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3-44

私は、ヴェイル様に出来る限り強く抱きついた後、地面に降ろしてもらった。



正直、怖い。

辺り一面を真っ黒に染める悪意そのものの闇を、これから自分の中に受け入れなければいけないのだから。


私は本当に、この真っ黒な闇を全て浄化出来るだろうか。

無能の私が…。

役立たずと言われ続けた私が…。


でも!

無能でも、出来損ないでも、無様に地面に這いつくばって希望に食らい付こう。

願った未来に進むために、生にしがみ付こう。


私は、上手く動かせない腕をヴェイル様に伸ばした。



「手を握っていてくれませんか?」


「ああ、ずっと側にいる。」


「はい!」

私は、貼り付けた笑顔ではない、心からの笑みをヴェイル様に向けた。



いつから私は、自然に笑顔が出るようになったんだっけ?


私は、今まで使ってきた偽物の笑顔の作り方が、よく分からなくなっていた。


そんな自分を自嘲気味に笑った私は、スッと闇に目を向ける。すると、ヴェイル様が払った影が這い寄ってきた。

私は、ヴェイル様の手を握ったまま、影の中に足を踏み入れた。



氷水のように冷たい影から、私の脚を伝って影が湧き出る。そして、それは、一気に私に襲いかかった。

私は、それを拒む事なく全て受け入れた。



痛い…。


体の中から、鋭い針で刺されているみたいに。


痛い、痛い、痛い!


喉の奥から何度も悲鳴が出そうになった。

でも、唇を噛んで必死で耐えた。

ヴェイル様をこれ以上心配させたくなくて。


痛い…、痛い…。


大丈夫、大丈夫。


自分の心の叫びに、何度も言い聞かせる。

大丈夫、耐えられると。


その時、後ろから殆ど突進するような勢いで抱き締められた。



「大丈夫だ、ステラ。俺がいるから。俺にもステラの痛みを分けてくれ。」


「ヴェ、イル、さま…。」

ヴェイル様の手が、私の胸元に触れる。すると、今まであった激痛が和らいだ。



「ヴェイル様、手が!」


私の胸に置かれたヴェイル様の大きな手に自分の手を重ねると、嫌な感触がした。思わず見下ろした彼の腕には、私と同じように黒い魔石が張り付いていた。



「ああ、ステラの痛みを一部だが、肩代わり出来たようだ。これで、一緒に戦えるな。さあ、この不快な闇を払ってしまおう。」


見上げたヴェイル様の顔には、苦痛は見られない。あるのは覚悟だけ。



この方の覚悟は、なんて素敵なんだろう。


思わずヴェイル様の頬に触れると、ヴェイル様の顔がゆっくりと降りてきて、その唇が私の唇に落ちた。

そして、その瞬間、私達の周りに青炎が立ち昇る。



温かい。

ああ、心地良い。


燃え上がった炎は、足元からゆっくりと私達を優しく包んで、私の中にあった苦痛も恐怖も燃やしてしまった。



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