六章 アマルスクール 其の伍
神秘の拡張 神秘拡張
因果に秘められている神秘は解放させると同時に次のステップへ進むことが出来るチケット。自らの神秘の理解度を上げ、その因果の形を変化させる。一握りの才能と努力を怠らない強者にのみ許された領域。
ツクヨとヒビキの戦いを放置し、セラと桜子、結衣、レイズはその場を後にした。
セラがこれから生徒会室に案内すると言っていたので三人はその背後を大人しくついて行った。
後ろからは未だに爆発音と武器が打ち合う音が鳴り響いており、セラは申し訳なさそうに彼らに喋りかける。
「申し訳ございません、お見苦しい所をお見せしてしまい」
「全然〜、むしろ、あのヒビキって人の動きが見れて嬉しかった! ねえ、ねえ! セラ先輩も強いの? 」
桜子はボロボロでありながらも元気よく楽しそうに答え、先ほどよりも明るい空気で学園内の廊下を歩いた。
「そうですね。まだ、皆さんよりは強いかもしれません。私は戦闘向けじゃないんでなんとも言えませんが」
「そうは言いながら神秘の拡張までは習得してるんだろ? 」
「ふふ、そうですね」
会話の最中、桜子は不思議そうな表情を浮かべ始め、それに気づいた結衣がオドオドとしながら彼女に質問した。
「ど、どうしたの? 桜子ちゃん」
「え、あ、うーん、みんなが神秘の拡張? だの、なんだの、言ってるんだけどそれって何? 」
「「「え??? 」」」
桜子の言葉に全員が戸惑い、その瞬間に時が止まった様になる。
「?????? 」
「お前、因果と神秘の関係性を知らないのか? 」
レイズがそう言うと再び不思議そうに桜子は首を捻る。その姿を見たレイズはため息を吐きながらその神秘と因果について説明を始めた。
「283年前にあった<大崩壊>を機に、人は枝分かれする世界を失った。結果、ifの世界が無くなり、人間は生まれてから死ぬまでの運命を定められてしまう。だけど、その代わりに人間は自分の中に眠る因果を具現化し、武器にすることが出来る様になった。それが幻想換装だ。そして、因果にはごく稀にかつての秘められたる力、神秘と言うモノが眠っている場合がある。今日、俺やそこの黒髪、そして、生徒会長が見せたのが幻想換装を伝い、様々な権能を使うことを神秘の具現化、あとは力を使う時に頭上に現れる輪っかの様なものを見て、輪っか持ちと呼んでる」
いっぺんに様々な情報をぶつけられた桜子の頭から湯気が上がっており、ハテナマークが飛び交っている。
「幻想換装についても、神秘についても全く知らない様子ですね。桜子さんの素性は私たちもツクヨ先輩の先祖の知り合いとだけ聞いていましたので不明点が多いですね。桜子さんは何者なのでしょうか? 」
「う、うーん、何者って言われても困るな〜。私、この歳になるまでお母さん以外の人に会ったことがないし、何者って言われてもわかんないや」
桜子が戸惑っていると生徒会室の前に到着し、セラがそのドアを開けた。
部屋は綺麗に纏まっており、中心に大きな机と椅子が陣取っている。棚には様々な資料と幾つかのティーカップが置いてあり、セラはその中から入会届と書かれた紙を取り出し、三人に手渡した。
「これを書いて明日までに生徒会室に届けてください。ああ、後、明日は入学生達に向けたオリエンテーションなどの企画がございますので午後に届けてくださると幸いです」
渡された紙よりもオリエンテーションという聞きなれない言葉に桜子はソワソワとしながらセラに問いかける。
「オリエンテーションって何するの? 」
「ああ、説明してなかったですね。オリエンテーションは各部活の紹介などを行うので是非参加して下さい! 」
「ええ?! なにそれ楽しそう!? 結衣とレイズ、一緒に参加しよう! 」
「なんで俺がお前と参加しなきゃならないんだ」
レイズは心底嫌そうな表情を浮かべるもそんなことを気にせず、桜子は追撃する。
「なんで? 同じ生徒会役員候補だよ? 仲良くしようよー」
「馴れ合う気はないし、俺はお前が嫌いだ。お前と一緒に行動は絶対にしない」
「ほれほれ〜、照れてんのか〜? 携帯ってのをお母さんがくれたからそれで連絡先?ってのを交換しようよ〜」
「喧しい、お前と誰が交換するか」
グダグダと二人が戯れ合う中、一人だけ影を消した様にその場から離れようとする者がいた。
旧巣結衣は桜子という自分とは別側にいる彼女に関わらない様にとレイズを生贄に何も言わずに生徒会の外に出ていた。
(桜子ちゃん、悪い子じゃないし、こんな私に喋りかけてくれる良い人なんだけど、完全に違うあっち側。所謂、古本で読んだことある陽キャなる者、ごめんね、レイズくん、ついて来れないから桜子ちゃんの事よろしくお願いします。それと、名前勝手に呼んでごめんね。私は伝えてなかったけど、伝えられたら今度伝えるね)
心の中での謝罪がすみ、ドア前から立ち去ろうとするもドアが既に開かれており、誰かの腕がぬるりと現れ、結衣の腕を掴んだ。
「ぴゃっ??!! 」
「結ーー衣ー〜ーー! 逃げちゃダメだよ〜!! 」
「ぴっ、ぴぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!! 」
結衣の奇声が学園内に鳴り響く。
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