表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/70

八章 アマルスクール 其の陸

学園都市エデンの創設理念。

それは学生自らの運命と未来を決めることとされている。


「色々な部活があるねー」


 桜子(さくらこ)はルンルンと言う音がなる人形かの様に楽しそうにしており、渡されるチラシを一切断ることなく受け取っていた。


「オイ、入りもしないのにもらっていくな、迷惑だろ」


 その後ろをため息を吐きながらレイズと結衣(ゆい)がついて来ていた。


「それはたしかに、でも、レイズもしっかりついて来てるじゃん! ほれほれ〜、一人だけだと寂しかったの? ね? 話してみて? ね? 」


「うるさい、別にお前について来た気はない。たまたま、そこにいただけだ」


「この照れ屋さんめ〜」


 桜子(さくらこ)はそう言いながらレイズの腕を握ると彼は少しばかり顔を赤くし、振り払った。


「あー、もううるさいな! 」


 二人が騒ぎ立てる中、結衣(ゆい)は自分の理想の学生生活は過ごせないことをようやく覚悟し、涙目になりながら彼らの後を追う。


「あ、皆さん! いらっしゃいましたか!」


 三人が歩いているといつもの黒髪をポニーテールにしているセラが声をかけた。


「あ! セラちゃん先輩だ!」


「ふふ、こんにちは、桜子(さくらこ)さん。それと、結衣(ゆい)さんとレイズさんも」


「わぁ〜、ここが文芸部なの? あれ? でも、セラちゃんだけだね」


 文芸部と書かれている看板の下にセラ一人が立っており、周りに誰もいないことに桜子(さくらこ)は首を傾げながら問いかける。


「うっ、そ、そうですね……」


「「「???」」」


 セラが気まずそうな表情を浮かべ、それを見た三人は同時に首を傾げた。


「じ、実はですね、アマルスクールは去年に開校したばかりなんです。ですから人の数も他校に比べて少なく、そのですね、あんなに堂々と部活動をしていると言っていましたが文芸部は去年から自分だけなんですよ」


「部員数が部活動を行うで規則違反じゃないのか?」


「設立一年目は人数が一人でも大丈夫だったのですが二年目からは四人以上が条件で」


「えー! じゃあ、人が入んないと廃部ってこと?!」


 セラは廃部という一言が響き、項垂れるようにコクリと頭を振った。そんな彼女を見て、オドオドしながら結衣(ゆい)が口を開いた。


「あ、あのー、わ、私、文芸部に入ろうかなって思ってまして」


「え?! ほ、ほんとうですか?!」


「ひぃ! や、やっぱり私なんかじゃダメすよね」


「違います! 違います! ほ、ほんとうに入ってくれるのですか?」


「そ、そのー、き、去年のエデン学生文学賞で大賞に選ばれてた()()()()()()先生を探してて。アマルスクールにいると言う噂を聞いてたんですけどもしかして、セラ先輩のことじゃないかなって思いまして」


 結衣(ゆい)の言葉にセラは一瞬、固まるもため息を吐き、少しばかり顔を赤く染めながら答える。


「うう、その、()()()()()()は自分ですね」


「随分、攻めた名だな」


「うう、若気の至りと言いますか。その〜、正直、受賞するなんて思いもしませんでしたので役員の面々にも一時期毎日言われてました」


 セラが恥ずかしそうにしているのを桜子(さくらこ)は可愛いと思いながら眺めていると結衣(ゆい)は目を輝かせながら再び声を上げた。


「わぁ〜、本当に居たんだ! エデンきっての天才小説家! お会い出来て光栄です!」


 いつも以上に大きな声が出ているのにも関わらず、彼女は気にすることはなく、ぐいぐいとセラに食いつく。


 自分には見せた事ない結衣(ゆい)の表情に、桜子(さくらこ)は何かを感じ取ったのかレイズに小声で喋りかける。


「ねぇ、もしかして、私といた時よりも結衣(ゆい)いい表情してない?」


「もしかしなくてもだ」


「えー、それはつら〜い。でも、いい顔してるからOKかな」


「ふん、お前にも辛いとかの感情があんだな」


「あるに決まってんじゃん! ひどいな〜」


 二人は短く言葉を交わしやりとりしていると結衣(ゆい)がこちらに気づいたのかセラの近くにいたが桜子(さくらこ)達に近づいた。


「ね、ねえ、桜子(さくらこ)ちゃんとレイズくんってまだ、部活決めてない?」


「そうだねぇ〜、私はまだかな。レイズは?」


「俺はもとより入る気はない」


「な、ならさ、ぶ、文芸部、一緒に入らない?」


 結衣(ゆい)は一生懸命に放った言葉に対して、桜子(さくらこ)は少しだけ意外そうにするもすぐに切り替え、答えた。


結衣(ゆい)から誘ってくれるなんて、嬉しい! 」


「あ、あの、わ、私さ、こんなんだから。ドジで、間抜けで、社交性のカケラもなくて、あんまり人と触れ合ったりするのが苦手で。で、でも、二人は、なんていうか、これまでの人と違って私に対して、二人から近づいてくれるから、そ、その、一緒にい、いたいなって思って」


「俺は別に近づこうとした覚えはないぞ」


 レイズの一言が放たれた途端、桜子(さくらこ)はレイズの頭をパチンと叩いた。


「そこは素直に、話を聞いとくべきでしょ! この、素っ頓狂!」


「叩いたな! やはり、昨日の時点で優劣をつけるべきだった。準備しろ、叩き潰してやる」


 二人がバチバチと火花を散らし、彼らを止めようと結衣(ゆい)がアワアワと口を開く。セラはそんな彼らがいずれ背負うであろうモノを必ず理解して、乗り越えてくれるであろうと信じて、少しだけ微笑んだ。

感想、レビューいつもありがとうございます!

嬉しくて狂喜乱舞です!

続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!

評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます!

自作の続編でもあるのでもしよろしければこちらも是非!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >「部員数が部活動を行うで規則違反じゃないのか?」 おそらく部員数が少ない上で部活動をするのは規則違反であると言っているのだと思うのですが、読んでいて???になってしまいました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ