表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/162

1-18

ヴェイル殿下に、いったい何があったのだろう。

そもそも、なぜ私は、ヴェイル殿下に呼び出されたの?

謝罪のため?

あのヴェイル殿下が、態々それだけのために時間を割くだろうか。



けれど、私の姿を写す度に、嫌悪を滲ませていた黄金の瞳は、今日はずっと穏やかなままだった。


あの後、緊急の伝令が飛び込んで来たため、話は中断してしまったけど、ヴェイル殿下は最後まで私を気遣ってくれていた。別れ際に、私が美味しいと言ったお茶までくれたのだ。



誰もいない女性用の天幕の中で、私は綺麗に細工が施されたお茶の缶を眺める。



ダメダメ!

今、悩んでも分からないもの。



私は、モヤモヤした疑問と共に、お茶の缶を荷物の中に仕舞い込んだ。










「ステラ!そこの騎士の傷を消毒してあげて。」


「はい。回復薬は使いますか?」


「いや。魔法薬を使うかは、私が診察してから決めようかな。初期治療だけお願い。」


穏やかだった午前中とは打って変わり、魔物討伐に向かった騎士達が、段々と怪我をして戻ってくるようになった。そのため、今の私の仕事は、ゼイン先生の治療の補助が主になっている。



セルヴィン様は、大丈夫だろうか。

先程すれ違ったセルヴィン様も忙しそうにしていた。

ここが一段落したら、そちらの仕事も手伝いに行こう。


私は今日の予定をサッと思い出した後、頭を切り替えて、腕から血を流す獣人騎士の手当てを始めた。




「ありがとう。えっと、ステラちゃんだったよね?」

ニコニコしながら話しかけてきた獣人の騎士は、酷い怪我を負っているのに、まったく痛がる素振りがない。



す、凄い...。

こんなに消毒液をかけているのに。

さすが、騎士様。


「は、はい、そうです。あの、騎士様、怪我は腕だけですか?痛いようでしたら痛み止めもお出し出来ますが、どうなさいますか?」


「騎士様なんて、硬いよー。俺、リバーって言うんだ!よろしくね、ステラちゃん!」


「あ、はい。よろしくお願いします。」

なぜか握手を求められたので、恐る恐るリバー様の手を握る。

嬉しそうに笑っている彼の背後では、長い尻尾が小刻みに揺れていた。



「ねえねえ、ステラちゃん!今日の夕食は、どこで取るの?てか、いつもどこで食べてるの?せっかく知り合ったんだし、俺達と食べない?みんなステラちゃんと話したいみたいでさ!」


「わ、私ですか?でも...。」

返答に困った私は、ゼイン先生に視線を送る。けれど先生は、他の怪我人を治療中で、こちらに背を向けていた。




「ステラちゃんって花の妖精みたいだって、俺達の中で話題になってるんだよー。赤い髪が可愛いって。」



可愛い?

私が?


私は呆気に取られて、目の前のリバー様を凝視してしまった。

すると、目が合った彼の顔が、どんどん赤くなっていく。



「ス、ステラちゃん?あ、あの、どうかした?」



信じられない。

この赤毛が、可愛い?

これは、獣人特有のお世辞なの?




「...バレリー様!ステラ・バレリー様!」


「あ、はい!」


ぼうっとリバー様を見ていた私に、大きな呼び声がかかった。

急いで返事をした先には、ニルセン様が、引き攣った笑顔を浮かべて立っていた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ