1 面接による3桁
気がついたら、青色の建物の前にいた。
周りは雪景色、吐く息も白い。太陽が燦々と降り注ぐ青空の下、ぼーとしていると、左手に何か持っていることがわかった。茶色の封筒。中には『面接の御案内』と記載された紙と面接シートがそれぞれ1枚入っていた。
(面接って何聞かれんだろ?)
そんなことを考えながら、秋野又三は青色の建物の中へと入って行った。
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「お待ちしておりましたわ。こちらへどうぞ。」
玄関に入るなり、年齢不詳で髪色がブロンドの女性から告げられる。秋野は言われるがままに玄関で靴を脱ぎ、女性の後を追った。彼女の背中を追っている最中、廊下に取り付けられているホワイトボードが目に入った。そこには【四役】と書かれており、1番上の欄に【寮長】の文字が見えた。横に名前が記載されていたが、秋野は見過ごした。
女性に通された部屋は【西洋室】と書かれており、甲冑や剣、トランプ等、文字通り西洋の品が並べられていた。
「どうぞ、お座りください。」
椅子が見当たらなかったので、言われるがままに、絨毯の上に腰をおろした。年齢不詳の女性も同様に絨毯に腰を下ろした。
「紹介が遅くなりました。私、この寮の寮母をしております、カーサンです。晴れの日は私が寮母をしておりますわ。まだ他に2人いますが、またの機会にお会いすると思うから、割愛しますわね。私があなたの面接も担当しますわ。よろしくお願いしますね。」
「はい、よろしくお願いします...。」
面接だから正座した方がいいのか、はたまた答える時は立った方がいいのか、何が正解かよくわからない状況に秋野は悩んだ。
しかし、カーサンは気にせず秋野を見据え、面接を進める。
「そちらの封筒に入ってる面接シート、見せていただいてもよろしいかしら。それがないと無条件にお帰りいただいてるの。」
茶封筒から面接シートを取り出して、カーサンに渡す。
カーサンは面接シートに視線を落としつつ、この面接について簡単な説明が行われた。
「いいかしら、、、。直感で答えて頂戴。回答時間は各問に対して1秒。では、はじめるわね。」
カーサンは秋野に視線を移し、微笑む。
「あなたが生きてるのはいつ?」
秋野は相手の質問の意図を掴めていないが、直感で答える。
「朝です。」
カーサンは顔を左に向け、また質問する。
「 頭の中で、数字の3536を思い浮かべて、、、。何が見える?」
「3536から派生する3桁の偶数と2桁の素数が見えます。」
カーサンは顔を右に向ける。
「あなたが泣くのは、どんな時?」
秋野は苦笑いをする。
「暗いから。」
カーサンは正面を向き直り、目を細めて問う。
「これが最後の質問。あなたの本能は?」
秋野は素直に答える。
「 睡眠と御節介です。」
カーサンから異様な空気感が漂ったが、その空気感はすぐに消え失せ、秋野に告げる。
「あなたは迎え入れられたわ。部屋番号は先程の3桁の数字よ。部屋の鍵をお渡しするわ。期限は多分3年ね。これからの貴方を楽しみにしてるわ。」
秋野はあまりの急展開ぶりに事態の全てを飲み込みきれていないが、この寮での生活が始まることだけは理解できた。
秋野が【西洋室】から出る直前、カーサンはボソリと呟く。
「無理は禁物だわ。辞めたら変われるわ。」