですね!
ルシウスも、リリアンちゃんの『知識安定化』というチート魔術のおかげで、記憶の混沌から救い出されました。またしても、リリアンちゃんの規格外の力で仲間が増える展開、最高です!
これで、「知識」(リリアン)と「情報」(ルシウス)が揃いました! 知的チートここに極まれり!
青龍の力が弱っているのは、外部からの「古代の封印術」が原因らしいですね。ルシウスの知識があれば、封印の場所も解除法もバッチリ! 次話は、いよいよ封印の解除と、青龍との対話、そして背後に潜む黒幕**の影がチラつくかもしれません!
リリアンちゃんたちの最強チームの活躍に、乞うご期待ください! 続きもお楽しみに!




