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「私がこの国へ来なければ、ヴェイル様がここまで苦しむことはなかったんですね。」


「それは違う!そうじゃない!貴女は、何も悪くない。全ては、自分の事しか考えていなかった俺が悪いんだ。俺を受け入れない母上が憎かった。俺を蔑む貴族達が嫌いだった。腑抜けた父上が許せなかった。俺は、その苛立ちを全部、運命にぶつけ続けた。卑怯にも俺は、何もかもをまだ見ぬ番のせいにして、逃げていたんだ。迎えが来ない異能者の番が、どんな目に合うかなど、何も考えていなかった。すまない、ステラ。俺は、決して赦されない罪を犯した。」


「ヴェイル様…、私は…。」


「貴女が、俺を恨んでいることは分かっている!俺の側にいたくないことも。でも、頼む!貴女の治療は、協力させて欲しい!必ず助けるから!俺に罪を償わせてくれ!」



罪を償う?

ヴェイル様は、何を言っているの?

私は、貴方を恨んでなんかいないのに…。

私は、誰も憎みたくなんてないのに!


私は唇を噛み締めた後、口を開いた。



「ヴェイル様は、私の体の状態を知っているのですか?」


「ああ、ゼイン医官から聞いた。魔力を常に必要とする体だと。魔力を失えば、心臓が止まってしまうのだと。だが、大丈夫だ!俺の魔力製造器官の一部を移植すれば、ステラの体にも魔力が生まれるはずだ。だから、必ず貴女は助かる!」



魔力製造器官の移植!?

そんな事をすれば、ヴェイル様の体は、魔力器官のバランスを崩すことになる。

ヴェイル様は、異能という強い力を持っているのだから、彼の体だってどうなるか分からない。


私は、首を横に振って、激しく拒絶した。



「ヴェイル様、それはいけません!私は、貴方の犠牲なんて望んでいません!」


「俺の命なんてどうでもいい!」

私の拒絶に、ヴェイル様が大声で叫んだ。



「貴女を救うためなら、なんだってする。俺の命が必要なら、喜んで差し出す。ステラ、貴女は、幸せに生きる権利があるんだ。」


そう力強く訴えるヴェイル様が、私に手を伸ばした。



「ステラ、今だけでいい。俺の手を取ってくれ。貴女が大切なんだ。」



そんな『大切』なんて嬉しくない。

そんなもの欲しくない。


私は、力一杯、伸ばされた手を跳ね除けて、ヴェイル様を睨みつけた。



「お断りします。私を馬鹿にしているんですか?私は、誰かの命を犠牲にしてまで生きるつもりはありません。」


「ステラ!」

ヴェイル様の悲痛な叫びが、私の耳の中に響く。でも、心にまでは届かない。



「ヴェイル様、私の体が、なぜこんな状態になったのか、知っていますか?奴隷だった私が、何をされていたのか、知っていますか?」


私が向けた強い眼差しに、ヴェイル様が目を見開いた。





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