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水音落

ホラ~

これは、去年、夏の時期に1泊2日の旅行に行った時の話だ。

旅行の場所は、海が見たいからと、日本海側の漁港が盛んな所にしたのを覚えている。

しかし、当日の宿を予約せずに行ったものだから、なかなか遭遇することがない出来事がおきたのだった。


「どうしよう」と、私はため息をつく。


私は、とある民宿に泊まることが出来ていた。時刻は深夜2時。

なぜ、ため息をついたかと言うと、部屋に日本人形が置かれているのが理由だ。

別に、普段であれば、どのような人形であっても特に何の不便は感じないのだが、それは違った。


民宿に来たときに、民宿の主の男性は、「人形を集めるのが趣味で1部屋に1体はいるよ」と、この民宿の魅力のように言ってはいたが、その時は、特に気のしてはいなかった。

が、気にしてしまうことが起きた。


「どうしよう」


ぐっすり寝ていた私だったが、音に気がついて起きてしまった。

最初は、外の雨音かと思ったが、今日は快晴である、深夜でも雨は降ってはいない。

しかし、部屋には水の雫が落ちる音がするのだ。


「なになに」


片目を開けて、薄暗い部屋を見渡すと、原因は人形であった。


「は!?」


人形の瞳から水が流れていたのだ。涙なのだろうか?と不思議に思ったが、寝ぼけているのだろうと、エアコンから排水した水の音なのだろうと、布団を深々と被る。


「うわーん」


ビクッと!?私は、布団の中で跳ねた。恐る恐る布団から顔を覗くと、目の前に人形がいたのだ。


「うわ!?」


私は、ビックリして声を上げた。また、びっくりして「どちら様ですか」と、変な言葉を言ってしまった。


「しくしく、嬉しいの」


人形は、名乗りもせずただ嬉しいのだと言うばかりだ。まぁ私が、言うのもなんだが。


「何が嬉しいの」と、私は親身になって聞いてみる。


「名前ないの」と、人形は言う。


「人形なのだから、そうでしょうよ」と、私は当たり前ではないかという態度で言う。


「名前つけてくれる人が来たのが嬉しいの」と、人形は涙を拭きながら言う。


「名前なら民宿の主につけてもらいなよ」と、私は当たり前ではないかという態度でまたも言う。


「あのひと、好きだけど、なんか変」と、人形は首をかしげる。涙は収まったようだ。


「変て」と、私は首をかしげる


「毎日、私を、拭いてくれるけど、拭き方がキモい」と、人形は頬を赤める。


「キモい!?」私はびっくりして、苦笑いを浮かべた。キモいってなに?なぜ頬を赤めれるのか?と。


「うん、吐息が顔にかかって鬱陶しいし、服を脱がして、素手で撫でて拭くの」と、人形は泣きながら言う。


「そりゃ、キモいわ」と、私は言う。何あの店主、やばいやつではないかと、危険人物にランクインした。

明日は、どうやって、顔を見せずに帰れるかと、眠い頭を回転させる。


「で、なんで名前つけてもらうのが嬉しいのよ」と、私は話を戻すために聞く。


「前にも名前があったように思うのだけど、覚えてないの」と、人形は泣きながら言う。


「なにそれ怖」と、私は人形の言っている意味が分からない。「何言ってるか分からない」と、私が人形へ聞く。


「多分、本来の名前を思い出すと嬉しいことがあるの」と、人形は意味深いことを言う。


「嬉しいこととは?」と、私は聞くが、人形は「分からない」と、言うばかりで話はつまずいた。


「どうしよう」私は、つぶやくしかできなかった。


人形は泣くばかり。


「あなたの身につけてるものに書いてないの?」と、私はひらめいた、人形であれば作品名くらいあるではないかと。


「分かった。見て」と、人形は、両手をあげて、万歳の状態になる。


「ありがとう」と、私は人形を両手で優しく掴むと、人形の裏を見る。


「なにこれ?」私は驚く。


これは、人形の着る服というより、私が着るような現代服な服や下着であったのだ。まぁこういう人形もあるものかと思ったが、それにしては出来が良い。流石日本クオリティー。


「恥ずかしい」人形は、顔を手で覆う。


「我慢せい」私は、夢中である。あと、同性だから何も感じず、問答無用である。


「あれ?そんなまさかありえない」私は悲鳴をあげそうになる。手を口に当てることで防ぐ。


人形の下着が私のであったのだ。見覚えのある下着と下着のタグに私の名前が書いてあるのが、何よりの証拠だ。


「もしかして、あなた…」私は、人形に声をかけようとして、止めた、いま止まった。その人形は、私自身だったのだ。


「名前を呼んで」人形は微笑むと、優しく私へ言う。そういえばこの人形の声も私にそっくりに思える。


「水音 らく」私は、自身の名を呼ぶ。


「ありがとう。嬉しい」人形は、微笑みながら言い、人形自体が光りだす。その光は優しく私を包む、あたたかいzzz



スマホのアラームが鳴る。朝7時30分。

私は、眠気を抱えて片方の目を開ける。

私は、スマホのアラームを止めると、目をつぶり、布団を被ると寝た。。。

訳ではなく、深夜の光景を思い出すと、慌てて身体を起こす。

私は、全身を眺めるが特に異常はなかった。


「よかった」私は、心のそこから思う。


さて、本来であれば、朝飯も食ってから、帰宅する予定であったが、辞める事にする。主には悪いが、帰りたい気分。



私は、荷物を素早くまとめると、外に出るために玄関へと向かう。出来れば、主には会いたくないので、置き手紙を机に残す。


「帰りたい」私は、心のそこから言う。



さて、玄関まで来た。

私は、玄関の扉を開ける。。。

が、開かない。


「なんで!?」私は、怖さと、驚きで涙目になる。


すると、後ろから、「鍵かかっているので、外しなさいな」と、主の声がした。


「は!はひぃすみません!?」私は、びっくりして、飛び上がる。私は、鍵に手を伸ばした。


が、硬い。錆びていた。


「う!!」私は力を込めて、鍵を開けようとするが、難しい。


「待ってなさい、開けるよ」と、後ろにいる主が近づいてくる。


私は、ビクビクしながら横にズレると、主に鍵を任せる。もしものために、私の後ろにある、箒を右手で静かに掴む。


ガチャリ。と音がなる。鍵が開いたようだ。玄関の扉の引き戸は横に引かれ、外が見える。


「ささ、どうぞ。」主は、そう言うと、外へ出る。


「ありがとうございます」私は、右手から、箒を静かに話すと、外に出た。


外へ、出た私を見る主は、「お疲れ様でした。またいらしてね」と言う。


「は、はひぃ。あ、朝ご飯は結構です。ありがとうございました」と、私は主の顔を見ずに、顔を反らしながら言うと、早足で車に向かう。私は、後ろを振り向かず。


「ありがとうございました」と、主の言葉が私の後ろから聞こえるが、私は振り向かず、また返事もせず、恩知らずとも言える態度ではあるが、そんなことは知らない。



私は、見事、家へと帰ってきた。

変な汗をかいたので、お風呂に入ろうと、服下着を脱いで、風呂場へ入る。


「なにこれ」私は、恐怖で声をあげた。

身体に人の手で撫でられたように薄く赤く

細い線が、全身に入っていたのだった。


私は、恐怖の悲鳴をあげていたのが原因か、自宅のチャイムが鳴る。

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