八章 アマルスクール 其の陸
学園都市エデンの創設理念。
それは学生自らの運命と未来を決めることとされている。
「色々な部活があるねー」
桜子はルンルンと言う音がなる人形かの様に楽しそうにしており、渡されるチラシを一切断ることなく受け取っていた。
「オイ、入りもしないのにもらっていくな、迷惑だろ」
その後ろをため息を吐きながらレイズと結衣がついて来ていた。
「それはたしかに、でも、レイズもしっかりついて来てるじゃん! ほれほれ〜、一人だけだと寂しかったの? ね? 話してみて? ね? 」
「うるさい、別にお前について来た気はない。たまたま、そこにいただけだ」
「この照れ屋さんめ〜」
桜子はそう言いながらレイズの腕を握ると彼は少しばかり顔を赤くし、振り払った。
「あー、もううるさいな! 」
二人が騒ぎ立てる中、結衣は自分の理想の学生生活は過ごせないことをようやく覚悟し、涙目になりながら彼らの後を追う。
「あ、皆さん! いらっしゃいましたか!」
三人が歩いているといつもの黒髪をポニーテールにしているセラが声をかけた。
「あ! セラちゃん先輩だ!」
「ふふ、こんにちは、桜子さん。それと、結衣さんとレイズさんも」
「わぁ〜、ここが文芸部なの? あれ? でも、セラちゃんだけだね」
文芸部と書かれている看板の下にセラ一人が立っており、周りに誰もいないことに桜子は首を傾げながら問いかける。
「うっ、そ、そうですね……」
「「「???」」」
セラが気まずそうな表情を浮かべ、それを見た三人は同時に首を傾げた。
「じ、実はですね、アマルスクールは去年に開校したばかりなんです。ですから人の数も他校に比べて少なく、そのですね、あんなに堂々と部活動をしていると言っていましたが文芸部は去年から自分だけなんですよ」
「部員数が部活動を行うで規則違反じゃないのか?」
「設立一年目は人数が一人でも大丈夫だったのですが二年目からは四人以上が条件で」
「えー! じゃあ、人が入んないと廃部ってこと?!」
セラは廃部という一言が響き、項垂れるようにコクリと頭を振った。そんな彼女を見て、オドオドしながら結衣が口を開いた。
「あ、あのー、わ、私、文芸部に入ろうかなって思ってまして」
「え?! ほ、ほんとうですか?!」
「ひぃ! や、やっぱり私なんかじゃダメすよね」
「違います! 違います! ほ、ほんとうに入ってくれるのですか?」
「そ、そのー、き、去年のエデン学生文学賞で大賞に選ばれてた瀬瀬羅義芽衣先生を探してて。アマルスクールにいると言う噂を聞いてたんですけどもしかして、セラ先輩のことじゃないかなって思いまして」
結衣の言葉にセラは一瞬、固まるもため息を吐き、少しばかり顔を赤く染めながら答える。
「うう、その、瀬瀬羅義芽衣は自分ですね」
「随分、攻めた名だな」
「うう、若気の至りと言いますか。その〜、正直、受賞するなんて思いもしませんでしたので役員の面々にも一時期毎日言われてました」
セラが恥ずかしそうにしているのを桜子は可愛いと思いながら眺めていると結衣は目を輝かせながら再び声を上げた。
「わぁ〜、本当に居たんだ! エデンきっての天才小説家! お会い出来て光栄です!」
いつも以上に大きな声が出ているのにも関わらず、彼女は気にすることはなく、ぐいぐいとセラに食いつく。
自分には見せた事ない結衣の表情に、桜子は何かを感じ取ったのかレイズに小声で喋りかける。
「ねぇ、もしかして、私といた時よりも結衣いい表情してない?」
「もしかしなくてもだ」
「えー、それはつら〜い。でも、いい顔してるからOKかな」
「ふん、お前にも辛いとかの感情があんだな」
「あるに決まってんじゃん! ひどいな〜」
二人は短く言葉を交わしやりとりしていると結衣がこちらに気づいたのかセラの近くにいたが桜子達に近づいた。
「ね、ねえ、桜子ちゃんとレイズくんってまだ、部活決めてない?」
「そうだねぇ〜、私はまだかな。レイズは?」
「俺はもとより入る気はない」
「な、ならさ、ぶ、文芸部、一緒に入らない?」
結衣は一生懸命に放った言葉に対して、桜子は少しだけ意外そうにするもすぐに切り替え、答えた。
「結衣から誘ってくれるなんて、嬉しい! 」
「あ、あの、わ、私さ、こんなんだから。ドジで、間抜けで、社交性のカケラもなくて、あんまり人と触れ合ったりするのが苦手で。で、でも、二人は、なんていうか、これまでの人と違って私に対して、二人から近づいてくれるから、そ、その、一緒にい、いたいなって思って」
「俺は別に近づこうとした覚えはないぞ」
レイズの一言が放たれた途端、桜子はレイズの頭をパチンと叩いた。
「そこは素直に、話を聞いとくべきでしょ! この、素っ頓狂!」
「叩いたな! やはり、昨日の時点で優劣をつけるべきだった。準備しろ、叩き潰してやる」
二人がバチバチと火花を散らし、彼らを止めようと結衣がアワアワと口を開く。セラはそんな彼らがいずれ背負うであろうモノを必ず理解して、乗り越えてくれるであろうと信じて、少しだけ微笑んだ。
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