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何だったの!?

何だったの!?

何だったの!?

私、どこかおかしくなっちゃったのかしら?

あ、あんな風に、殿下に縋り付くなんて。


は、恥ずかしい...。


ヴェイル殿下だって、私みたいな女に迫られても気分悪いだけよね...。

ここで待つように言われたけど、どうしよう。


一先ず始めた書類整理は、全く集中出来ず、進んでいない。

そんな状態に大きな溜息を吐き出すと、ふと、去り際に言われたヴェイル殿下の言葉が私の頭を過ぎった。



お茶...。


私は、ヴェイル殿下が出しかけていたお茶の缶を手に取った。

そして、蓋を開けて茶葉の匂いを嗅ぐ。



「良い香り。新緑茶だったかな?」

このお茶を淹れる時は、確かこっちの茶器を使うんだよね。


私は、茶器が収納されている木箱から、小さなポットを取り出した。


あとは、茶漉しと...、カップはこれ?




「湯呑みは、こっちの方がいい。」


後ろからスッと伸びてきた手が、カップを二つ掴み取った。




「で、殿下!あ、あの、お帰りなさい。」


お帰りなさい!?

私、殿下になんて馴れ馴れしい事を!


びっくりして、変な事を口走ってしまった私は、咄嗟に口を強く押さえる。

そんな私に、ヴェイル殿下は、今までの厳しい表情が嘘に思えるような柔らかい笑顔を見せてくれた。



「ああ、ただいま。」


ヴェイル殿下の笑顔に魅入られていると、私の手に、フワッと肌触りのいい何かが触れる。

それは、スリスリと私の腕に擦り寄って、クルリと手首に巻きついた。



「よく茶の種類が分かったな。この前は、飲み方も知らなかっただろう?勉強したのか?」


「い、いえ、勉強と言うほどでは...。ニルセン様が淹れる様子を、何度か近くで見せて頂いたのです。」


ニルセン様は、よく私にお茶を淹れてくれていた。せっかくなので、邪魔にならない程度に淹れ方を見せてもらっていたのだ。



でもまさか、そのニルセン様がヴァングレーフの王族だったなんて...。

私、なんて方に雑用を...。


先程のアレン様とニルセン様の会話を思い出して、私は背を震わせる。すると、少しだけ表情を固くしたヴェイル殿下と目が合った。


「…ニルセンに教わっていたのか?」


「あ、その、はい。私、ニルセン様が王族の方だとは知らなくて。ずっと、ニルセン様の優しさに甘えてしまっていました。」


「ああ、それか。それは、深く触れない方がいい。ニルセンは、生家のヴァングレーフ家を酷く嫌っているからな。王族扱いすると怒り狂う。だから、接し方は今まで通りで問題ない。」


「わ、分かりました。」


そう言われて、私は恐縮しながらも、無理矢理納得する。そんな私の横で、ヴェイル殿下が、茶器を手際良く机の上に並べていった。



「茶に興味があるなら、これからはニルセンではなく、俺が教えよう。まずは、これを一緒に淹れてみるか?新緑茶は、一番基本的な淹れ方だから丁度良いな。では、この器に...。」



「あ、あの、殿下!そ、その...。」


お茶の淹れ方を、丁寧に教えてくれようとした殿下に、私は恐る恐る声をかける。

そして、ゆっくりと私の右腕を示した。

ヴェイル殿下の細く長い尻尾に、肘までしっかり巻きつかれた私の右腕を。



そこへ視線を落としたヴェイル殿下が、目を見開いたまま固まってしまった。


気まずい沈黙が流れた後、ヴェイル殿下の顔が、ボワっと音が鳴りそうな程、一気に赤く染まる。そしてすぐさま、自分の尻尾を鷲掴んで引き剥がした。



「す、すまない!俺は何を!」


「お気になさらないで下さい。殿下はお疲れなのではないでしょうか?」



びっくりはしたけど、可愛い尻尾に触れられて私は嬉しかったし、殿下のイタズラだったとしても気にならない。


あたふたしている殿下とは対照的に、私は内心ほっこりしていた。


そんな中、ヴェイル殿下の手から逃れた尻尾が、今度は私の左手に巻きついてきて、思わず笑ってしまった。








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