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プロローグ 2

苦しい、苦しい...。

生きるのが、虚しい。





俺をこの苦痛から解放してくれる唯一の存在が、神の慈愛によって生まれる運命の『番』だった。


だが、俺はその慈悲を拒絶した。


そのせいで俺の胸には、常に激しい焦燥感が募る。


それでも...。

それでも、俺にとって番の存在は呪いでしかなかった。









「母上、やめて下さい!」


「何よ!私に口答えするの!?化け物のお前が?お前のせいで、私が皆に何て言われているか分かっているの?ああ、ああ!腹が立つ!どうして私は、こんなに不幸なの!?」

母上が、その長い髪を振り乱し、大きな叫び声を上げる。そして手当たり次第、近くにある物を俺へと投げつけた。

カップが俺の額に当たり、生温かい血が頬を伝い落ちる。



「何をしている!?ああ、大丈夫だ。大丈夫だから...。落ち着いておくれ、私の可愛い人。」

大きな音を聞きつけて、父上が母上の部屋へと駆け込んできた。父上は怪我をした俺には目もくれず、一目散に母上を慰める。



「すまない。全て、私のせいだ。本当にすまない。」

父上は母上に縋りつき、ただただ謝罪の言葉を繰り返した。

民から尊敬され、畏怖すら抱かれている存在が、一人の女を前に惨めな姿を晒している。それが、あまりにも滑稽で哀れだった。



父上!そんな情けないことは、やめてくれ!俺をこれ以上失望させないでくれ!


俺は、何度も父上に頼んだ。

それでも父上は、自分の番である母上が何よりも大切なのだと、庇い続けた。



そんなある日、母上が消えた。

父上が与えた大量の宝飾品と共に。


笑えることに、父上はあれだけ尽くした番に、捨てられたのだ。

それを受け入れられない父上は、少しずつおかしくなっていった。




番を求めて彷徨う父上のあの姿は、未来の俺の姿なのだろうか。

神が父上に番を与えたように、いずれ俺にも番が現れるのだから。



勝手に決められた運命の番などに、自分の人生を翻弄されたくない。

俺に神の慈悲は必要ないのだ。





心身共に酷く疲弊していたある日、俺の運命である番が生まれたのが分かった。


しかし、俺はその光に決別の背を向けた。







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