大都会の誘惑
それから2ヶ月ほどがたった、宋は日雇いの仕事を日々探しては何とかその日を凌ぐという暮らしを続けていた。工場をやめた時にもらったお金にはまだ手をつけずに済んでいるがそれがいつまで続くかわからない憂鬱な日々を過ごしていた。
そんなある日彼は屋台で食事をしていると前いた工場の元同僚と会った、そしてそこである面白い話を聞いた。「なあ、宋。実は面白い話を聞いたんだ。なんでも上海に行けば、俺たちのような貧乏人でもまるで大地主様や大資本家様のような豪遊できるって話だよ。」
宋は驚いた、学のない彼でも上海とは中国で一番発展した街であり地元でいばり散らしていた地主や自分を路頭に迷わせた工場長よりも金を持ってる人ばかりが住んでる街だというのを知っていたからである。「それは本当か?」半信半疑ながら彼は同僚に聞いた。
元同僚は頷いた。「ああ、上海の高級料理店じゃあこの屋台の料金で大きなテーブル一杯の馳走ができるらしい。いつも行っている床屋の料金で一年はモダンな高級理髪店に行っておつりがもらえるみたいだ。何人かの仲間は、すでに上海に向かう準備をしているよ」
にわかには信じられない話であったが宋はその話に興味を引かれた。仕事を失い何をすればいいのか分からなかったが、上海での豪遊の話は、彼の心に新たな希望を灯した。上海は遠いが試してみる価値があるかもしれない、そして彼気づけばなけなしの現金を持ち上海まで行く電車に乗っていたのであった。