表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/162

*ヴェイル視点 18

騎士団棟の地下にある倉庫のその先には、重大な規律違反をした騎士を尋問するための牢があった。

そこには、今、マイリー・バルゼンとリセイル・ネイゼルがいる。



「何か吐いたか?」


「いいえ。自分達は侍女長に頼まれて、バレリー殿を王宮の給仕室へ連れて行っただけだと。」


「そうか。ならば仕方ない。これを使え。」

二人を尋問していたメルデンに、俺は黒い液体の入った小瓶を渡す。

それを受け取ったメルデンは、まず先にリセイルの顎を掴んで、無理矢理口の中に流し込んだ。



「ガハッ!グァッ…。」

液体を飲み込んだリセイルは、床の上をのたうち回った後、急に体の動きを止める。

俺は、リセイルの胸ぐらを掴み上げ、頬を強く打った。

その様子を震えて見ていたマイリーに、俺は丁寧な説明をしてやる。



「これは最近、医療部が開発した自白剤だ。強力過ぎて、何でも話す代わりに脳の一部が溶け出すらしい。お前達に使うなら丁度いいだろう?」


「そ、そんな…。嫌だ、赦して下さい、団長。」


「それは、リセイルの自白次第だな。ほら、リセイル、さっさと話せ。」

白目を剥いているリセイルを揺すって、意識をこちらに引き戻す。茫然としながらも、俺と目を合わせたリセイルは、一気に話し始めた。



「キャロライン様は、自分の権力を見せ付けるために、バルガンデイル公爵家に与えられた王宮の客間を使って、度々、気に入らない者に嫌がらせをしていました。今回のそのターゲットが、ステラ・バレリーでした。私達の役割は、協力者と連携してターゲットを呼び出すことです。」


「彼女を呼び出して、どうしたんだ?」


「キャロライン様は、ステラ・バレリーにも嫌がらせをしていました。彼女が、いかに卑しい存在であるかを分からせるために。ですが、いつまでたってもステラ・バレリーは、泣くことも、謝ることもしませんでした。それに業を煮やしたキャロライン様は、取り巻きの令嬢達を使って、彼女に暴力を振るうようになりました。」


反吐が出るリセイルの発言に、俺は拳を強く握りしめる。



「それで?お前達は、その協力で何を得る予定だったんだ?」


「キャロライン様は、私達に獣人騎士団内の絶対的な権力を約束して下さいました。マイリー様を、将来の騎士団長にすると。それに、私の願いも…。」


「願い?」


「はい。私は、ステラ・バレリーが欲しくなりました。何度傷付けられても濁らない、あの美しい瞳が…。」


その言葉を聞いた瞬間、俺は剣を引き抜いてリセイルの両目を抉っていた。



「ガッ、アァーー!目が!何も見えない!ああ!」


「お前如きが、私のステラを欲しいだと?お前もステラに手を上げたのか?それは、どちらの腕だ?切り刻んでやる!」


「あっ、ああ!ヤダ!嫌だ!助けて!私は、ステラ・バレリーに暴力は振るっていません!気を失った彼女を蹴り飛ばしたのは、マイリー様です!」


「ちっ違っ!私は、何もしていません!団長、信じて下さい!私は、何も知りませんでした!」

リセイルの突然の告発に、慌てたマイリーが泣き叫ぶ。



「ならば、お前もこれを飲んで、潔白を証明してみせろ!廃人にはなるが、名誉は守られるぞ!」


俺が拘束を解いて自白剤を渡すと、マイリーは震える手で瓶を受け取った。マイリーは暫く瓶を見つめた後、強く握りしめて蓋を開ける。次の瞬間、それを俺に投げ付けて走り出した。

扉に向かうマイリーの姿に、俺は密かにほくそ笑む。



やはりな。

お前に、名誉を守る度胸なんてあるわけがない。


俺は血に濡れた剣を、狙いを定めて投げつけた。それが、扉に手を掛けたマイリーの肩に深く刺さる。



「ああ!腕が!ぐあっ!」


「ステラを蹴った足は、不要だな。」

床に蹲るマイリーに素早く近付いた俺は、ヤツの右足を斬り捨てた。



「ガッ!ァアアアーー!」

暴れるマイリーを踏みつけ、首元に剣を添えると、俺の中の汚泥のような黒い感情が歓喜に震えた。

早く殺してしまえと。


その時、ふと、扉の外の騒がしい気配に意識が取られる。そこへ、俺の私室の警備を任せていた部下が駆け込んできた。



「だ、団長、バレリー様とニルセンが…。」



その言葉を聞いた瞬間、俺は脇目も振らず、ステラの下に駆け出していた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ